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2023年度愛知医科大学医学部数学の過去問対策・分析

2023年度愛知医科大学医学部数学の過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「愛知医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“愛知医科大学”の受験を考えている方
・“愛知医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2023年度(最新の問題より)

形式:小問集合(答えのみ)&記述式の大問
制限時間:80分
配点:150点(筆記試験全体の配点は500点)
愛知医科大学の数学は「80分・小問集合(答えのみ)&記述式の大問」という形式が続いています。
ただし、小問集合の問題数や全体の問題数は年度によって異なります。

2023年度:小問3問(うち1問はさらに3問に分岐)&記述式の大問2問
2022年度:小問4問&記述式の大問2問
2021年度:小問4問&記述式の大問2問
2020年度:小問8問&記述式の大問3問

出題の傾向と特徴(4年分)

直近4年分の出題の傾向と特徴をまとめます。

【小問集合に関して】

大問Ⅰは小問集合の形で出題されることが定番になっています。分野に偏りはなく、様々な分野から満遍なく出題されています。難易度はそれほど高くなく、小問集合でどれだけ点を落とさないかが大事になります。各分野の基礎事項を知識の穴を作ることなく理解し、基本的な解法を使いこなせるようにしておきましょう。

【記述式の大問について】

ここ3年の記述式の大問では、「数列」「微積分(数学Ⅲ)」「確率」「整数」「空間ベクトル」「図形と方程式」から幅広く出題されています。小問集合に比べると、難易度が高い問題が出題され、計算の量も質も問われる形になっていることが多いです。正確に答えを出すためにも、計算工夫などを積極的に行いましょう。また、大問の後半部には、難易度が高く、最後まで解ききることが難しい問題も出題されますので、過去問演習などで、その問題を見極める力も養う必要があります。

【制限時間に対する問題量】

試験時間80分に対して大問3つまたは4つであり、計算量を考えますと、やや厳しい時間設定になっています。小問集合では、難しい問題が出題されることもありますが、粘り強く取り組み、取るべき問題を取りきることを目標にしましょう。残りの各大問の後半部では、難易度の高い問題が出題される傾向にあるので、解くべき問題と捨てるべき問題を取捨選択しましょう。

2023年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【Ⅰ 小問集合】(易~標準)

1)種々の計算問題

(a) 微分計算の問題です。確実に正解しましょう。

(b) 積分計算の問題です。確実に正解しましょう。円や楕円の面積を活用することで速やかに計算できます。

(c) 三角関数の2つの値の和を求める問題です。2つの値を別々に求めるのは非効率です。「とりあえず和積の公式を用いて角を変えてみる」という姿勢があるかどうかが試されます。

2)正n角形の頂点を結んでできる三角形の個数

(a)直角三角形、(b)鈍角三角形、(c)鋭角三角形の順に求める典型的な問題です。

(a)(b)は種々の解法が存在しますが、それぞれの解法に共通するのが「個数を数えるときに『辺がどうなっているか』や『頂点がどうなっているか』を考えて”問題の言いかえ”を行う」ということです。この考え方は決して容易ではありません。そのため、同様の問題を解いた経験の有無が問題を解けるかどうかに大きく影響します。

3)群数列

自ら群の取り方を決めることで「群数列」の標準的な問題になります。

問われているものも(a)「\(\displaystyle \frac{5}{8} \) が最初に出てくるのは第何項か」(b)「第200項は何か」(c)「第200項までの和」という典型的な内容です。

群数列を学習した経験があるのなら確実に得点したい問題です。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…完答したい
他教科を得点源にしたい受験生…1)すべて、2)の(a)、3)すべて

【Ⅱ 図形と方程式】(やや難)

1)は「2直線の交点の軌跡」を求める典型的な問題です。

軌跡の方程式を求めるだけであれば、軌跡の解き方の手順を忠実に守るだけで事足りますので、確実に正解したいです。

しかし、「除外点」まできちんと求めようとすると、計算処理の中で場合分けのきっかけを見逃さないことが必要になりますし、場合分けして得られたそれぞれの図形を最終的に”合体”させなければ、除外点の存在の可能性に気づいても完璧な答案を書くのは容易ではありません。

2)は1)で登場した2直線と1)で求めた軌跡の交点で作られる3点に関して線分の長さの和の最大値を求める問題です。

1)で登場した2直線を用いること、1)では軌跡という「計算処理により解く問題」だったことから、直線の方程式と軌跡の方程式を連立することで座標や線分の長さを求める考えに至った受験生が非常に多いと考えられますが、この解法を選ぶと膨大な計算量が必要になります。

そこで必要になるのが「計算処理から図形的な考察に”切り替え”ることで計算を最小限に抑える」という考え方です。

定数を含む直線の式を図示する際に定点を考えたり、複数の直線が登場する際にそれらの直線に直交するものや平行であるものが含まれていないか考えたりする習慣を持っていれば、求めるべき交点が2直線のそれぞれが通る「定点」となっていること、そして2直線が直交することに気づけます。

1)から解法を”切り替え”るという発想が求められるため、正解するのは難しいでしょう。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…1)
他教科を得点源にしたい受験生…1)の「方程式」まで

【Ⅲ 積分法】(難)

\(xyz\) 空間において、球面のある点に接する円盤を \(z\) 軸のまわりに回転させてできる立体の体積を求める問題です。

問題は1)で \(z\) 座標の範囲を求め、2)で立体の平面 \(z=t\) における断面を考察し、3)で体積を求めるという構成です。

\(xy\) 平面における平面図形を \(x\) 軸もしくは \(y\) 軸のまわりに回転させてできる立体とは違い、空間内での立体的な図形の回転体を考えます。

そのため、回転前の立体の断面図を元に断面積を求め、それを適切な範囲で定積分をおこない体積を求めるという高度な解法が必要になります(一部の国公立大学では頻繁に出題されますが、この種の問題に対策できている受験生はかなり少ないと考えられます)。

なお、1)や2)の答えを出すだけであれば、\(xz\) 平面で切ったときに球面が円、円盤がその円に接する線分であることを用いれば平面における図形と方程式の問題として処理することも可能です。

実戦的には1),2)で「得点できれば十分」と考えて、この解法をとる方が得点を伸ばしやすいでしょう。

≪2023年度の目標値≫

数学を得点源にしたい受験生…1),2)
他教科を得点源にしたい受験生…なし

【総評】

小問集合であるⅠでできるだけ多く得点し、Ⅱの1)やⅢの1)2)で可能な限り得点を積み重ねることが合格水準に達するための近道です。加えてⅡの2)やⅢを「時間を優先的にかけるべき問題ではない」と判断する「難易度の見極め」も求められる構成でした。

まとめ

小問集合においては、分野の偏りなく正確に答えを導く力、各大問においては、解くべき問題を見抜いて解ききる力が必要になります。小問集合では各分野の基本的な解法が問われますので、まずは、苦手だと感じている分野を基礎事項から復習しておきましょう。そのうえで、問題演習などを通じて、標準レベル以上の問題にも対応できる力を養うと良いでしょう。

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