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2022年度愛知医科大学医学部数学の過去問対策・分析

2022年度愛知医科大学医学部数学の過去問対策・分析

京都医塾数学科です。このページでは「愛知医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“愛知医科大学”の受験を考えている方
・“愛知医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式:小問集合(答えのみ)&記述式の大問
制限時間:80分
配点:150点(筆記試験全体の配点は500点)
愛知医科大学の数学は「80分・小問集合(答えのみ)&記述式の大問」という形式が続いています。
ただし、小問集合の問題数や全体の問題数は年度によって異なります。
2022年度:小問4問&記述式の大問2問
2021年度:小問4問&記述式の大問2問
2020年度:小問8問&記述式の大問3問

出題の傾向と特徴(3年分)

直近3年分の出題の傾向と特徴をまとめます。

【小問集合に関して】

大問Ⅰは小問集合の形で出題されることが定番になっています。分野に偏りはなく、様々な分野から満遍なく出題されています。難易度はそれほど高くなく、小問集合でどれだけ点を落とさないかが大事になります。各分野の基礎事項を知識の穴を作ることなく理解し、基本的な解法を使いこなせるようにしておきましょう。

【記述式の大問について】

ここ3年の記述式の大問では、「数列」「微積分(数学Ⅲ)」「確率」「整数」「空間ベクトル」「図形と方程式」から幅広く出題されています。小問集合に比べると、難易度が高い問題が出題され、計算の量も質も問われる形になっていることが多いです。正確に答えを出すためにも、計算工夫などを積極的に行うようにしましょう。また、大問の後半部には、難易度が高く、最後まで解き切ることが難しい問題も出題されますので、過去問演習などで、その問題を見極める力も養ってください。

【制限時間に対する問題量】

試験時間80分に対して大問3つか4つであり、時間的にやや厳しいかもしれません。小問集合では、難しい問題が出題されることもありますが、粘り強く取り組み、取るべき問題を取りきることを目標にしましょう。残りの各大問の後半部では、難易度の高い問題が出題される傾向にあるので、解くべき問題と捨てるべき問題を取捨選択することを心掛けましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問 小問集合】(易~標準)

1) 実数 \(x\) が \(\displaystyle x^3+\frac{1}{x^3}=488\) を満たすとき
(a) \(\displaystyle x+\frac{1}{x}\)、(b) \(\displaystyle x^4+\frac{1}{x^4}\) を求める問題です。

非常に典型的な問題です。\(\displaystyle x^3+\frac{1}{x^3}=\left(x+\frac{1}{x}\right)^3-3\left(x+\frac{1}{x}\right)\) を利用して、まずは \(\displaystyle x+\frac{1}{x}\) の値を求めましょう。そのあとは、\(\displaystyle x^2+\frac{1}{x^2}\), \(\displaystyle x^4+\frac{1}{x^4}\) と順番に求めていきましょう。

2) \(n\) が \(3\) 以上の整数のとき、\((1+x)+(1+x)^2+(1+x)^3+\cdots+(1+x)^n\) の展開式において、
(a) \(x\) の係数、(b) \(x^2\) の係数、(c) \(x^3\) の係数をそれぞれ求める問題です。

\((1+x)^k\) の展開式の \(x\) の係数、\(x^2\) の係数、\(x^3\) の係数はそれぞれ、
\({}_k \mathrm{C}_1=k\)、\({}_k \mathrm{C}_2=\displaystyle \frac{k(k-1)}{2}\)、\({}_k \mathrm{C}_3=\displaystyle \frac{k(k-1)(k-2)}{6}\) と表せるので、それらの \(k=1\) から \(k=n\) までの和を計算すれば求められます。
または、等比数列の和を利用して
\(\begin{align}(1+x)+(1+x)^2+(1+x)^3+\cdots+(1+x)^n &= \displaystyle \frac{(1+x)\lbrace (1+x)^n-1\rbrace}{(1+x)-1} \\ &= \frac{(1+x)^{n+1}-(1+x)}{x} \end{align}\)
を利用することでも求められます。

3) (ⅰ) \(\vec{a}+2\vec{b}+3\vec{c}=\vec{0}\), (ⅱ) \(\vec{a}\cdot \vec{b}=\vec{b}\cdot \vec{c}=\vec{c}\cdot \vec{a}\neq 0\) を満たす平面上のベクトル \(\vec{a}\), \(\vec{b}\), \(\vec{c}\) を考えます。
(a) \(\vec{a}\cdot \vec{b}=k\) とするとき、\(|\vec{a}|^2\) を \(k\) の式で表す問題です。
(b) \(\vec{b}\), \(\vec{c}\) のなす角 \(\theta\) を求める問題です。

(a) (ⅰ) の式からいずれかのベクトルを移項して、絶対値の二乗を考えることにより、\(|\vec{a}|^2\), \(|\vec{b}|^2\), \(|\vec{c}|^2\) についての連立方程式を解けば求められます。
(b) (a) から \(|\vec{b}|^2\), \(|\vec{c}|^2\) も \(k\) の式で表せるので、内積を利用して \(\cos\theta\) を考えましょう。その際に、\(k<0\) であることから、\(|\vec{b}|=\sqrt{-2k}\), \(|\vec{c}|=\sqrt{-k}\), \(|\vec{b}| \cdot |\vec{c}|=-\sqrt{2} k\) であることに注意してください。

4) \(n\) 人がくじを引いて、プレゼント交換を行う際に、自分が持ってきたプレゼントと異なるプレゼントが当たる場合の数を考えます。
(a) \(n=3\)、(b) \(n=4\)、(c) \(n=5\) のときの場合の数を求める問題です。

完全順列(攪乱順列)の問題です(2022年度共通テストⅠAでも同じテーマが出題されました)。シンプルに、数え上げていくのが良いでしょう。ちなみに、求める場合の数を \(a_n\) とすると、\(a_{n+2}=(n+1)( a_{n+1}+a_n) \) が成り立ちます。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…1), 4), 3) は完答。2) は (a) までは。
他教科を得点源にしたい受験生…1), 4) は完答。3) (a) は解きたい。2), 3)(b) はできなくても良い。

【第2問 図形と方程式】(標準)

\(a\), \(b\) を定数とし、円 \(C\) : \(x^2+y^2-2ax-2by=0\) と \(2\) 点 \(\textrm{A} (0, 2)\), \(\textrm{B} (2, 2)\) を考えます。
1) 点 \(\textrm{A}\), \(\textrm{B}\) が円 \(C\) の内部と外部に分かれるような点 \((a, b)\) の存在範囲を求め、図示する問題です。
2) 線分 \(\textrm{AB}\) の両端が円 \(C\) の外部にあり、線分 \(\textrm{AB}\) の両端以外は少なくとも \(1\) 点が円と共有点をもつような点 \((a, b)\) の存在範囲を求め、図示する問題です。

1) 円 \(C\) の式を \(f(x,y)=0\) とすると、求める条件は \(f(0,2) \cdot f(2,2)<0\) であることを用いれば良いでしょう。丁寧に、点 \(\textrm{A}\) が円の内部にあり、点 \(\textrm{B}\) が円の外部にある条件、および点 \(\textrm{A}\) が円の外部にあり、点 \(\textrm{B}\) が円の内部にある条件を求めても良いでしょう。
2) まず、点 \(\textrm{A}\), \(\textrm{B}\) が円の外部にある条件は、\(f(0,2)>0\) かつ \(f(2,2)>0\) です。そして、「線分 \(\textrm{AB}\) の両端以外は少なくとも \(1\) 点が円と共有点をもつ」を言い換えると、「\(f(x,2)=0\) が \(0<x<2\) の範囲に少なくとも \(1\) つ解をもつ」になります。つまり、\(2\) 次方程式の解の配置問題ですので、「判・軸・端」を考えましょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…1) まで。
他教科を得点源にしたい受験生…1) まで。

【第3問 積分法・数列の極限】(標準)

1) 不定積分 \(\displaystyle \int e^{-x} \cos x dx\) を求める問題です。
2) 曲線 \(y=e^{-x} \cos x\) と \(x\) 軸との交点の \(x\) 座標を原点に近い方から \(x_1,x_2, \cdots \) とします。\(x_0=0\) として、\(\displaystyle I_k=\int_{x_{k-1}}^{x_k} e^{-x} \cos xdx \) \((k=1,2,\cdots)\) を考えます。\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n} I_k\) を求める問題です。

1) 単純な不定積分の計算問題です。\(e^{-x} \sin x\)と \(e^{-x} \cos x\) の微分を考える解法もありますし、部分積分を \(2\) 回行っても良いでしょう。
2) よくある典型問題は、曲線と \(x\) 軸で囲まれた部分の面積を考えたり、\(\displaystyle \int_{x_{k-1}}^{x_k} |e^{-x} \cos x|dx \) を考えますが、この問題はよりシンプルです。無限級数の問題なので、部分和を考えます。\(\begin{align}\displaystyle \sum_{k=1}^{n} I_k &=\int_{x_0}^{x_1} e^{-x} \cos xdx+\int_{x_1}^{x_2} e^{-x} \cos xdx+\cdots +\int_{x_{n-1}}^{x_n} e^{-x} \cos xdx\\&=\int_{0}^{x_n}e^{-x}\cos xdx \end{align}\)
となるので、部分和は簡単に計算できることが分かります。あとは、極限計算をするだけです。その際に、\(\displaystyle e^{- \left(n- \frac{1}{2} \right) \pi} \sin \left(n- \frac{1}{2} \right)\pi \) の極限を考える必要がありますが、\(-1 \text{≦} \sin \left(n- \frac{1}{2} \right)\pi \text{≦}1 \) を利用して、はさみうちの原理を用いれば良いでしょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…1) まで。2) 部分和ぐらいまでは解きたい。

【総評】

第1問、第3問で、解くべき問題を見極め、どれだけ取りこぼさずに解ききれたかが、勝負の分かれ目だったでしょう。とくに、第3問は、受験生なら一度は経験したことのあるテーマの問題でしたので、計算ミスに気をつけて完答したい問題でした。

まとめ

小問集合においては、分野の偏りなく正確に答えを導く力、各大問においては、解くべき問題を見抜いて解ききる力が必要になります。小問集合では各分野の基本的な解法が問われますので、まずは、苦手だと感じている分野を基礎事項から復習しておきましょう。そのうえで、問題演習などを通じて、標準レベル以上の問題にも対応できる力を養ってください。

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投稿者:杉多 孝文

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    5年
  • 出身大学
    京都大学医学部
  • 特技・資格
    柔道初段
  • 趣味
    スポーツ観戦、読書
  • 出身地
    兵庫県
  • お勧めの本
    神様のカルテ

受験生への一言
「分かるとできるは全然違う。できるようになるまでやる。」それが大事です。