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2022年度福岡大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度福岡大学医学部の数学過去問対策・分析

 

京都医塾数学科です。

このページでは「福岡大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“福岡大学医学部”の受験を考えている方
・“福岡大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
形式: 第1問、第2問空所補充、第3問記述式
制限時間:90分
配点:100点(筆記試験の総得点は400点)

出題の傾向と特徴

 例年、制限時間90分で、第1問が6個の空所補充、第2問が4個の空所補充、第3問が数学Ⅲ微分法・積分法の記述式になっています。難易度にも大きな変化がないため、2015年度以降の8年分についての傾向をまとめます。

【頻出の出題単元】

 第3問が数学Ⅲ微分法・積分法からの出題になっています。極値や最大・最小、求積問題がほとんどですが、2021年度、2017年度には極限値の問題も出題されています。
 第1問、第2問の小問集合は幅広い範囲から出題されています。その中でも、三角関数、指数関数、対数関数、図形と方程式、ベクトル、整数、データの分析、2次曲線の出題が目立ちます。

【制限時間に対する問題量】

 制限時間に対する問題量は適切な量です。しかし、複雑な計算を要求される問題も出題されるため、時間配分が非常に重要になります。そのため、過去問による練習は必ず行っておきましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

 ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 小問集合】(難易度:易)

(i) \( \alpha , \displaystyle \frac{1}{\alpha} \) の対称式
 2次方程式 \( \alpha^2 -3\alpha +1=0\) の解 \( \alpha \)を解の公式で求めた上で、\( \alpha +\displaystyle \frac{1}{\alpha} \) の値を求めることもできますが、2次方程式 \( \alpha^2 -3\alpha +1=0\) の両辺を解 \( \alpha \) で割ることで簡単に求めることができます。

(ii) 原点から直線や平面に下した垂線の足(共線条件・共面条件)
 ベクトルでは位置ベクトルを求めたい点がどのような点かを必ず考えた上で、立式しましょう。
 点P は「直線AB上」かつ「OP⊥AB」であるため、
   「直線AB上」→ \(\overrightarrow{\textrm{OP}} =(1-s)\overrightarrow{\textrm{OA}} +s\overrightarrow{\textrm{OB}} \)
   「OP⊥AB」→ \(\overrightarrow{\textrm{OP}} \cdot \overrightarrow{\textrm{AB}} =0\)
として、\(s\) を求めます。
 点Q は「平面ABC上」かつ「OQ⊥平面ABC」であるため、
   「平面ABC上」→ \(\overrightarrow{\textrm{OQ}} =s\overrightarrow{\textrm{OA}} +t\overrightarrow{\textrm{OB}}+u\overrightarrow{\textrm{OC}} \) (ただし、\(s+t+u=1\))
   「OQ⊥平面ABC」→ \(\overrightarrow{\textrm{OQ}} \cdot \overrightarrow{\textrm{AB}} =0\) かつ \(\overrightarrow{\textrm{OQ}} \cdot \overrightarrow{\textrm{AC}} =0\)
として、\(s, t, u\) を求めます。

(iii) じゃんけんをしたときの確率・条件付き確率
 3人でじゃんけんをし、3回目で1人だけ勝ち残るためには、
  [ア] 3人→3人→3人→1人
  [イ] 3人→3人→2人→1人
  [ウ] 3人→2人→2人→1人
の場合があるため、3人でじゃんけんを1回し、1人勝つ、あいこになる確率、2人でじゃんけんを1回し、1人勝つ、あいこになる確率をまず求めます。今回は人数が少ないため、「誰が勝つ?」「どの手で勝つ?」を考えれば、以下のようになります。
 3人でじゃんけんをする場合
  全事象… \(3^3=27\) 通り
  1人勝つ… \({}_3 \textrm{C} _1 \cdot 3=9\) 通り つまり 確率は \( \displaystyle \frac{1}{3}\)
  2人勝つ… \({}_3 \textrm{C} _2 \cdot 3=9\) 通り つまり 確率は \( \displaystyle \frac{1}{3}\)
  あいこ(余事象)… \(1- \Big( \displaystyle \frac{1}{3}+ \frac{1}{3} \Big)= \frac{1}{3} \)
 2人でじゃんけんをする場合も同様に求め、[ア]~[ウ]の確率を求めます。
 ここまでできれば、後半の条件付き確率はもう求まったようなものです(条件付き確率の問題あるあるですね)。念の為、条件付き確率の定義式を確認しておきましょう。

 事象 \(A\) が起こったときの事象 \(B\) が起こる条件付き確率 \(P_A(B)\) は
     \( \displaystyle P_A(B)= \frac{P(A \cap B)}{P(A)} \)

 この問題では事象 \(A\) を「3回目のじゃんけんで1人だけ勝ち残る」、事象 \(B\) を「1回目のじゃんけんで3人が勝ち残る」と考えると、確率 \( P(A \cap B) \) は[ア][イ]が起こる確率、確率 \( P(A) \) は(5)で求めています。このように条件付き確率の問題は、そこまでの問題で求めた確率を利用することが非常に多いです。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…完答

【第2問 小問集合】(難易度:標準~やや難)

(i) 楕円と直線
(1) 楕円 \(C:4x^2+y^2=4 \) と直線 \(l:2x+ \sqrt{3} y+2 \sqrt{3} =0 \) の共有点の座標は、2式を連立することで求まります。このとき、直線 \(l\) の式を \( \displaystyle y=- \frac{2}{ \sqrt{3}} (x+ \sqrt{3} ) \) として \(y\) を消去すると、両辺が4で割れて計算が少し楽になります。
 また、点Aの \(x\) 座標が \(0\) であることも分かっているため、\(x=0\) が出てこなければ途中どこかで計算ミスをしていることになります。
(2) 点 P と直線 \(l\) の距離が最大となるのは、直線 \(l\) と平行な直線が点 P で接する場合です。この問題では楕円の中心が原点であるため、接点 P の座標を \((s,t) \) (ただし、\(4s^2+t^2=4 \) )とおき、楕円の接線公式を利用すれば、接線の式が \(4sx+ty=4 \) と表せ、その傾きが \( \displaystyle – \frac{2}{ \sqrt{3}} \) であることから \( \displaystyle – \frac{4s}{t} =- \frac{2}{ \sqrt{3}} \) が得られます。あとは \(s,t \) の連立方程式を解くことで点 P の座標が求まります。

(ii) 対数不等式をみたす \( (x, y) \) の領域
 真数条件より、\( 1-x^2+y>0 \) つまり \(y>x^2-1 \) が得られます。
 また、対数の底が \(y\) であることから、
  [1] \(1<y \)  [2] \(0<y<1 \)
の場合分けをして、不等式を解く必要があります。
[1] \(1<y \) のとき \( 1-x^2+y ≧ y^2 \) つまり \( \displaystyle x^2+\Big(y- \frac{1}{2} \Big)^2 ≦ \frac{5}{4} \)
[2] \(0<y<1 \) のとき \( 1-x^2+y ≦ y^2 \) つまり \( \displaystyle x^2+\Big(y- \frac{1}{2} \Big)^2 ≧ \frac{5}{4} \)
 ※底 \(y\)が \(0<y<1 \) のときは単調減少関数であるため、不等号の向きが逆になることに注意しましょう。
 これらを \(xy \) 平面上に図示することで、\( x,y \) の取り得る値の範囲を求めることができます。ただし、境界線上の点を含むかどうかには、少し注意が必要です。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(3)まで

【第3問 媒介変数で表された曲線で囲まれた図形の面積】(難易度:標準~やや難)

(i) \(x=e^{-2} – e^{at} ,y=-2t+ e^{2at} \) をそれぞれ \(t\) で微分すると、\( \displaystyle \frac{dx}{dt} = -ae^{at}, \frac{dy}{dt} = -2+2ae^{at} \) が得られます。
 曲線が \(x \) 軸と接するのは、\( \displaystyle \frac{dy}{dt} =0 \) つまり \( \displaystyle t= \frac{ \log{a}}{2a} \)のときに \( y=0 \)であることから \(a \) の値を求めることができます。

(ii) (i)の結果から、増減表をかき、グラフの概形を図示することができます。
 グラフから求める面積 \(S \) が \( \displaystyle S= \int_{e^{-2}-\sqrt{e}}^{0} y dx = \int_{\frac{e}{2}}^{-2e} y \frac{dx}{dt} dt \) と立式できるため、あとは積分計算を丁寧に行えば面積が求まります。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答
他教科を得点源にしたい受験生…(i)まで

【総評】

 例年通り標準的な問題からの出題であったものの、計算量が多いため、制限時間が90分とはいえ、時間配分には十分注意を払う必要があります。数学を得点源にしたい受験生は第2問、第3問の後半を少しでも得点できれば、他の受験生との差をつけることが可能です。

まとめ

 第1問の小問集合は完答、第2問の小問集合は半分以上をまずは目指しましょう。また、第3問は例年、数学Ⅲ微分法・積分法からの出題ですので、特に求積問題は数多く練習しておきましょう。

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:西浦 洋介

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    22年
  • 出身大学
    同志社大学工学部
  • 特技・資格
    ガンプラ
  • 趣味
    ガンプラ、漫画、テレビ
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    NARUTO、アオアシ、怪獣8号などなどいっぱい

受験生への一言
基礎を疎かにせず