私立大学医学部への進学では、国公立に比べて高額な学費をどう準備するかが大きな課題です。
この記事では私立大学医学部の学費総額や大学間の違いをランキングで示し、学費を抑える奨学金制度や教育ローンの活用方法について詳しく解説します。
自分に合った資金計画を立て、経済面から医学部進学の夢を叶えられるよう費用と制度を確認していきましょう。
目次
私立大学医学部6年間の学費
私立大学医学部に6年間通う場合の学費はどれほど必要か、その相場観をつかみましょう。
およそ2,800万〜3,500万円前後が一般的な水準 で、国公立大学医学部(約350万円)と比べると 約9〜10倍 の費用が必要になります。
まずは6年間総額の平均値や最安・最高の大学を確認し、各家庭の負担感を把握します。
また、学費ランキングは志望校選びの出発点にすぎないため、奨学金制度や立地条件なども総合的に検討しましょう。
6年間総額と相場の目安は約3,000万円台前半
私立大学医学部31校の6年間学費総額は、概ね3,000万円台前半が相場とされています。
複数の大学データを平均すると、
およそ3,200万円前後 に収まるケースが多く、
初年度は入学金や施設設備費が加わるため特に高額です。
2年次以降は、多くの大学で年間450万〜550万円程度 が学費の目安になります。
このように学費負担が大きいことから、6年間を見据えた早めの資金計画づくりが重要 です。
奨学金や特待生制度、自治体の修学資金なども合わせて検討しておきましょう。
最安校と最高校の差は約2,700万円
私立大学医学部の学費は大学ごとに大きく異なり、最も安い国際医療福祉大学(約1,850万円)と最も高い川崎医科大学は約4,550万円前後では、6年間で約2,700万円もの差があります。
この差額は家庭の負担に大きく影響し、例えば住宅購入費や兄弟の教育費にも匹敵する規模です。
学費が比較的安い大学では経済的ハードルが下がる一方、高額な大学では十分な資金準備や奨学金の活用が不可欠になります。
ただし近年は藤田医科大学が2026年度入学者から学費を約30%(828万円)引き下げると発表するなど、各大学で学費改定の動きも出ています。(出典:藤田医科大学)
ランキングは資金計画と大学選びの初期指標として使う
学費の安さランキングは志望校選びの上で有用な情報ですが、それだけで進学先を決めるのは早計です。
ランキングはあくまで出発点と位置づけ、各大学の奨学金制度や修学資金制度、立地条件による生活費の差なども合わせて検討しましょう。
例えば学費が高めでも大学独自の特待生制度で大幅減免を受けられる場合や、地域医療枠で卒業後の勤務条件と引き換えに学費負担が軽減される場合もあります。
学費総額のみでなく実質的な負担額を比較し、家計に無理のない範囲で志望校を選ぶことが大切です。
私立大学医学部6年間の学費ランキング【総額・安い順】

ここでは、私立大学医学部31校の6年間学費総額を安い順に一覧表で示します。
各大学の初年度納入金(入学金・1年次授業料等)と、2年次以降の年間納入額、6年間の合計額を比較することで、大学間の学費差が一目でわかります。
| 順位 | 大学名 | 初年度納入金(円) | 次年度以降(年額・円) | 6年間合計額(円) |
| 1位 | 国際医療福祉大学 | 4,500,000 | 2,800,000 | 18,500,000 |
| 2位 | 順天堂大学 | 2,900,000 | 3,580,000 | 20,800,000 |
| 3位 | 関西医科大学 | 2,900,000 | 3,620,000 | 21,000,000 |
| 4位 | 日本医科大学 | 4,500,000 | 3,500,000 | 22,000,000 |
| 5位 | 慶應義塾大学 | 3,903,350 | 3,703,250 | 22,419,600 |
| 6位 | 東京慈恵会医科大学 | 3,500,000 | 3,800,000 | 22,500,000 |
| 7位 | 自治医科大学 | 5,000,000 | 3,600,000 | 23,000,000 |
| 8位 | 昭和大学 | 4,500,000 | 4,500,000 | 27,000,000 |
| 9位 | 東邦大学 | 4,800,000 | 4,697,800 | 28,289,000 |
| 10位 | 大阪医科薬科大学 | 5,985,000 | 4,485,000 | 28,410,000 |
| 11位 | 東京医科大学 | 4,800,000 | 4,920,000 | 29,400,000 |
| 12位 | 藤田医科大学 | 6,576,000 | 4,766,000 | 30,406,000 |
| 13位 | 産業医科大学 | 5,915,000 | 4,915,000 | 30,490,000 |
| 14位 | 日本大学 | 6,420,000 | 5,390,000 | 33,370,000 |
| 15位 | 岩手医科大学 | 9,000,000 | 5,000,000 | 34,000,000 |
| 16位 | 東北医科薬科大学 | 6,500,000 | 5,500,000 | 34,000,000 |
| 17位 | 愛知医科大学 | 8,200,000 | 5,200,000 | 34,200,000 |
| 18位 | 聖マリアンナ医科大学 | 6,970,000 | 5,570,000 | 34,820,000 |
| 19位 | 東海大学 | 6,400,000 | 5,720,000 | 35,000,000 |
| 20位 | 近畿大学 | 6,804,500 | 5,804,500 | 35,827,000 |
| 21位 | 久留米大学 | 9,313,000 | 5,413,000 | 36,378,000 |
| 22位 | 獨協医科大学 | 8,600,000 | 5,600,000 | 36,600,000 |
| 23位 | 埼玉医科大学 | 8,250,000 | 5,750,000 | 37,000,000 |
| 24位 | 杏林大学 | 9,500,000 | 5,500,000 | 37,000,000 |
| 25位 | 兵庫医科大学 | 8,500,000 | 5,700,000 | 37,000,000 |
| 26位 | 福岡大学 | 8,626,710 | 5,822,310 | 37,738,260 |
| 27位 | 北里大学 | 9,000,000 | 5,980,000 | 38,900,000 |
| 28位 | 帝京大学 | 9,362,000 | 6,002,000 | 39,372,000 |
| 29位 | 金沢医科大学 | 11,000,000 | 5,700,000 | 39,500,000 |
| 30位 | 川崎医科大学 | 10,500,000 | 7,000,000 | 45,500,000 |
| 31位 | 東京女子医科大学 | 11,449,000 | 6,953,000 | 46,214,000 |
※実際の授業料・実験費等が年度により変動する場合があります。最新の学費は志望大学の募集要項で必ず確認してください。
私立大学医学部6年間の学費を抑える制度と選び方
私立大学医学部の高額な学費負担を軽減するために利用できる制度はいくつもあります。
ここでは、各大学が独自に設けている授業料減免や特待生奨学金、国の奨学金制度、自治体等による地域枠の修学資金貸与制度、教育ローンや学費分納制度について整理します。
それぞれの制度の特徴や条件を理解し、賢く活用しましょう。
大学独自の給付型・免除型奨学金の要件を整理する
多くの私立大学医学部では、成績優秀者や特定の入試区分の合格者を対象に、学費の全額または一部を免除する独自の奨学金・特待生制度を設けています。
各大学によって選抜基準や免除額は様々ですが、募集要項で対象者・条件・継続要件を必ず確認することが重要です。
例えば、順天堂大学医学部では一般選抜上位10名程度に対し、6年間の学費を約700万円にまで減免する特待生制度があります。
また北里大学医学部では一般入試合格者から選抜し、第1種特待なら学費6年間分(約3,890万円)全額免除、第2種でも6年間で1,945万円免除といった大幅な減免措置を実施しています。
これら大学独自奨学金は基本的に返済不要ですが、在学中の成績不振など一定の条件で打ち切りになる場合もあります。
必ず最新の募集要項を取り寄せ、誰が対象で何がどこまで免除されるのか、進学前に詳細を把握しておきましょう。
国の貸与・給付制度の申請手順を整理する
国の奨学金制度には、返還不要の給付型奨学金と、卒業後に返済が必要な貸与型奨学金があります。
給付型奨学金は家計基準と学業成績の要件を満たす学生に対し、授業料減免と月額給付金を組み合わせて支援する制度です。
私立大学医学部生も対象となり得ますが、支給額は世帯収入や自宅・自宅外通学の別により異なり、成績基準も課されます。
一方、貸与型奨学金は在学中に必要な生活費や学費を学生本人が借りる制度で、第一種(無利息)と第二種(利息付)があります。
申請手順はいずれも在学高校を通じた予約採用か、大学入学後の在学採用で、所定の申込書類を準備して学校経由で「日本学生支援機構に申請→採用決定→貸与・支給開始」という流れです。
奨学金は、借金である貸与型と給付である返済不要型の違いを理解し、採用後も計画的に利用・管理することが大切です。
地域枠・修学資金貸与の義務とリスクを整理する
自治医科大学や各私立大学医学部の地域枠入試では、自治体から学費相当額の修学資金を貸与し、卒業後に指定地域の医療機関で一定期間勤務すれば返還が免除される制度があります。
例えば、自治医科大学では入学者全員が6年間の学費約2,300万円を貸与され、卒業後に各都道府県で9年間の地域医療勤務を完遂すれば返還が全額免除されます。
この勤務義務を果たせば実質学費0円で医師になれますが、指定期間内に義務を履行できない場合は貸与金全額+利息を付けて一括返還しなければなりません。
地域枠制度は他大学でも多く採用されており、貸与総額や勤務年限は大学や自治体によって様々ですが、一般に貸与額が大きいほど卒業後の義務年限も長く設定されています。
また勤務地や診療科の選択に制約があり、都市部での勤務や希望科への進路を一定期間諦めるリスクも伴います。
学費免除に惹かれる一方で、9年間という長期の僻地・公的病院勤務はライフプランに大きく影響します。
地域医療への強い志望がある場合には有力な選択肢ですが、自分がその勤務義務を全うできるか、万一途中で離脱した場合に巨額の債務を背負うリスクを許容できるかを慎重に検討すべきです。
出願前に各大学・自治体の修学資金制度要項を熟読し、メリットとデメリットを十分理解した上で利用しましょう。
教育ローン・分納の利用条件と返済設計を整理する
奨学金以外にも、教育ローンを利用して学費を調達する方法があります。
私立大学の場合、学生一人につき原則350万円までが上限となっており、医学部など修業年限が長い学部では、必要に応じて追加融資が認められるケースもあります。
国の教育ローンは固定金利で返済期間は最長18年、民間の教育ローンでは固定金利・変動金利の商品があり、返済期間は15年前後が一般的です。
一方、民間の銀行や信用金庫でも医学部向けの高額教育ローン商品を扱っており、中には3,000万円規模まで融資可能なものも存在します。
多くの場合、連帯保証人が求められ、融資額や条件によっては担保の提出が必要となることもあります。
借入に頼る際は、卒業後の返済負担をシミュレーションしておくことが重要です。
ただし、制度の有無や利用条件は大学ごとに異なるため、事前確認が欠かせません。
経済的理由で一括納入が困難な場合は、入学手続時や在学中に遠慮なく大学の学生課に相談しましょう。
国の教育ローンや奨学金、家族からの支援などあらゆる手段を組み合わせ、無理のない返済計画を立てることが医学部進学後の家計維持には欠かせません。
必要に応じて各金融機関の返済シミュレーションツール等も活用し、卒業まで・卒業後まで見通した資金計画を作成しておきましょう。
私立大学医学部の学費を比較する際のチェックポイント

最後に、私立大学医学部の進学可否を判断するために学費情報を比較検討する際のポイントをまとめます。
単純な学費総額だけでなく、奨学金や生活費なども含めたトータルでの費用負担を把握することが重要です。
以下の観点で整理することで、各家庭の現実的な進学シミュレーションが可能になります。
学費総額だけでなく奨学金・返済条件も比較する
各大学の学費総額はまず押さえるべき指標ですが、それに加えて奨学金や特待生制度の有無・内容も比較表にまとめましょう。
貸与型の場合は卒業後に返済が残るため、実質的な負担額として貸与総額も考慮する必要があります。
特待生枠に入れる可能性や地域枠の利用条件も含め、自分が受けられる支援を見込んだうえで比較すると良いでしょう。
| 比較項目 | 内容・確認ポイント |
| 学費総額(6年間) | 入学金・授業料などを含む6年間の合計金額。大学公式サイトで最新年度を確認。 |
| 大学独自の学費支援 | 特待生制度や授業料免除制度の有無、免除額・対象人数、継続条件を確認。 |
| 奨学金(給付型) | 返還不要の支援。大学独自または地方自治体の給付金額・支給期間を確認。 |
| 奨学金(貸与型) | 貸与総額(月額×期間)、利息の有無、返還開始時期を確認。返済負担も試算する。 |
| 地域枠・修学資金制度 | 貸与額、勤務義務年数、勤務地域、違反時の返還条件(全額返済+利息)を確認。 |
このように、将来の返済負担まで見据えた現実的な比較検討が大切です。
大学の立地・生活費を含めた総負担を把握する
学費以外にも、大学の所在地や生活環境によって6年間の生活費が大きく変わります。
自宅から通学できる大学であれば家賃や食費の負担を抑えられますが、地方や遠方の大学に進学する場合は下宿費用(家賃)や光熱水道費、食費、交通費などが加わります。
例えば首都圏で一人暮らしをする場合、家賃相場は月5~8万円前後となり、年間生活費は100万円を超えることも珍しくありません。
一方、実家から通えるなら通学定期代程度で済むでしょう。
そこで学費+6年間の生活費総額も算出してみてください。
学費が安くても生活費が高くつくケースや、その逆もあり得ます。
奨学金の給付額には生活費相当の月額が含まれる場合もありますが、それでも補いきれない部分は家計からの仕送り等が必要です。
大学の立地条件による生活費の差も考慮に入れ、医学部進学にかかる総合的な費用負担を試算しましょう。
これにより、学費だけ見ていたときとは異なる負担感が見えてきますし、都市部か地方かの志望校選びの判断材料にもなります。
家計シミュレーションを行い現実的な進学判断をする
最後に、実際に6年間の収支計画を家計の視点でシミュレーションしてみましょう。
入学時には入学金や初年度学費の一括納入、教科書・パソコン等の購入費など、まとまった支出が発生します。
2年目以降も毎年の授業料・施設費納入に加え、毎月の生活費が必要です。
一方で奨学金(給付型)は収入として家計を助け、貸与型奨学金や教育ローンは一時的に収入増となるものの卒業後に返済支出が待っています。
これらを踏まえ、年次ごとに家計のキャッシュフロー表を作ってみます。
1年次から6年次まで、各年の家計収入と家計支出を並べ、毎年どれだけ資金が不足または余裕か確認します。
入学前に奨学金予約採用が決まっていれば1年次の収支に組み込みます。
貸与奨学金や教育ローンは在学中は返済不要でも、卒業後の返済額を想定しておきます。
6年間トータルで見たときに、貯蓄の取り崩しやローン借入を含めてプラスマイナスゼロになる計画が描けるかどうかが判断基準です。
進学前の今の段階で、できるだけ具体的な資金計画を立てておくことが、6年間の学生生活を安心して送るためのポイントと言えるでしょう。
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まとめ

この記事では、高額な学費への備えとして各大学の奨学金・特待生制度、地域枠の修学資金貸与、国の奨学金や教育ローンなど、多様な制度とその活用法を解説しました。
最終的には、正確な情報収集と綿密な資金計画、利用可能な支援制度の最大活用が経済的ハードルを乗り越えるポイントとなるでしょう。
それでも、これほどの費用を本当に用意できるのか、奨学金を借りても将来返済していけるのか、経済面の不安は尽きないかもしれません。
また、入試を突破できる十分な学力を身につけられるのかという点でも心配が残るでしょう。
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