ホーム » 京都医塾公式ブログ » 医学部入試問題分析 » 2022年度自治医科大学医学部数学の過去問対策・分析

京都医塾公式ブログ

2022年度自治医科大学医学部数学の過去問対策・分析

2022年度自治医科大学医学部数学の過去問対策・分析

京都医塾数学科です。このページでは「自治医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“自治医科大学”の受験を考えている方
・“自治医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度 
形式:1次試験はマークシート形式、2次試験は記述式です。
制限時間:1次試験は80分、2次試験は30分です。
配点:1次試験は25点(筆記試験全体の配点は100点)、2次試験は12.5点(筆記試験全体の配点は25点)です。
自治医科大学の1次試験の数学は「80分・マークシート形式」というスタイルが続いています。
また、2021年度より、2次試験で記述式の学力試験(数学・英語)が課されるようになりました。

出題の傾向と特徴(5年分)

直近5年分の出題の傾向と特徴をまとめます。

【1次試験に関して】

1次試験は、マークシート形式で25問が出題されています。前半は一問一答形式で、10個の選択肢のうち1つを答えるようになっています。後半は、小問が3つ~5つある大問が、1問~3問並んでいます。高校数学の様々な分野から広範囲に渡って出題されており、苦手分野を作らないことが重要になります。多くの問題が、教科書の章末レベル~入試の基本レベルの難易度ですので、入試数学のある程度パターン化された解法は、使いこなせるようになっておきましょう。

【2次試験に関して】

2021,2022年度ともに、証明問題を含む4つ~6つの小問が出題されました。どちらの年度も誘導に従えば、最後まで完答できるようになっています。とはいえ、制限時間が30分しかないので、急いで解答する必要があります。

【制限時間に対する問題量】

1次試験は、25問に対して80分と、1問当たり3分強の時間しかありません。出題される問題の難易度はそう高くはありませんので、教科書の章末レベルの問題を素早く解ききる力が要求されます。中には、計算が煩雑であったり、答えを出すのに時間がかかったりする問題もあるので、解くのに時間がかかる問題を見極める力も必要です。

2022年度の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、2022年度の入試問題(1次試験)を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【一問一答形式(1~17)】(易~標準)

1 \(2x^3+7x^2+9x+1\) を \(2x-3\) で割ったときの商と余りを考える問題です。
 素直に割り算しましょう。恒等式の問題として考えることもできます。

2 \(x=\sqrt{2}+\sqrt{6},\; y=\sqrt{2}-\sqrt{6}\) であるとき、\(\displaystyle \frac{x^9-y^9}{x^6-y^6}\) の値を考える問題です。
 \(x^9-y^9=(x^3-y^3)(x^6+x^3 y^3+y^6),\; x^6-y^6=(x^3-y^3)(x^3+y^3)\) なので、\(x+y,\;xy\) の値を利用して、\(x^3+y^3,\;x^6+y^6\) の値を求めていけば良いでしょう。

3 \(x(x+1)+(x+1)(x+2)+(x+2)(x+3)+(x+3)(x+1)=0\) の解 \(\alpha,\;\beta\) について、\((\alpha +2)(\beta +2)\) の値を考える問題です。
 与えられた方程式を展開して、\(2\) 次方程式の解と係数の関係を用いましょう。

4 不等式 \(\sqrt{3} \cos x ≧ |2\cos x- \sin x|\) \((0≦x≦2\pi)\) を考える問題です。
 左辺が正である条件を調べ、両辺を二乗して考えましょう。

5 \(\displaystyle \omega = \frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\) のとき、\(|\omega^{100}+\omega^{50}|\) の値を求める問題です。
 \(1\) の\(3\) 乗根のうち虚数であるもの \(\omega\) の問題です。\(\omega^3=1,\; \omega^2+\omega +1=0\) を用いて計算しましょう。

6 \(1\) 辺の長さが \(1\) の正五角形とその外接円の面積を考える問題です。\(\sin 72^{\circ}\) の値が与えられています。
 正 \(n\) 角形の面積は、中心と各頂点を結ぶ線分を引き、\(n\) 等分して考えます。外接円の半径を \(R\) とすると、正五角形の面積は \(\displaystyle \frac{1}{2} R^2 \sin 72^{\circ} ×5\)、外接円の面積は、\(\pi R^2 \) となります。

7 放物線 \(y=x^2\) 上に点 \(\textrm{P}\) (ただし、\(x\) 座標は正)を、放物線 \(y=\displaystyle \frac{1}{2} x^2\) 上に点 \(\textrm{Q}\) をとります。\(\overrightarrow{\textrm{OP}} \cdot \overrightarrow{\textrm{OQ}}=\displaystyle -\frac{1}{2}\) が成り立つとき、\(\triangle \textrm{OPQ}\) の面積 \(S\) の最小値を考える問題です。
 まずは、点 \(\textrm{P},\;\textrm{Q}\) の座標をそれぞれ、\((p,\; p^2),\;(q,\; \displaystyle \frac{1}{2} q^2)\) とおき、\(\overrightarrow{\textrm{OP}} \cdot \overrightarrow{\textrm{OQ}}=\displaystyle -\frac{1}{2}\) から \(p\) と \(q\) の関係式を求めましょう。そのうえで、\(S\) を座標平面上の三角形の面積公式である \(\displaystyle \frac{1}{2} |x_1y_2-x_2y_1|\) を用いて計算しましょう。そうすると、絶対値の中は相加平均・相乗平均の関係式が使える形になっていることが分かります。\(S\) は、ベクトルを利用した三角形の面積公式である \(\displaystyle \frac{1}{2} \sqrt{|\overrightarrow{\textrm{OA}}|^2 \cdot |\overrightarrow{\textrm{OB}}|^2-(\overrightarrow{\textrm{OA}} \cdot \overrightarrow{\textrm{OB}}})^2\) を利用することもできます。

8 円 \((x-2)^2+y^2=1\) 上に点 \(\textrm{P}\) (ただし、\(y\) 座標は正) を直線 \(x=0\) 上に点 \(\textrm{Q}(0,\; t)\) をとります。\(\overrightarrow{\textrm{OP}} \cdot \overrightarrow{\textrm{QP}}=0\) を満たしながら点 \(\textrm{P}\) , \(\textrm{Q}\) が動くとき、\(|\overrightarrow{\textrm{OQ}}|\) の最小値を考える問題です。
 点 \(\textrm{P}\) の座標は、\((2+\cos \theta, \; \sin \theta )\) と表せます。よって、\(\overrightarrow{\textrm{OP}}\) と \(\overrightarrow{\textrm{QP}}\) を成分表示できます。\(\overrightarrow{\textrm{OP}} \cdot \overrightarrow{\textrm{QP}}=0\) なので、\(t\) を \(\theta\) を用いて表せます。よって、\(|\overrightarrow{\textrm{OQ}}|\) つまり \(t\) の最小値を考えられます。

9 \(3\) つの点 \(\textrm{A}\; (1,\;2,\;-2)\), \(\textrm{B}\; (2,\;1,\;3)\), \(\textrm{C}\; (3,\;4,\;2)\) が定める平面 \(\textrm{ABC}\) 上に点 \(\textrm{P}\; (0,\;4,\;k)\) が存在する条件を考える問題です。
 \(\overrightarrow{\textrm{AP}}=s\overrightarrow{\textrm{AB}}+t\overrightarrow{\textrm{AC}}\) と表せるはずなので、\(x,\;y,\;z\) 成分をそれぞれ比較しましょう。または、\(\overrightarrow{\textrm{OP}}=s\overrightarrow{\textrm{OA}}+t\overrightarrow{\textrm{OB}}+(1-s-t)\overrightarrow{\textrm{OC}}\) を利用することもできます。

10  実数 \(x,\;y\) (ただし、\(y≧0\)) が \(\displaystyle \frac{x^2}{4}+\frac{y^2}{9}=1\) を満たすとき、\(5x+2y\) のとり得る値の範囲を考える問題です。
 \(5x+2y=k\) とおいて、この直線が楕円の一部である \(\displaystyle \frac{x^2}{4}+\frac{y^2}{9}=1\) (\(y≧0\)) と共有点を持つときの \(k\) の最大値と最小値を考えましょう。または、\((x,\;y)=(2\cos\theta,\;3\sin\theta)\) (\(0≦\theta≦\pi\)) とおいて考えることもできます。

11 実数 \(x,\;y\) が、\(2x^2-8x+2y^2-1<0,\; x^2-5x-y^2+y+6<0\) を満たすとき、\(x+y,\;x-y\) がともに整数となる \((x+y,\; x-y)\) の組の個数を考える問題です。
 \(a=x+y,\;b=x-y\) とすると、与えられた不等式は \((a-2)^2+(b-2)^2<5,\; (a-3)(b-2)<0\) と表せます。あとは、\(2\) つの不等式が満たす領域内に存在する格子点の個数を数えましょう。

12 点 \(\textrm{P}\) は原点 \(\textrm{O}\) から出発して、\(1\) 枚の硬貨を投げて表が出れば、\(x\) 軸正の方向へ \(1\) 動き、裏が出れば、\(y\) 軸正の方向へ \(1\) 動きます。硬貨を \(7\) 回投げたとき、線分 \(\textrm{OP}\) の長さが整数となる確率を求める問題です。
  線分 \(\textrm{OP}\) の長さが整数となるのは、\((表,\;裏)\) の出る回数が \((0,\;7),\;(3,\;4),\;(4,\;3),\;(7,\;0)\) のときなので、それぞれ反復試行の確率を求めましょう。

13 曲線 \(y=x^3-27x^2+231x+10\) と直線 \(y=mx+m-249\) は、点 \(\textrm{A}\) で接し、点 \(\textrm{B}\) で交わります。このときの点 \(\textrm{A},\;\textrm{B}\) の \(x\) 座標 \(\alpha,\;\beta\) と \(m\) の値を考える問題です。
 条件より、 \(x^3-27x^2+231x+10-(mx+m-249)=0\) の解が \(\alpha,\;\alpha,\;\beta\) なので、3次方程式の解と係数の関係を利用しましょう。

14 関数 \(y=8^x+8^{-x}-5(4^x+4^{-x})+6(2^x+2^{-x})+5\) \((x≧1)\) の最小値を考える問題です。
 \(t=2^x+2^{-x}\) とおきましょう。そうすれば、\(t\) についての3次関数の最小値を考える問題になります。ただし、\(x≧1\) より \(t≧\displaystyle \frac{5}{2}\) に注意しましょう。

15 \(2\) つの曲線 \(y=\sin x\) と \(\displaystyle y=- \frac{4}{3\pi^2}x^2+\frac{4}{3}\) \((-\pi≦x≦ \displaystyle \frac{\pi}{2})\) で囲まれた図形の面積を考える問題です。
 \(2\) つの曲線の共有点の \(x\) 座標は \(-\pi,\;\displaystyle \frac{\pi}{2}\) のみであり、\(-\pi≦x≦ \displaystyle \frac{\pi}{2}\) において、グラフの上下関係は、\(\displaystyle y=- \frac{4}{3\pi^2}x^2+\frac{4}{3}\) が上、\(y=\sin x\) が下です。

16 曲線 \(C_1:y=e^x-1\)、\(C_2:y=\displaystyle \frac{1}{e^x-1}\) (\(x>0\)) および直線 \(L_1:x=\displaystyle \frac{1}{2}\)、\(L_2:x=k\) (\(k>\log 2\)) について考えます。直線 \(L_1\) と \(x\) 軸の交点を \(\textrm{E}\)、直線 \(L_1\) と曲線 \(C_1\) の交点を \(\textrm{F}\)、直線 \(L_2\) と \(x\) 軸の交点を \(\textrm{G}\)、直線 \(L_2\) と曲線 \(C_2\) の交点を \(\textrm{H}\) とします。\(x\) 軸、線分 \(\textrm{EF}\)、曲線 \(C_1\)、曲線 \(C_2\)、線分 \(\textrm{GH}\) で囲まれた図形の面積 \(S_k\) について、\(\displaystyle \lim_{ k \to \infty } S_k\) を考える問題です。
 曲線 \(C_1\) と曲線 \(C_2\) の交点の \(x\) 座標が \(\log 2\) なので、
 \(\displaystyle S_k=\int_{\frac{1}{2}}^{\log2} (e^x-1) dx +\int_{\log 2}^{k} \frac{1}{e^x-1} dx\) と表せます。 \(\displaystyle \frac{1}{e^x-1}\) の積分は、\(t=e^x\) として置換積分を行いましょう。

17 \(\displaystyle \int_{1}^{e^3} x^2 (\log x)^2 dx \) の値を考える問題です。
 部分積分を \(2\) 回行いましょう。定積分を部分積分を利用して計算するときは、まず不定積分を計算し、微分をして検算しましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…17問中13問。
他教科を得点源にしたい受験生…17問中10問。

【大問形式(18~21)】(易)

関数 \(y=\sin x+\sqrt{3} \cos x+\sin x \cos x+\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{3} \cos^2 x \; (0≦x<2\pi)\) の最大値・最小値に関する問題です。
 \(t=\sin x + \sqrt{3} \cos x\) とおくことにより、与えられた関数は、\(t\) についての \(2\) 次関数に置き換えられます。\(t\) の範囲に注意して、\(2\) 次関数の最大値・最小値を考えましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【大問形式(22~25)】(標準)

初項 \(a\) (ただし、\(a\)は正の整数)、公差が \(3\) の等差数列 \({a_n}\) について考えます。この等差数列の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると、\(S_n=4095\) と与えられています。このとき、\(a\) の最小値を考える問題です。
 \(S_n=4095\) を利用して、\(a\) を \(n\) で表すと、\(a=\displaystyle \frac{4095}{n}-\frac{3(n-1)}{2}\) となります。あとは、\(a\) が正の整数であることを利用して \(a\) の最小値を考えましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…25以外。
他教科を得点源にしたい受験生…25以外。

【総評】

例年通り、教科書章末レベル~入試基本レベルの問題が25問出題されました。時間があれば、多くの受験生が満点に近い点数を取れるでしょう。しかし、実際の試験時間内に、すべての問題を解ききるのは困難なので、解くべき問題を見極め、それらの問題を“素早く正確に”解くことが大事になります。

まとめ

学生募集要項には、入学までに身につけることを望むこととして、「数学の基礎的な知識・思考法を用いて問題解決する能力と技能」とあります。まずは、数学の基本的な解法を使いこなせるようになりましょう。そのうえで、それらの解法を用いたうえで、素早く解けるように、問題演習を繰り返して練習しておきましょう。

 京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:杉多 孝文

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    5年
  • 出身大学
    京都大学医学部
  • 特技・資格
    柔道初段
  • 趣味
    スポーツ観戦、読書
  • 出身地
    兵庫県
  • お勧めの本
    神様のカルテ

受験生への一言
「分かるとできるは全然違う。できるようになるまでやる。」それが大事です。