2027年に大学入学共通テスト(以下、共通テスト)を受験する皆さん、そして保護者の皆様、「得点調整」という言葉を聞いたことがありますか。
これは、選択した科目によって有利・不利が生じないように、特定の条件下で点数を調整する制度です。
場合によっては、この得点調整が志望大学の合否を左右する可能性もあります。
この記事では、複雑で分かりにくいと思われがちな共通テストの得点調整について、その基本的な仕組みから、対象となる科目、実施される条件、そして自分の得点や合否にどう影響するのかまで、過去の事例を交えながら網羅的に解説します。
得点調整に関する疑問や不安を解消し、安心して本番の試験に臨むための準備を整えましょう。
目次
共通テストの得点調整とは?仕組みと実施される条件を解説

共通テストにおける「得点調整」とは、特定の教科・科目間において、問題の難易度の差によって生じる不公平を是正するために実施される特別な措置です。
大学入試センターが定めたルールに基づき、受験生がどの科目を選択したかによって有利・不利が生じないよう、特定の科目の素点を調整(通常は引き上げ)する仕組みです。
科目間の著しい平均点の差を、統計的な処理によって縮小し、受験生間の公平性を保つことが得点調整の主な目的です。
3つの条件をすべて満たした場合にのみ実施が検討
例えば、同じ「理科②」のグループ内で、「物理」の平均点が著しく高く、「生物」の平均点が極端に低かったとします。
この場合、同じ100点満点の試験でありながら、「生物」を選択した受験生は「物理」を選択した受験生に比べて不利になる可能性があります。
ただし、この得点調整は毎年必ず行われるわけではありません。
得点調整が実施される3つの条件があります。
対象となる教科グループであること
得点調整の対象となるのは、複数の選択科目が存在する以下の3つの教科グループに限られます。
- 地理歴史(世界史B、日本史B、地理B)
- 公民(現代社会、倫理、政治・経済)
- 理科②(物理、化学、生物、地学)
当該グループ内に受験者数が1万人以上の科目が2つ以上あること
上記の教科グループ内で、それぞれの科目の受験者数が1万人以上であることが必要です。
これにより、統計的に信頼できるデータに基づいて調整が行われます。
受験者数が1万人未満の科目は、他の条件を満たしていても得点調整の対象外となります。
科目間の平均点に20点以上の差があること
受験者数が1万人以上の科目が複数存在するグループ内で、次のいずれかに該当し、その差が試験問題の難易差に起因すると大学入試センターが判断した場合に、得点調整の対象となります。
一つ目は、最も平均点の高い科目と最も平均点の低い科目の差が20点以上生じた場合です。
これは従来から採用されてきた基準です。
二つ目は、平均点差が15点以上生じ、かつ段階表示(スタナイン)の区分点差が20点以上生じた場合です。
この基準は令和7年度試験から新たに追加されたもので、平均点だけでは捉えきれない成績分布の偏りによる不公平を補うために導入されました。
これらの条件が一つでも欠ければ、たとえ科目間の平均点に19点の差があったとしても、得点調整は行われません。
得点調整の仕組みと計算方法
得点調整には「分位点差縮小法」という統計的な手法が用いられます。
調整対象グループ内で最も平均点が高かった科目を基準とし、平均点が低い科目の各順位の受験生の点数を、基準科目の同順位の点数に近づける形で換算表が作成されます。
最も平均点が高かった科目の点数は一切変更されず、調整は平均点が低い科目の点数を引き上げる方向でのみ行われるため、自身の点数が下がることはありません。
ただし、全員に一律加算されるわけではなく、0点は0点、100点は100点のまま据え置かれ、成績上位層より中位〜下位層の方が上がり幅が大きくなる傾向があります。
「得点調整」の発表時期と、国公立大出願まで
得点調整の有無は、国公立大学の出願校決定を左右する重要な情報です。
令和5年度試験では、1月14日・15日の本試験から約1週間後の1月20日に発表され、国公立大2次試験の出願期間(1月23日開始)まで数日しかありませんでした。
そのため、自己採点の結果をもとに、あらかじめ複数の出願パターンを検討しておくことが重要です。
得点調整の対象科目過去の実施歴(前例)
得点調整は、大学入試センター試験の時代から数えても、これまでに4回しか実施されていません。
初回は平成10年度(1998年度)の地理歴史、2回目は平成27年度(2015年度)の理科②、3回目は共通テスト移行後の令和3年度(2021年度)の公民・理科②、4回目は令和5年度(2023年度)の理科②です。
直近の実施例を以下にまとめます。
【2021年度(令和3年度):公民・理科②で実施】
令和3年度の共通テストでは、公民と理科②の2教科グループで20点以上の平均点差が生じたとして、得点調整が実施されました。
公民は「現代社会」「倫理」「政治・経済」の3科目間で調整が行われ、「倫理,政治・経済」(複合科目)は対象外でした。
理科②は「物理」「化学」「生物」の間で調整が行われ、「地学」は受験者数が1万人未満のため対象外とされました。
【2023年度(令和5年度):理科②で実施】
令和5年度の共通テストでは、理科②において「物理」の平均点が63.39点、「化学」が48.56点、「生物」が39.74点となり、物理と生物の間で23.65点の差が生じたため、得点調整が実施されました。
得点調整により引き上げられた点数は「化学」で最大7点、「生物」で最大12点でした。
「地学」は受験者数が1万人未満のため、今回も対象外となりました。
【2024年度(令和6年度)~2026年度(令和8年度):得点調整なし】
令和6年度の共通テストでは、公民において「倫理」56.44点、「政治・経済」44.35点で最大差が12.09点にとどまり、20点の基準に届かなかったため、得点調整は行われませんでした。
令和8年度の共通テストでも、理科において「物理」と「化学」の平均点差が最大12点台となりましたが、20点の基準には届かず、得点調整は行われませんでした。
このように、得点調整は毎年実施されるわけではありませんが、ひとたび条件を満たせば大きな点数変動が生じます。
特に医学部受験においては、1点の差が合否を分けることも珍しくなく、得点調整の有無が志望校選定に直接影響するケースもあります。
過去の傾向を踏まえると、理科②(特に物理・生物間、あるいは物理・化学間)で平均点差が開きやすいことが見て取れます。自分が選択する科目について、こうした実施歴を事前に把握しておくことが重要です。
得点調整は不公平?受験生への影響と有利・不利について

この制度の目的は、選択科目による有利・不利を是正し、受験生間の公平性を確保することにあります。
しかし、その調整方法や結果が個々の受験生に与える影響は一様ではないため、「かえって不公平ではないか」といった不安や疑問の声が上がることも少なくありません。
得点調整の仕組み
具体的には、対象となった科目グループの中で、平均点が最も高かった科目の受験生の得点は一切変更されません。
そして、それよりも平均点が低かった他の科目の受験生の得点が一律に引き上げられます。
この仕組みにより、自分の得点が調整によって下がることは絶対にありません。
しかし、このルールが受験生の立場によって異なる影響を及ぼすことになります。
平均点が低かった科目を選択した受験生
これらの受験生は得点調整の直接的な対象となり、自身の得点が素点よりも引き上げられるため、基本的には有利に働きます。
素点が上昇することで、共通テスト利用入試での合格可能性が高まったり、当初の予定よりも上位の国公立大学への出願を検討できるようになったりするなど、具体的なメリットが期待できます。
ただし、注意すべき点もあります。
点数の上昇幅は、成績上位層よりも中位層から下位層にかけて大きくなる傾向があるとされています。
そのため、「思ったよりも点数が上がらなかった」と感じるケースも起こり得ることは理解しておく必要があります。
平均点が高かった科目(基準科目)を選択した受験生
彼らの得点は変わらない一方、他の科目の受験生の得点は引き上げられます。
その結果、全体の得点分布が変動し、相対的に自分の順位が下がる可能性があります。
例えば、同じ大学・学部を志望するライバルが得点調整で持ち点を上げ、自分を追い抜いて合格ボーダーラインを超えてくるかもしれません。
自身の努力とは無関係な要因で合否が左右されるため、不公平感を抱く受験生がいるのは自然なことといえるでしょう。
受験生にとって最も注意すべき点
得点調整後の成績は、大学入試センターから各大学に提供され、合否判定に利用されます。
共通テストの科目ごとの配点や利用方法は大学・学部・入試方式によって異なるため、志望する大学がどの科目をどのように利用するかを事前に把握しておくことが重要です。
そのためには、各大学が発行する「入学者選抜要項」や「学生募集要項」を出願前に必ず確認しましょう。
不明な点があれば、大学に直接問い合わせることをおすすめします。
「募集要項」で確認すべき重要ポイント
大学の入試方針を確認する最も確実な方法は、「入学者選抜要項」や「学生募集要項」です。
国公立大学は選抜要綱が6〜7月頃、詳細な募集要項が12月中旬までに公開されるのが一般的です。
私立大学も大学ウェブサイトの入試情報ページで夏以降に順次公開されます。
確認の際は「大学入学共通テストの利用方法」や「合否判定基準」の項目に注目しましょう。
利用科目や配点は大学・学部・入試方式によって異なるため、志望校すべての募集要項に目を通し、自分の目で確かめることが後悔のない出願戦略につながります。
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1点の差が合否を分ける医学部受験において、共通テストは決して軽視できない関門です。
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まとめ

大学入学共通テストにおける「得点調整」とは、選択科目間で生じる平均点の著しい差による不公平を是正するための制度です。
特定の科目を選択したことによる有利・不利が生じないようにする措置であり、過去の実施例からどの科目で起こりやすいか傾向をつかめます。
実施有無は、自己採点をもとに出願校を検討する重要な時期、1月20日前後に発表されるのが通例です。
ただし、得点調整の可能性に一喜一憂する必要はありません。最も重要なのは、目の前の試験で持てる力を発揮し、1点でも多く得点することです。
そのためには、入試制度の知識だけでなく、確かな学力と戦略的な受験対策が必要です。
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