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ある双曲線上の有理点は「無限個」であることの証明(媒介変数表示の活用)

ある双曲線上の有理点は「無限個」であることの証明(媒介変数表示の活用)

今回は双曲線 \(4x^{2}-y^{2}=1\) 上にある有理点(\(x\) 座標および \(y\) 座標が有理数となる点)が無限個であることを媒介変数表示を活用して証明します。


まず \(t\) についての恒等式を用意します。

\(\displaystyle \left(t+\frac{1}{t}\right)^{2}-\left(t-\frac{1}{t}\right)^{2}=4\)

この等式を変形すると

\(\displaystyle \left\lbrace \frac{1}{2}\left(t+\frac{1}{t}\right) \right\rbrace^{2}-\left\lbrace \frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) \right\rbrace^{2}=1\)

が得られます。

一方 \(4x^{2}-y^{2}=1\) は \((2x)^{2}-y^{2}=1\) と書けることから

\(\displaystyle x=\frac{1}{4}\left(t+\frac{1}{t}\right) \) , \(\displaystyle y=\frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) \) とおくと点 \( (x,y) \) は双曲線 \(4x^{2}-y^{2}=1\) 上にあると言えます。

これをもとにすれば \(\displaystyle x=\frac{1}{4}\left(t+\frac{1}{t}\right) \) , \(\displaystyle y=\frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) \) (\(t\) は実数) は双曲線 \(4x^{2}-y^{2}=1\) の媒介変数表示を与えることが分かります。

(厳密には \(x\) , \(y\) のとりうる値の範囲を調べる必要があります。)


さて、得られた媒介変数表示を用いて双曲線 \(4x^{2}-y^{2}=1\) 上にある有理点を調べてみましょう。

試しに \(t=2\) を媒介変数表示の式に代入してみます。

すると \(\displaystyle x=\frac{5}{8}\) ,\(\displaystyle y=\frac{3}{4}\) となるため、

\(\displaystyle \left(\frac{5}{8} , \frac{3}{4}\right) \) は双曲線 \(4x^{2}-y^{2}=1\) 上の有理点と言えます。

次に \(t\) を有理数としましょう。

\(\displaystyle\frac{1}{t}\) も有理数ですから \(t\) と \(\displaystyle\frac{1}{t}\) の和や差も有理数になりますし、それを \(2\) や \(4\) で割った数も有理数になります。したがって \(\displaystyle x=\frac{1}{4}\left(t+\frac{1}{t}\right) \) , \(\displaystyle y=\frac{1}{2}\left(t-\frac{1}{t}\right) \) から \(x\) , \(y\) も有理数となります。

\(t\) は任意の有理数ですから、「無限個」あります。

特に \(t=1,2,3,4,\dots\) としていくと \(x\) も異なる値を取りながら増加していきます。(厳密な議論は割愛しています)

したがって有理数 \( (x,y) \) の組み合わせも無限にあります。

これで証明完了です。

まとめと補足

今回は媒介変数表示に根号などが入らない「分数式」の形で書けることを活用しました。

実は \(4x^{2}=(2x)^{2}\) と書けたことが証明に大きく貢献しています。たとえば \(4x^{2}-y^{2}=1\) ではなく、 \(3x^{2}-y^{2}=1\) などであれば同様の手法はとれません。そもそも有理点が無限個ではない可能性も出てきます。


機会があれば「有理点が1つも存在しない双曲線」「有理点の個数の分類」に関しても紹介したいと思います。

それでは最後までお読みいただきありがとうございました。

投稿者:福居 宏大

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    京都大学大学院理学研究科
  • 特技・資格
    数学
  • 趣味
    数学
  • 出身地
    数学
  • お勧めの本
    Rational homotopy theory (Graduate Texts in Mathematics) ※数学科に進学した人向けです。

受験生への一言
数学をしましょう。