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2023年度獨協医科大学医学部の数学過去問対策・分析

2023年度獨協医科大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「獨協医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“獨協医科大学”の受験を考えている方
・“獨協医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2023年度(最新の問題より) 
形式: マーク式(穴埋め)
制限時間:60分
配点: 100点(筆記試験の総得点は400点)

出題の傾向と特徴

直近5年分についての傾向をまとめます。

【問題の構成】

・2022年度までは、第1問は(1)と(2)が別の問題になっていました(2020年度まで70分で5問だった名残だと考えられます。)が、2023年度は第1問から第4問まで全て大問構成になっています。

・テーマの選択は少し難しめのことが多いです。

ただし、誘導が丁寧についているので、難しいテーマの問題も諦めずに、一つ一つの設問をよく読んでみましょう。

最後までは解けなくても、ある程度は手がつけられるようになっていることが多いです。

【制限時間に対する問題量】

獨協医科大学の数学の大きな特徴は、完答することが非常に困難な問題量です。

難問がたくさん出題されるわけではないのですが、一問一問が骨のある問題になっており、少しでも解法を思いつくのに時間がかかったり、計算ミスがあるだけで、もう満点を取ることは無理でしょう。

現実的には、数学で満点を狙う必要は全くありませんので、「解ける問題を確実に解く」ことを徹底するべき大学です。

【毎年恒例の出題単元】

確率とベクトルの問題が毎年出題されています。

2013年度から2020年度までは、第2問が確率・第3問がベクトルという流れが続いており、獨協医科大学の定番の流れとなっていました。

2021年度に時間と大問がカットされてからは、確率は2021年度・2022年度に第1問の半分、ベクトルは2022年度に出題無しと、多少傾向が変化していました。

しかし、2023年度は確率とベクトルがともに大問で出題されており、元の定番の流れが復活したと言えます。2024年度も、この傾向を踏襲するものと思われます。

2023年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※獨協医科大学の1次試験日は2日間設定されており、どちらかを選ぶことになります(2日間とも受験することも可能です)。本記事では公開されている1日目の問題の分析を行います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 確率】(難易度:標準)

袋の中から1個ずつ玉を取り出す、「くじ引き」を題材にした問題です。

・終了条件が2通りあるため、終了までの引く回数が最小2回、最大4回になっています。

・取り出した玉の色によって袋の中の赤・白の玉の個数(=赤・白の球を取り出す確率)が変動するので、「反復試行」の考え方を使うことができません。

袋の中身(赤・白の配分)を追いかけながら「確率の乗法定理」(要するに「確率の掛け算」)を利用して丁寧に調べ尽くすことができれば、正答することは難しくありません。しかし、全体の制限時間を鑑みると、完答するためには効率的に解き進める必要があるでしょう。

「最大で4回引けば終了」に着目し、全ての引き方のパターンを調べてもそこまで多くない(全部で10パターンです)ということに気付けば、全体像が見えて解きやすくなるでしょう。「余事象」も使いやすくなります。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…完答も狙いたい。
他教科を得点源にしたい受験生…(2)まで。

【第2問 2次曲線】(難易度:標準~やや難)

第2問は円\(x^2+y^2=r^2\)を\(y\)軸方向に\(\frac{\sqrt{3}} {2}\)倍した図形、つまり横長型の楕円に関する問題です。

まずは、焦点から楕円と\(y\)軸の交点までの距離から、\(r\)の値(と\(a\),\(b\)の値 )を求めます。

2次曲線に限る知識ではありませんが、
関数のグラフを
\(x\)軸方向に\(a\)倍するときは\(x\)→\(\frac{x} {a}\)に置き換え
\(y\)軸方向に\(b\)倍するときは\(y\)→\(\frac{x} {b}\)に置き換え
という操作を行います。

また、「楕円は2定点(⇒焦点)からの距離の和が一定(⇒長軸の長さ)」という知識があれば、\(r\)の計算がスムーズに行えます。

(1)の前半は、楕円の接線のうち特定の線分と平行(傾きが\(\sqrt{3}\) )であるものを求めます。

【解法1】
接点の座標を( \(s\) , \(t\) )などと置いて接線の方程式を立て、「接点が楕円周上」・「傾きが\(\sqrt{3}\)」の条件を基に\(s\) , \(t\)の関係式を2つ立てれば、接線の方程式(同時に接点の座標も)が求められます。

【解法2】
「傾きが\(\sqrt{3}\)」より、接線の方程式を\(y=\sqrt{3} x+k\)と置き、「接する」→「連立した(2次)方程式が重解を持つ」→「(判別式)=0」と言い換えることで、\(k\)を定めることができます。

(1)の後半は、2定点と楕円周上の動点で作られる三角形の面積の最大値、及びその時の動点の座標を求めます。
誘導問題になっており、(1)の前半で求めた接線に対する接点が該当する点となります。
そのため、前半で【解法1】を選択しているとすぐに解けます。
【解法2】を採った場合は、改めて2次方程式の重解を求める必要があります。

先の展開を見通した解法選択が、解答時間短縮のためには必要となってきます。

面積の最大値に関しては、3点の座標が判明しているためベクトルの面積公式を利用するとスムーズでしょう。

(1)全体の完全な別解として、楕円周上の動点を媒介変数 \(\theta\)を用いて\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} x=a\cos \theta \\ y=b\sin \theta \end{array} \right. \end{eqnarray}
と表すことで、三角形の面積を1変数\(\theta\)で表せるので、その最大値を求める(三角関数の合成を使います)という方法があります。
この場合は、先に後半から求めることになります。

(2)の前半は、楕円の2焦点と楕円周上の1点Qで作られる三角形の内心Iの\(y\)座標を考察します。

・2焦点を結ぶ1辺が\(x\)軸上→内心の\(y\)座標が内接円の半径と等しい
・内接円の半径\(r\)を用いた三角形の面積公式:\(S=\frac{1} {2}r(a+b+c)\)
・楕円の定義:「2焦点からの距離の和が長軸の長さと等しい」
といった知識を組み合わせて解くことになるので、2次曲線に留まらず図形分野全般に対する経験が必要になってきます。

(2)の後半は、前半で登場した2点Q・Iによって焦点・準線を設定した放物線を考察します。

放物線の定義:「定点(→焦点)と定直線(→準線)からの距離が等しい点の集合」を活用して2点I,Qの\(y\)座標の関係式を立式し、前半で求めた等式を代入することで求めることができます。

限られた時間内で完答するのはかなり難しいと考えられます。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…(2)の前半まで。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)まで。

【第3問 ベクトル】(難易度:標準)

底面が平行四辺形である四角錐に関する問題です。

空間ベクトルの典型問題では四面体が扱われることが多いのですが、今回は底面が四角形であるため、「基準」となるベクトルが4本あるように見えてしまいます。
しかし、やはり空間上のベクトルは基準となるベクトルは3本で処理すべきです。
従って、始点Oから底面の頂点に伸びる4つのベクトル\(\overrightarrow{ OA }\),\(\overrightarrow{ OB }\),\(\overrightarrow{ OC }\),\(\overrightarrow{ OD }\)のうち1つを、残り3本を用いて表しておく必要があります。

始点Oから底面ABCDにおろした垂線の足Hが、平行四辺形の対角線の交点になっています。
このことから、\(\triangle\)OAC及び\(\triangle\)OBDが二等辺三角形であることが分かります。

このことと、
\(|\overrightarrow{ AC }|=\sqrt{61}\)
の両辺を2乗したうえで左辺のベクトルを始点:Oに変換して
\(|\overrightarrow{ OC }-\overrightarrow{ OA }|^2=61\)
この左辺を展開することによって\(|\overrightarrow{ OA }|^2\),\(|\overrightarrow{ OC }|^2\),\(\overrightarrow{ OA }\cdot\overrightarrow{ OC }\)の等式ができる

これを組み合わせることで、OA(=OC)の長さが求められます。
OB(=OD)に関しても、同様に\(|\overrightarrow{ BD }|=\sqrt{21}\)を2乗して展開することで求められます。

\(\overrightarrow{ OB }\cdot\overrightarrow{ OC }\)を計算する際には、先述の通り\(\overrightarrow{ OC }\)を残りのベクトル\(\overrightarrow{ OA }\),\(\overrightarrow{ OB }\),\(\overrightarrow{ OD }\)で表すことで計算が可能になります。

(1)は、上記計算結果を用いて平行四辺形の各辺の長さとその面積を求めます。
ここまでの計算過程を用いれば、特に問題なく求められるはずです。

(2)では、まず平面と直線の交点を終点とするベクトルを求めます。

この単元の超典型問題であり、
・「共線条件」、「共面条件」を用いて目標となるベクトルを2通りで表す
・3本の「基準となるベクトル」の係数比較
の2ポイントが押さえられていれば、難なく求められるはずです。

(2)の最後には、2つの内積の比を求めます。
この際、いずれの内積でも四角錐の高さ\(|\overrightarrow{ OH }|^2\)が絡んでいることに気付けば、面倒な途中計算を省くことができます。

中盤は典型的な展開であるとはいえ、計算量を抑えつつ効率的に解き進めるのはなかなかに難しく、完答は厳しいと言えます。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…(2)の真ん中まで、最後の内積の比は飛ばす
他教科を得点源にしたい受験生…まずは(1)まで、他の問題より取りやすそうなら(2)の真ん中まで

【第4問 定積分と関数列の漸化式】(難易度:標準~やや難)

定積分を利用した漸化式
\(f_{ n + 1 }(x)=\int_0^\frac{\pi} {3} cosx(sinx-sint)f_n(t)dt\)
によって定義されている 関数\(f_n(x)\)の係数を数列\(a_n\),\(b_n\)と表し、それらの一般項を求めていきます。

このように説明すると非常に難解な問題に聞こえるかもしれませんが、(1)までは誘導に乗るだけで解き進めることができるようになっています。

このような「定積分で定義される関数」の問題においては、「変数」と「定数」を区別して計算することが必要です。
この問題においては、定積分の末尾:”\(dt\)”は「\(t\)で積分する」という事を意味します。
つまり\(x\)(\(a_n\)や\(b_n\)も)は定数扱いであるため、\( \int \)の外側に出すことができます。

(1)の最初の\(a_1\),\(b_1\)に関しては、定義されている\(a_n\),\(b_n\)の式に\(n=1\)を代入して定積分を計算するだけで求まります。

次の\(a_{n+1}\),\(b_{n+1}\)に関しては、\(f_{n+1}(x)\)を上記「変数と定数の区別」に注意して計算し、\(a_n\),\(b_n\)の定義式を\(n\)→\(n+1\)としたうえで代入します。
その過程で\(a_n\),\(b_n\)が表れるため、\(a_n\)と\(b_n\)の「連立漸化式」が作成できます。

最後の\(a_{n+2}\)と\(a_n\)の関係式については、直前に求めた漸化式2つを組み合わせることで、簡単に求めることができます。
連立漸化式の解法の1つである「三項間漸化式に持ち込む」を扱った経験がある受験生ならば、特に苦労することなく着手できたはずです。

(2)は、(1)の最後に得られた\(a_{n+2}\)と\(a_n\)の「一つ飛ばし」の漸化式を解くことで、最終的には\(f_n(x)\)を特定することになります。

「一つ飛ばし」の漸化式に関しては、「偶数項と奇数項に分けて考える」という解法が身に着いていれば、漸化式自体は単純な等比数列であるため苦労せず求めることができます。

全体的に複雑なように見えますが、誘導がしっかりとついており、見た目ほど難易度は高くありません。
この問題にしっかり手を付けられたかで、差がつくものと考えられます。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)まで

【総評】

前年度出題されなかったベクトルが復活し、全体的な構成としては例年通りのこの大学の入試問題と言えるでしょう。

随所で述べているように、時間との勝負になるので、難しく感じる問題や時間がかかると判断した問題は、どんどん飛ばしていきましょう。

ただし、途中で詰まったときに、その後ろを全て諦めるのは危険です。

1つ飛ばしても、その後が埋まる可能性は十分ありますので、1点でも多く稼ごうとする気持ちを忘れないようにしましょう。

まとめ

解きやすい問題を見抜き、取り組む問題を取捨選択するという対策が有効です。

しかし、対策をしていない受験生は、問題量に圧倒されて、本来の力を出し切れない場合が多いはずです。

過去問対策をすることで、有利になれる大学の一つと言えるでしょう。

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