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2023年度大阪医科薬科大学医学部数学の過去問対策・分析

2023年度大阪医科薬科大学医学部数学の過去問対策・分析

京都医塾数学科です。このページでは「大阪医科薬科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“大阪医科薬科大学”の受験を考えている方
・“大阪医科薬科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2024年度
形式:記述
制限時間:90分
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)
大阪医科薬科大学の数学は2023年度まで「100分・記述式」という形式でしたが、2024年度の募集要項では、数学の制限時間が90分に変更になっています。

【頻出の出題単元】

直近5年では、毎年「確率」が出題されています。内容は基本的なものが多く、問題文を正確に読み取れれば完答できるようになっています。条件付き確率に関する出題も多いです。教科書レベルの問題を繰り返し練習し、基本的な考え方を身につけておきましょう。
また、数学Ⅲの「微分法・積分法」からも毎年出題されています。「微分法・積分法」は、グラフの概形から面積や回転体の体積を考える、オーソドックスな問題はあまり出題されません。「微分法」では、平面図形・空間図形の面積や体積に関する最大値・最小値を求める問題、「積分法」では、定積分と不等式や漸化式を絡めた問題が出題されています。図形の体積を求める問題は立体の切り口を考えるなど、図形的なセンスが必要となることが多いです。また、図形を考える際に三角比を利用することが多いので、計算を素早く処理するために、三角関数の微分・積分はよく訓練しておきましょう。

【制限時間に対する問題量】

2023年度までは、大問5題に対して試験時間が100分であり、正確な記述・証明が必要とされるため、あまり時間に余裕はありませんでした。2024年度は試験時間が90分とさらに短くなります。大問数が変化する可能性がありますが、解くべき問題を見極め、図形や式の対称性を利用するなどして、テキパキと問題をこなしていくことが大事になります。

【証明問題に関して】

整数や有理数・無理数、不等式などに関連する証明問題は毎年出題されています。各大問の後半部の証明問題は難度が高くなる傾向にありますが、前半部は、受験生ならば一度は経験したことのある証明問題が多いです。普段の学習から、整数に関する証明問題や図形の証明問題に数多く触れておきましょう。また、後半部の証明問題は、前半部の結果を用いて証明できるようになっていますので、誘導に乗れるように各大問の流れを意識しながら解きましょう。また、問題文に登場する文字の種類が多い証明問題では、対称性を利用することで記述量を減らすことができます。証明問題だけでなく求値問題でも、対称性を利用することで計算量を減らせますので、文字の対称性に注目するようにしましょう。

2023年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 微分法・積分法】(標準)

座標平面上で、放物線 \(C:y=x^2\) 上の異なる \(2\) 点 \(\textrm{A} (a, a^2)\),\(\textrm{B} (b, b^2)\) における \(2\) 本の法線の交点を \(\textrm{P}\) とし、点 \(\textrm{B}\) を点 \(\textrm{A}\) に限りなく近づけたときに点 \(\textrm{P}\) が近づく点を \(\textrm{Q}\) とします。
(1) 放物線 \(C\) の点 \(\textrm{A}\) における法線を求める問題です。
(2) 点 \(\textrm{Q}\) の座標を求める問題です。
(3) 点 \(\textrm{A}\) がある範囲 \(-1 ≦ a ≦ 1\) を動くとき、点 \(\textrm{Q}\) が描く曲線の長さを求める問題です。

(1) 素直に法線の方程式を求めれば良いでしょう。ただし、\(a\) が \(0\) のときの傾きに注意する必要があります。
(2) 点 \(\textrm{P}\) の座標を \(a\),\(b\) を用いて表した後に、\(\displaystyle \lim_{ b \to a }\) を計算しましょう。
(3) 曲線の長さの公式を用いましょう。積分計算もそれほど大変なものではありません。

他の大問に比べると、解きやすい問題です。問題の指示通りに解いていきましょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【第2問 微分法・積分法】(やや難)

関数 \(f(x)=e^x \sin(e^x) \) を考えます。
(1) 曲線 \(y=f(x) \) と \(x\) 軸との共有点を小さい方から順に \(\textrm{A}_{1} \),\(\textrm{A}_{2} \),\(\textrm{A}_{3} \),\(\cdots\) とします。\(\textrm{A}_{n} \) の \(x\) 座標を \(a_{n} \) と、線分 \(\textrm{A}_{n} \textrm{A}_{n+1} \) と曲線 \(y=f(x) \) で囲まれた面積を求める問題です。
(2) \(\textrm{A}_{n} \) における曲線 \(y=f(x) \) の接線と \(x\) 軸、 \(y\) 軸で囲まれた図形の面積を \(T_n \) とします。\( \displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac {T_{n+1}}{T_{n}} \) を求める問題です。
(3) \( a_n \lt x \lt a_{n+1} \) における曲線 \(y= \vert f(x) \vert \) と曲線 \( y=e^{x}\) との共有点を \( \textrm{B}_n \) とし、\( \triangle \textrm{A}_n \textrm{A}_{n+1} \textrm{B}_n \) の面積を \( U_n \) とします。\( \displaystyle \lim_{ n \to \infty} U_n \) を求める問題です。

(1) \( a_n \) は \( \sin(e^{x} ) =0 \) を考えましょう。\( e^{a_n} = n \pi \) と表せることに気づければ解けるでしょう。\( S_n \) は \( \displaystyle \int_{a_n}^{a_{n+1}} \vert f(x) \vert dx \) を計算することになります。絶対値は、 \( \sin x \) の周期性を利用するか \( \cos n \pi = (-1)^n \) を利用すれば良いでしょう。積分計算は、\( t= e^x \) とおいて置換積分することになります。
(2) まずは接線の方程式を求めましょう。そのうえで、接線の \( y \) 切片の符号に注意して三角形の面積を考えると、\( T_n \) が求まります。\( \displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac {T_{n+1}}{T_{n}} \) を計算する際に、\( \displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac { \log (n+1) \pi }{ \log n \pi } \) を考える必要があります。\( 1\) に収束するのは想像に難くありませんが、きちんと論述するには経験の有無がものを言うでしょう。
(3) \( \textrm{B}_n \) の座標は \( \sin(e^{x} ) = \pm 1 \) を考えることで求めましょう。極限計算では、\( e \) の定義式を用いる必要があります。

指数関数×三角関数で表される関数を考える問題ですが、多くの受験生は \( f(x) = e^{-x} \sin x \) (減衰曲線)などで経験しているでしょう。増減表を考えなくとも、曲線の概形は想像しやすく、どんな図形の面積を考えているかも分かりやすかったでしょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)(3)は解きたい。

【第3問 複素数平面】(難)

(1) \( n \) を \( 2 \) 以上の整数とします。実数係数の \( n \) 次方程式 \( f(x) = 0 \) が虚数解 \( \alpha \) をもつならば、\( \alpha \) の共役複素数 \( \bar {\alpha} \) も \( f(x) = 0 \) の解であることを示す問題です。
(2) \( n \) を正の整数とします。半径 \( 1 \) の円に内接する正 \( 2n+1 \) 角形 \( \textrm{A}_0 \textrm{A}_1 \textrm{A}_2 \cdots \cdots \textrm{A}_{2n-1} \textrm{A}_{2n} \) について、\( n \) 個の線分の長さの積 \( \textrm{A}_0 \textrm{A}_1 \times \textrm{A}_0 \textrm{A}_2 \times \textrm{A}_0 \textrm{A}_3 \times \cdots \cdots \times \textrm{A}_0 \textrm{A}_n \) を求める問題です。

(1) ほとんどの受験生が知っている性質を証明することになります。この性質の証明を一度は目にしたことがある受験生も多いでしょう。
(2) 複素数平面上で点 \( \textrm{A}_k \) が表す複素数を \( \displaystyle \alpha ^k = \cos \frac{2k \pi }{ 2n+1 } + i \sin \frac{ 2k \pi }{ 2n+1 } \) とおくことからスタートです。\( x^{ 2n+1} -1=0 \) の解が \( \alpha ^k ( k=0,1,2, \cdots 2n ) \) であることや \( \alpha ^k \) と \( \alpha ^{2n-k+1} \) が共役な複素数の関係であることなどを用いて解いていくことになります。

(2)を解ききることは厳しいでしょう。数学を得点源にしたい受験生には、(1)は解けてほしいです。普段の学習から、定理・公式の証明に気を配っておきましょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)のみ。
他教科を得点源にしたい受験生…解けなくても良い。

【第4問 確率】(やや難)

数字が書かれている \( 3 \) 枚のカードから \( 1 \) 枚引き、点 \( \textrm{P} \) をそこに書かれている数字にしたがって正三角形の頂点を移動させ、さらに移動した先の頂点に応じて文字列を作る試行を行います。特定の文字列が現れない確率を \( p_n ( n ≧ 2 )\) とします。
(1) \( p_2 \),\( p_3 \),\( p_4 \) を求める問題です。
(2) \( p_n ( n ≧ 2 )\) を求める問題です。

(1) それぞれのパターンを場合分けして解いていけば良いでしょう。\( p_4 \) を求める際に、\( p_2 \),\( p_3 \) を利用できることに気づければ(2)もスムーズに解けるようになっています。
(2) 確率漸化式の問題です。漸化式は隣接三項間漸化式になります。漸化式を作る際は、\( 1, 2 \) 回目の試行に注目しましょう。

(1)が(2)の漸化式を作るヒントになっています。文字列を作る<規則>自体はそれほど複雑なものではありません。確率を苦手としている受験生も、(1)ではパターンをすべて書き出し、計算していきましょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)は解きたい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)の \( p_3 \) までは解きたい。

【第5問 整数】(難)

\( n \) を正の整数とし、\( n! \) を \( 9 \) 進法で表したときに末尾に並ぶ \( 0 \) の個数を \( f(n) \) で表します。
(1) \( f(8) \),\( f(6789) \) を求める問題です。
(2) \( f(n) = k \) とするとき、\( 4k \lt n \) を証明する問題です。
(3) \( f(n) = 1000 \) を満たす最小の \( n \) を求める問題です。

(1) \( n! \) を \( 10 (=2 \times 5 ) \) 進法で表したときに末尾に並ぶ \( 0 \) の個数を考える問題の経験はあるはずです。その場合は、素因数 \( 5 \) の個数を数えることになります。この問題では、\( 9 (= 3^2) \) 進法で表しているので、素因数 \( 3 \) の個数を数えていくことになります。ただし、素因数 \( 3 \) が \( 2 \) 個あって初めて末尾に並ぶ \( 0\) が \( 1 \) 個増えることに注意が必要です。
(2) \( f(n) \) は、\( m= \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{3^i} \right] \) とすると、\( m \) を \( 2 \) で割った整数部分となります。\( \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \left[ \frac{n}{3^i} \right] \lt \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \frac{n}{3^i} \) であることを利用すれば証明できるでしょう。
(3) (2)から \( n \gt 4000 \) であることが分かります。試しに \( n=4001 \) のときを計算すると、末尾に \( 998 \) 個 \( 0 \) が並ぶことが分かります。そこから素因数 \( 3 \) の個数を何個増やせば良いかを考えましょう。

問題自体はシンプルで典型問題の類題です。しかし、「\( 9 \) 進法で表す」となった瞬間に何をして良いのか分からなくなった受験生も多いと想像できます。その解法がなぜ成り立っているのか(なぜその問題に有効なのか)を常に意識するようにしましょう。

≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)まで。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)の \( f(8) \) は計算して解きたい。

【総評】

例年に比べると証明問題の割合は減り、「微分法・積分法」は割とオーソドックスな出題でした。とはいえ、「確率」の問題もやや難しく、その他の問題も難度が高い問題が並んでいます。解くべき問題を解ききり、それ以外の問題に対してどれだけ粘り強く立ち向かえたかが、差を分けたでしょう。

まとめ

まずは、解くべき問題を確実に解くことが重要です。その上で、計算を焦らずに素早く処理し、的確な記述・証明をできるようになりましょう。証明問題では高い論証能力が必要となりますので、普段の学習から正確な考察ができるように心がけましょう。

投稿者:杉多 孝文

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    5年
  • 出身大学
    京都大学医学部
  • 特技・資格
    柔道初段
  • 趣味
    スポーツ観戦、読書
  • 出身地
    兵庫県
  • お勧めの本
    神様のカルテ

受験生への一言
「分かるとできるは全然違う。できるようになるまでやる。」それが大事です。