ホーム » 京都医塾公式ブログ » 医学部入試問題分析 » 2023年度関西医科大学医学部の化学過去問対策・分析

京都医塾公式ブログ

2023年度関西医科大学医学部の化学過去問対策・分析

2023年度関西医科大学医学部の化学過去問対策・分析

京都医塾化学科です。
このページでは「関西医科大学医学部の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“関西医科大学医学部”の受験を考えている方
・“関西医科大学医学部の化学がどのような問題か知りたい”という方

オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2023年度
形式:記述式
制限時間:理科2科目で120分
配点:100点

出題の傾向と特徴

理論化学・有機化学分野が重視されており、理論化学では酸・塩基、酸化・還元、化学平衡、有機化学では糖類、アミノ酸・タンパク質からの出題が多くなっています。計算問題の割合が多いですが、その他にも論述・描図なども出題されており、出題形式が多岐にわたるので日頃から様々な問題にあたり、慣れておく必要があります。

【毎年恒例の出題単元】

毎年決まって出題される特定の単元はありません。化学基礎・化学の全範囲から満遍なく出題されるので、苦手な単元を作らないように日々の学習に取り組んでいきましょう。

【頻出の出題単元】

上述のとおり、特定の単元に出題が偏ることはないですが、強いて言うなら有機化学分野の出題では、高分子化合物の出題が多いです。学習が後回しになりがちな分野なので、特に現役生は早期に問題演習までを行っておきましょう。

【制限時間に対する問題量】

問題の難易度が非常に幅広いことと、上述のとおり計算問題の割合が多いことが相まって、制限時間内に全ての問題に解答することは難しい問題構成となっています。過去問などを活用して、典型的な問題に対する解答速度を速めておくことと、計算問題の立式までを手早く出来るように訓練しておきましょう。

2023年度(最新の過去問)の分析

さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問】 気体の法則、熱化学方程式、反応熱

問1:飽和蒸気圧に関する正誤問題でした。飽和蒸気圧と気液平衡について、根底からの理解が必要でした
問2:気体を封入したボンベの体積を状態方程式から求める問題でした。計算は煩雑ですが、手早く解答したい問題でした。
問3:炭化水素の一般式に対して、その燃焼熱を計算する問題でした。文字式になっても典型問題と同じように対処出来れば解答できる問題でした。
問4:アンモニアの燃焼熱を求める問題でした。アンモニアの酸化反応は触媒がない状態では窒素の単体が生成することに注意。
問5:一酸化窒素をアンモニアと酸素と反応させる化学反応式を書く問題でした。反応物までが問題文で指定されているので、焦らずに正答したい問題でした。

≪2023年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…7.5割
他教科を得点源にしたい受験生…6割

【第2問】 陽イオン分析、アンモニアソーダ法

問1:鉄(Ⅱ)イオンに加えることで青白色沈殿が生じる試薬を答える問題でした。典型的な問題で聞かれる濃青色沈殿を生じる組み合わせではないので注意。
問2:二酸化硫黄を水に溶かしたときの化学反応式を答える問題でした。銅と熱濃硫酸の反応で二酸化硫黄が生じることが理解できていれば平易でした。
問3:沈殿・錯イオンの形成実験から、3種類の金属陽イオンを推定する問題でした。典型的な金属陽イオンの分離問題に慣れていれば平易でした。
問4:金属酸化物を炭素で還元する実験から、得られる金属の質量を求める問題でした。発生した気体の量から化合していた酸素の質量が求まるので、それが求められたかどうかの問題でした。
問5:炭酸ナトリウム十水和物の風解を答える問題でした。アンモニアソーダ法からの流れでしたが基本知識で答えられる問題でした。

≪2023年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…9割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【第3問】 天然繊維・合成繊維の性質と反応、凝固点降下

問1:ニンヒドリン反応に関する問題でした。基本知識です。
問2:ビニロンの合成に関する計算問題でした。官能基の一部を化学修飾する問題は頻出なので、確実に解けるようになっておきましょう。
問3:シュワイツァー試薬の作成と聞くと面食らうかもしれませんが、銅の錯イオン形成反応を答える問題でした。基本知識で解ける問題でした。
問4:凝固点降下度から繊維の分子量を求める問題でした。計算自体も平易なものなので、確実に正解したい。
問5:ナイロン6の単量体の構造式を書く問題でした。繊維Eがナイロン6であることはニンヒドリン反応に陽性であることなどからわかるので、あとはその単量体であるε-カプロラクタムを書けば正解となります。

≪2023年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…9割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【第4問】 気体の状態方程式、マルトース・デンプンの酸化反応

問1:空気中の酸素の質量を状態方程式から求める問題でした。計算を除けば平易でした。
問2:呼気中の二酸化炭素の二酸化炭素の分圧を求める問題でした。こちらも状態方程式から求まるので、計算以外は平易でした。
問3:呼吸時に体内に取り込まれる酸素の物質量を求める問題でした。空気中の酸素と呼気中の酸素の両方を状態方程式から求める必要があるので、計算が煩雑になりがちです。手早く解答できるように計算速度を高める訓練を行っておきましょう。
問4:マルトースの燃焼反応を答える問題でした。基本知識で答えられる問題でした。
問5:取り込んだ酸素により酸化できる、デンプンの最大の質量を求める問題でした。デンプンの燃焼の式が書ければそれほど複雑な計算は必要ないので、正解を目指したい問題でした。

≪2023年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…8割
他教科を得点源にしたい受験生…6.5割

【総評】

理論化学分野の問題に思考力を要する問題が多く、計算もやや煩雑なものが多かったので、問題文から情報をどれだけ正確に読み取れたかによって差が出たと思われます。また、無機化学、有機化学分野の問題は基本的な知識を問う問題が多かったですが、第3問の化学繊維など、受験生の知識の穴になりやすい分野からも出題されていました。計算問題に対する練習を積んでおき、基本知識を全分野にわたってきちんと定着させておかないと合格点には届かないでしょう。

まとめ

というわけで、今回は関西医科大学医学部の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:安達 康明

  • 役職
    化学科統括/化学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    8年
  • 出身大学
    京都大学工学部
  • 特技・資格
    バレーボール
  • 趣味
    ゲーム、アニメ鑑賞
  • 出身地
    岡山県
  • お勧めの本
    ビーカーくんとそのなかまたちシリーズ

受験生への一言
なぜその思考が必要なのか、なぜこの解法なのかをキチンと理解できれば点数は必ずついてきます。その手助けをしていくことを最優先で考え、授業を進めています。合格のために出来るサポートは全力でやります。