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「EBM(根拠に基づく医療)」とは?意思決定への影響要因も解説-医学部受験生のための医療用語解説

「EBM(根拠に基づく医療)」とは?意思決定への影響要因も解説-医学部受験生のための医療用語解説

医学部受験の二次試験では、医師として適性があるかどうか、医師に相応しい人間性かどうかを見極めるために小論文や面接が課されます。

扱われるテーマはさまざまですが、頻出とされる「覚えておくべき用語」については、しっかりと理解を深めておきましょう。

今回のテーマはEBM(根拠に基づく医療)です。

EBM(根拠に基づく医療)とは

EBMとは、「Evidence-Based Medicine」の略であり、日本語で「根拠に基づく医療」のことです。

昔の医療では、それぞれの医師の経験や勘を頼りに医療行為を行うことがありました。

しかし、経験や勘を頼りにした医療行為では、患者の体調が改善しない可能性や、逆に悪化する恐れもあります。

このような事態を防ぐために、EBMが重要であるとして、化学的な根拠をベースとして医療方針を決め、実際に医療行為を行うことが大切です。

また、EBMにおける注意点として、データや数値、過去の事例といった定量的な医学的根拠だけがEBMにおける根拠とは言えないことが挙げられます。

詳しくは後述しますが、患者の考え方や医師の経験も踏まえて、総合的かつ最前と考えられる根拠に基づいた医療を提供することが大切です。

EBM(根拠に基づく医療)での意思決定ポイント


ここまで、EBMの概要について解説しました。

EBMを行う場合、根拠・価値観・資源という3つの意思決定のポイントによってどのような処置が行われるかが決まります。

それぞれ順番に解説します。

根拠

根拠とは、臨床実験などによって得た、その医療行為が科学的に安全性が担保されていることを示すものです。

昔の医療にあるような、医師の勘や経験だけに頼った医療行為は、客観的に安全で効果があるものである保証が無いため、EBMには属しません。

現代では、多くの医薬品や療法に関しては、入念な臨床実験などから客観的に有効であることを裏付けるデータが示されてから利用されます。

これは、医師がEBMを行うために必要なのです。

価値観

ここでいう価値観とは、患者がどのように病気と付き合っていきたいのかや、治療を進めていきたいかという考え方のことです。

たとえば、医師は副作用が強いものの、即効性のある薬を処方したとしても、患者が即効性よりも副作用の軽さを重視している場合は、EBMとは言えません。

患者の価値観の観点からEBMが最も重視されるのが終末医療です。

特にがん患者の中には、副作用の強い抗がん剤を用いずに、治療をしていきたいという価値観を持つ方がいます。

この場合、抗がん剤を使ったほうが改善の余地があったとしても、抗がん剤を使わないことがEBMになります。

このように、EBMにおいては、科学的根拠だけではなく、患者の人生としての価値観も考慮することが重要です。

資源

資源とは、患者が治療に費やせる時間やお金、労力のことです。

医療の現場において、患者のライフスタイルや、治療にかけられる時間やお金を考慮して治療を行うことが大切です。

たとえば、治療にあたって入院が最も効率が良かったとしても、患者には育児に費やす時間が必要である場合は、限られた時間の中で治療を行わねばなりません。

科学的には最適解であったとしても、患者が使えるお金や時間を上回る治療は、EBMとは言えません。

EBMを行うためには、必ず患者が使えるお金や時間の中で、最適化した医療を提供する必要があります。

EBM(根拠に基づく医療)が重要な理由

ここまでEBMを裏付ける3つの要素について解説しました。

当然ながら、医療現場におけるEBMは患者の生活をより良いものにするために非常に重要です。

また、その他にもEBMが重要であるとされているのには、下記の2つの理由があります。

・信頼や根拠のある治療をするため
・患者様に悪影響を及ぼさないため

それぞれの理由について、順番に解説します。

信頼や根拠のある治療をするため

患者様にとって、医師に求めることは、今の症状が治る根拠がある治療を提供してもらうことです。

EBMは、根拠のない治療によって、患者様が無駄な通院をしたり、悪影響を被ったりすることを防ぐために作られたものです。

EBMを行うことで、科学的根拠がある治療を提案できるとともに、患者の信頼も獲得できるため、結果的に良質な治療を行えるようになります。

患者に悪影響を及ぼさないため

患者に悪影響を及ぼさないことは、医療の現場において非常に重要です。

そのため、EBMにおいては「根拠」が非常に重要視されます。

昔の医療において、根拠が無いにも関わらず、患者様に服薬をさせた結果、副作用などによってより症状が悪化する例などもありました。

また、「根拠」以外にも「価値観」や「資源」に準拠していない場合、患者様に過度なストレスを与える恐れがあります。

患者に悪影響を与えないためには、EBMを行うことが必要があるのです。

EBM(根拠に基づく医療)のデメリット(課題)


ここまで解説してきたように、EBMは患者様に適切な医療を提供するために非常に有効です。

しかし、EBMを行う際は、メリットだけではなくデメリットもあります。

EBMにおけるデメリットは大きく分けて下記の3点です。

・医療提供側に高い知識レベルが求められる
・多くの症例をエントリーできる病院が少ない
・患者側が自分の問題に対して受け身になる可能性がある

それぞれ順番に解説していきます。

医療提供側に高い知識レベルが求められる

EBMを行う場合、医療提供側に高い知識レベルが求められます。

なぜなら、EBMはデータや根拠をもとにした医療でありながら、それらに依存した画一的な医療ではないからです。

EBMは根拠のほかにも2つのポイントを踏まえて意思決定を行う必要があります。

また、3つのポイントを踏まえて意思決定を行うためには、患者の状態を正確に把握する技術や知識が求められます。

EBMを行いたくても、医療提供側の知識が不足しているケースが多分にあるのです。

多くの症例を登録できる病院が少ない

EBMにおける根拠は、過去の症例などのデータによるものです。

しかし、多くの症例を院内でデータ化し、保存できる病院は非常に少数です。

特に地方のクリニックや、開業医の病院では、多様な症例が集まらず、データ不足に陥ってしまう可能性が非常に高くなります。

EBMを行う上で必要なデータが手に入りにくい病院にとって、自ら症例をデータベースから探し出す必要があります。

これは非常に手間がかかる作業であり、時間を割けない医師が多いため、EBMを行うのは困難なのです。

患者側が自分の問題に対して受け身になる可能性がある

ほとんどの場合、患者は医療に関する知識がないため、担当医に判断を委ねるほかありません。

つまり、自分の症状に対して受け身の姿勢で接することになります。

そのため、たとえ医師がEBMができていなかったとしても、誰も気づくことができないケースが非常に多いです。

まだ、医師の診断に疑問を抱き、セカンドオピニオンを行う患者はごく少数であるため、医療提供側も自らEBMができていないことを、自覚しづらいのです。

EBMを広げるためには、患者側に基礎的な医療の教育を施す必要があります。

EBM(根拠に基づく医療)の入試対策


ここまでEBMの概要やメリット、デメリットについて解説しました。

EBMを行うためには、様々な障壁を乗り越える必要があり、日本でもすべて医療機関で行えているとは断言できません。

医学部受験において、このような日本の医学における問題に対して、論理的に述べる能力が求められます。

EBM関連の問題における医学部受験の入試対策は下記の通りです。

・EBMの概要を適切に理解する
・小論文の対策を強化する

それぞれ順番に解説します。

EBM(根拠に基づく医療)の概要を適切に理解する

EBMに関する小論文を書いたり、面接での問いに答えたりするためにはEBMの概要を適切に理解する必要があります。

概要を適切に理解できていなければ、EBMに対する適切な意見ができず、論理が破綻する恐れがあります。

EBMの概要については、主に下記の点について把握しておきましょう。

・EBMとは何のことを示しているのか
・EBMを行う上での意思決定を決める要素は何か
・EBMを行うことによって得られるメリットや課題
・EBMの現状と展望

上記の内容を正確に把握した状態で、かつ課題に対する自分の意見を持っておくことが大切です。

また、EBMに関する意見があれば、それを論理的に説明できる状態にしておきましょう。

小論文の対策を強化する

EBMに関する意見を述べる小論文は、多くの医学部の受験問題として出題されてきました。

EBMという言葉を使っていなくても、「セカンドオピニオン」や「インフォームドコンセント」などの、EBMに関連性のある事柄に対する意見を書く問題が頻出です。

そのため、EBM全体の概要を把握した上で、EBMに関する意見を論理的に説明できれば、多くの問題への対応力が上がります。

また、小論文では、素早く頭の中を整理し、論理的な文章を書くことが求められます。

小論文対策として、EBM関連の問題をいくつか解いて、小論文の出題スタイルに慣れておくと良いでしょう。

EBMに関連する例題

EBMに関する小論文の出題の中には、EBMの意義やEBMの導入による医療の変化などを述べる問題が非常に多いです。

まずは、下記の過去問題の解答を作成してみましょう。

・EBMは現代医療に何をもたらしたか。

(2019,群馬大,推薦)
・EBMとNBMの違いと意義について(2014, 福岡大)

また、作った小論文は学校の先生や医学部専門塾の先生に必ず添削をしてもらいましょう。

過去問を回答した上で、添削を受けることで、より高い得点を取れる回答を作れます。

まとめ


今回の記事では、EBMの概要やメリット・デメリットとともに、医学部入試におけるEBM関連の問題の出題傾向について解説しました。

EBMは医療における非常に大きな課題であり、常に求められる理想的な医療です。

必ず概念を理解した上で、自分の意見を述べられるようにしておきましょう。

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