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2022年度国際医療福祉大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度国際医療福祉大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「国際医療福祉大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“国際医療福祉大学医学部”の受験を考えている方
・“国際医療福祉大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度 
形式: 全問マーク式
制限時間: 80分
配点: 150点 / 550点

国際医療福祉大学医学部の数学は、医学部開設の2017年度以降「80分・全4問:全問マーク式」という形式が続いています。

出題の傾向と特徴(過去6年分)

【毎年恒例の出題単元】

 第4問は毎年「微分法・積分法」からの出題となっています。2017年度から2021年度は、接線の方程式、極値、不定積分などを小問で求めた後、面積・体積を求める、という流れの出題となっています。さらに、面積・体積の最大値を求める、極限値を求めるという出題も見られます。いずれもそこまで難易度は高くなく、完答しやすい問題です。そのほか、2022年度と2020年度は立体の断面積から体積を求めるという出題がされています。

【頻出の出題単元】

 小問集合は数学ⅠAⅡBを中心に幅広い単元が出題されており、一概に「この単元が出やすい」とは言えません。数学Ⅲからは、過去6年間は複素数平面、2次曲線のみの出題となっています。
 大問では、数列と確率がそれぞれ3回、ベクトルが4回と頻出で、現時点ではかなりこの3単元に偏った出題であると言えます。これ以外では、2022年度第2問に整数、2020年度第3問に複素数平面がそれぞれ出題されています。

【制限時間に対する問題量】

 全体的に平易な問題が並び、計算量もそこまで多くないため、余裕をもって解くことができると思います。ただ、2022年度は例年に比べて難易度が高かったため、全問解き切るのは厳しいでしょう。今後もこの傾向が続くかはわかりませんが、問題の難易度を見極めて時間をかけるべき問題にしっかり時間をかけるという方針で取り組む必要があります。

2022年度(最新の過去問)の分析

さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

 

【第1問 小問集合】(難易度:やや易) 

(A) … 図形の計量
 鈍角三角形が成立するためには「最大角が \(90^\circ\)より大きい」という条件を満たす必要があります。今回は辺の長さが \(\mathrm{AB}=x, \mathrm{BC}=x+4, \mathrm{CA}=x+2\) なので、

最も長い辺 \(\mathrm{BC}\) の対角である\(\angle \mathrm{A}\) が最大の角

となります。あとは、

\(\angle \mathrm{A}>90^\circ\, \Rightarrow\, \cos\angle\mathrm{A}<0\)

なので、余弦定理を用いて条件を求めていきましょう。

(B) … 高次方程式、対称式
 3次方程式の解と係数の関係を用いる問題です。3文字の対称式は、

        \(\alpha^2+\beta^2+\gamma^2=\left(\alpha+\beta+\gamma\right)^2-2\left(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha\right)\)
        \(\alpha^3+\beta^3+\gamma^3=\left(\alpha+\beta+\gamma\right)\left(\alpha^2+\beta^2+\gamma^2-\alpha\beta-\beta\gamma-\gamma\alpha\right)+3\alpha\beta\gamma\)

という式を使って変形していくことになります。特に2つ目の式は忘れてしまうと自分で作ることはほぼ不可能なので、気合を入れて覚えましょう。
 また、\(\displaystyle \frac{1}{\alpha^2}+\frac{1}{\beta^2}+\frac{1}{\gamma^2}\)は、そのまま通分して計算してもよいですが、\(\displaystyle \left(\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta}+\frac{1}{\gamma}\right)^2\)を展開したほうが計算量が少なくなります。

(C) … 常用対数
 こちらは教科書レベルの非常に典型的な問題です。解法も決まりきった道筋ですので、問題集等で確認しておきましょう。

(D) … \(2\) 次曲線、図形と方程式
 焦点の座標を求めるときは、「平行移動前の焦点の座標を求め、その座標を平行移動させる」という流れで求めましょう。直線からの距離の最小値は、

           ・\(\displaystyle y=\frac{1}{3}x+5\) に平行な接線を用いる
           ・楕円上の点を媒介変数表示し、点と直線の距離の公式を用いる

という2通りの考え方が利用できます。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【第2問 整数】(難易度:標準)

ア~ケ:アイ及びウエオはごくごく基本的な内容なので割愛します。カキクケも特に難しいわけではありませんが、\(a\) と \(b\) の最大公約数は \(a\) の約数でなければならない、ということを考えるとすぐに埋まります(\(a\) の約数で4桁のものが \(1800\) しかないため)。

コ~ス:\(b=1800\times63\) であることから、

\( N=a+b=1800+1800\times63=1800\times64 \)

が得られます。これがわかれば難なく埋められます。シスは、\(a, b, N\) の最大公約数である \(a\) の正の約数の個数であることに注意しましょう。

セ~チ:\(a=2^3\times3^2\times5^2,\, b=2^3\times3^4\times5^2\times7,\, N=2^9\times3^2\times5^2\) であることから、条件を満たすためには「\(l\) を素因数分解したとき、素因数 \(2\) の個数が \(4\) 以上 \(9\) 以下、\(3\) と \(5\) の個数が \(2\) 以下」である必要があります。つまり、\(l\) は

\(l=2^p\times3^q\times5^r (4≦p≦9,\, 0≦q≦2,\, 0≦r≦2)\)

という形に素因数分解されます。\(p,\, q,\, r\) それぞれの取りうる値は \(6\) 通り、\(3\) 通り、\(3\) 通りであるため、\(6 \times 3 \times 3=54\)個と求まります。\(l\) が最小となるのは \(p,\, q,\, r\) のすべてが最小になるときなので、\(p=4,\, q=r=0\) の時の値を求めればよいことになります。

ツ~ニ:教科書レベルの問題です。「最小公倍数は、\(2\) 数を素因数分解したのち、指数の大きい方を集めてくる」という考え方ができれば難なく解答できるでしょう。

ヌネ:\(b\) と \(N\) の最大公約数が \(a\) であることから、「\(b\) と \(n\) は \(a\) の倍数である」ことがわかります。これより、

\(b=a \times 3^2 \times 7, \, n=a\times p\)

と表せます。ここで \(p\) は「\(3\) と \(7\) を素因数に持たない自然数」であることに注意しましょう(\(3\) と \(7\) を素因数に持ってしまうと、最大公約数が \(a\) ではなくなってしまうため)。
 さらに、\(n≦240000\)という条件より、

\begin{eqnarray} a\times p &≦& 240000 \\ \\ 1800\times p &≦& 240000 \\ \\ p &≦& \frac{400}{3}=133.333 \cdots \end{eqnarray}

となるので、「\(p\) は \(133\) 以下の自然数」であることが分かります。
 以上より、「\(133\) 以下の自然数のうち、\(3\) と \(7\) を素因数に持たないもの」を数えれば、それが条件を満たす \(n\) の個数となります。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…ヌネ以外。

【第3問 数列】(難易度:標準)

 偶奇で一般項がわかれる数列です。頻出の問題ではありますが、何が起こっているのかよくわからないということで苦手としている人も多いのではないでしょうか。今回の出題は誘導が非常に丁寧なので、流れに乗って解答していきましょう。

(1) … 略。

(2) … \(c_n\) は \(a_n\) の項のうち、奇数番目を取ってきた数列です。カ~クは \(c_n\) の漸化式を求めれば埋まるので、以下のように変形をしていきましょう。

 あとはこの漸化式を解くだけですね。両辺を \(9^n\) で割って変形していきましょう。

(3) … (2)と同様に、\(d_n=a_{2n}\) とおくと、

\(d_n=a_{2n}=3a_{2n-1}=3c_n\)

となります。これより、

\begin{eqnarray} S_n &=& \sum_{k=1}^{2n}a_k \\ \\ &=& a_1+a_2+a_3+a_4+ \cdots +a_{2n-1}+a_{2n} \\ \\ &=& \left(a_1+a_3+ \cdots +a_{2n-1} \right) + \left(a_2+a_4+ \cdots a_{2n} \right) \\ \\ &=& \sum_{k=1}^n a_{2k-1} + \sum_{k=1}^n a_{2k} \\ \\ &=& \sum_{k=1}^n c_k+\sum_{k=1}^n 3c_k \\ \\ &=& 4\sum_{k=1}^n c_k\end{eqnarray}

と変形できます。

(4) … まずは素直に変形していきましょう。

\begin{eqnarray} T_k &=& \sum_{k=1}^n \frac{k \cdot a_{2k-1}}{3^k} \\ \\ &=& \sum_{k=1}^n \frac{k \cdot c_k}{3^k} \\ \\ &=& \sum_{k=1}^n \frac{k \cdot \frac{1}{2} \left(9^k-3^k \right)}{3^k} \\ \\ &=& \sum_{k=1}^n\frac{1}{2}k\left(3^k-1\right) \\ \\ &=& \frac{1}{2} \left( \sum_{k=1}^n k \cdot 3^k \, – \sum_{k=1}^n k \right)\end{eqnarray}

きれいな形になりましたね。\(\displaystyle \sum_{k=1}^n k \cdot 3^k\) の部分は \(\left(等差\right) \times \left(等比\right)\) の和として求められます。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…時間が許せば完答。ス~テ、ト~ノのどちらかは落としてもやむなし。

【第4問 空間座標と体積】(難易度:難)

ア~サ:点 \(\mathrm{R}\) は線分 \(\mathrm{PQ}\) 上にあるので、

\(\overrightarrow{\mathrm{OR}}=(1-s)\overrightarrow{\mathrm{OP}}+s\overrightarrow{\mathrm{OQ}}\)

と表せます。これより、点 \(\mathrm{R}\) の座標は \( \left( \left( 1-s \right) \left( 2-p \right)^2,\, sp^2,\, 4s \right)\) となります。平面 \(\alpha\):\(z=t\) との交点を考えるので、点 \(\mathrm{R}\) の \(z\) 座標が \(t\) となるような \(s\) の値を求めればよいことになります。このとき \(\displaystyle s=\frac{t}{4}\) なので、これを点 \(\mathrm{R}\) の座標に代入すればア~カが埋まります。さらに、

\(-2≦p≦2 \Rightarrow 0≦2-p≦4 \Rightarrow 0≦(2-p)^2≦16\)

から \(x_r\) の範囲も求められます。また、先ほど求めた \(x_r,\, y_r\) の式から \(p\) を消去すれば、\(y_r\) を \(x_r,\, t\) で表せます。

シ~タ:普通に積分するだけですが、ルートが含まれるので計算ミスにだけは注意しましょう。

チ~ノ:\(z=t\) のときの曲線 \(y=\displaystyle f(x)=t\left(1-\sqrt{\frac{x}{4-t}} \right)^2\) と平面 \(y=z\) で囲まれた部分の面積を求めることになります。なかなかイメージがわきづらいと思うので、いくつか図を見てみましょう。

\(t=2\) のときの図(青く見えるのが平面 \(y=t\)。ドラッグで角度を変更できます)
\(xy\) 平面に落とし込んだ図(左上のスライダーを動かしてみましょう)

 ①は \(t=2\) のときの状態を \(xyz\) 空間に描画したもので、②は \(t\) の値を変化させたときの曲線 \(y=f(x)\) と平面 \(y=z\) (2次元のグラフに落とし込んでいるので、平面ではなく直線になります)の状態を \(xy\) 平面に描画したものです。なんとなくイメージがつかめたでしょうか?

 断面積 \(S(t)\) は縦の長さ \(t\)、横の長さ \(4(4-t)\) の長方形からシ~タで求めた積分の値を引けば求まります(先ほどの図でイメージができなくても、この式さえ立てられればOKです)。\(K\) の体積 \(V_K\) は

\(\displaystyle V_K=\int_0^4S(t)dt\)

で求めることができます。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…サまで。類題の対策が十分にできるなら完答。
他教科を得点源にしたい受験生…かなり厳しい。カまでできれば十分と言える。

【総評】

 第3問までは標準的な難易度でしたが、第4問は同様の出題に慣れている受験生以外はかなり得点しづらい出題になっています。とにかく第3問までを完璧に解き切り、第4問はわかりそうなところだけ挑戦してみる、といったバランスで取り組むとよいでしょう。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…8割
他教科を得点源にしたい受験生…6割

まとめ

というわけで、今回は国際医療福祉大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

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投稿者:井上 宥二

  • 役職
    数学科主任/数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    京都大学総合人間学部
  • 特技・資格
    独創的な絵(下手とも言う)
  • 趣味
    ゲーム
  • 出身地
    大阪府
  • お勧めの本
    ジョジョの奇妙な冒険

受験生への一言
「数学が苦手だ・嫌いだ」という声をとてもよく聞きます。確かに、身に着けて使いこなすまでに一番時間がかかる教科かもしれません。しかし、知識を身に付け、「何故そのように考えられるのか?」を理解し、単元ごとのつながりが見えてくると、数学の醍醐味が感じられるようになるはずです。私も、「数学が面白い」と思ってもらえる授業をいつも心がけています。