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国際医療福祉大学医学部の過去問対策・出題傾向まとめ【生物編】

国際医療福祉大学医学部の過去問対策・出題傾向まとめ【生物編】

 

京都医塾生物科です。
このページでは「国際医療福祉大学医学部の生物」についての過去問を分析します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“国際医療福祉大学医学部”の受験を考えている方
・“国際医療福祉大学医学部の生物がどのような問題か知りたい”という方

にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2021年度(最新の問題)より

形式:マークシート式
時間:理科2科目120分
大問数:4
配点:理科2科目200点

出題の傾向と特徴(5年分)

2017年度以降の5年分について、分野別の傾向をまとめます。
簡単な知識問題が各大問で出題されていますが、以下の分析では「合否を分けそうな、やや難度の高い問題」に絞って解説します。

【1 細胞と分子】

 頻出分野であり、生物のミクロ分野を理解するために最も基本となる分野です。他の分野の問題の中で小問として扱われることも多いため、他分野と関連付けて理解しておきましょう。
 2019年にはゴルジ体の働きに関する実験考察問題が出題されました。ゴルジ体の働きに関して2種類の対抗仮説が与えられ、「実験結果が支持している対抗仮説」を選ぶ問題でした。生物学などの自然科学が「何らかの現象に関する命題」を主張する前には、「その現象を説明できそうな他の対抗仮説」を実験結果に基づいて却下していることが多いです。このような思考の過程は入試でもよく出題されますので、「複数の対抗仮説ののうち、どの仮説が真なる命題なのか、実験によって決着を付けようとしているのだ」という気持ちで実験考察問題を読解するとよいでしょう。

【2 代謝】

 頻出分野でであり、これも他分野と関連付けて理解しておきましょう。
 2018年には「クエン酸回路の阻害剤」や「電子伝達系の脱共役剤(水素イオンの濃度勾配を解消する薬剤)」を与えて実験し、酸素消費量などの変化を考察する問題が出題されました。このような問題に対して、丸暗記の勉強法では得点できません。代謝経路を構成する各反応が、それぞれどのような意義を持っているのか、という観点から知識を理解するようにしましょう。
 2021年には四量体の酵素が2種類のサブユニットからなる時、「その配置は何通りあるか」を考える問題が出題されました。数学で学ぶ「場合の数」の考え方を使えば簡単な問題ですが、「場合の数」が苦手な人は数学の問題集で勉強しておきましょう。これまた入試生物でよく出てくる「確率」の考え方の基礎には「場合の数」の考え方がありますので、しっかり対策しておきましょう。
 また、同年には酵素反応に関して「VmaxとKmの値の大小」と「酵素の性質」に関する出題がありました。「VmaxとKmの定義」は問題文中で与えられていますが、「それらの値の大小が意味すること」は受験生が考えることになっています。VmaxとKmはやや発展的な内容ですが、医学部を受験するなら背伸びをして理解しておきたい概念です。

【3 遺伝情報の発現】

 頻出かつ難易度の高い分野であり、この分野の得点力によって「合格ラインを越えられるかどうか」が決まるでしょう。バイオテクノロジーに関しては受験生にとって初見の技術が頻繁に登場しますが、問題文を丁寧に読めば遺伝子組換えなどの基礎的・典型的な技術の応用として理解できる問題が多いです。やや難しめの問題集で問題をたくさん解いておくのが一番の対策になるでしょう。
 2017年には細菌の野生株や変異株に「ラクトースオペロンの遺伝子」を導入して「形質の変化」を観察する、という問題が出題されました。観察された「形質の変化」から変異の種類を考察する、というパターンはよく出題されますので、問題集や過去問でこのような問題に出会ったら、「応用範囲の広い考え方を学ぶ機会を得た」と思って頑張って理解して下さい。
 2021年には、DNAの複製様式に関して「半保存的複製」と「保存的複製」とを対抗仮説として設定し、「その対抗仮説が正しければどのような実験結果になるはずか」を考えさせる問題が出題されました。実験結果に基づいて「対抗仮説の勝敗を決める」という作業は自然科学に広く見られる方法ですが、国際医療福祉大学医学部の生物入試では他大学の医学部の生物入試よりも出題頻度が高いように思われます。

【4 生殖・発生・遺伝】

 発生分野に関してはやや出題頻度は低いものの、近年研究レベルでの発展がすさまじい分野であり、他大学の入試では頻出ですので、今後出題頻度が高くなる可能性があります。発生現象の知識を遺伝子レベル、分子レベルまで掘り下げて関連付けておきましょう。
 2019年には、カエルの卵の大きさが変化してもその卵から作られる体の形は互いに相似形である、というスケーリング現象が扱われました。難度はやや高い問題でしたが、「最後の小問」で問われた「スケーリングの仕組み」に関しては、「生物の体には、うまいこと生き延びることができる仕組みが備わっているはずだ」という発想で選択肢を吟味すれば正答できるかと思います。この問題のように「難しくて何をやりたいのか分からない実験考察」だと感じた場合は、先に「最後の小問」を読んでみると「考察の筋道」が簡単に導かれることも多いので、「難問を解く受験テクニック」として身に付けておくとよいでしょう。
 2020年にはメンデル遺伝が出題されました。高校の生物教科書では一時期に比べてメンデル遺伝の扱いが縮小していますが、入試においては一遺伝子雑種から様々な遺伝、伴性遺伝まで一通りの内容が出題されます。メンデル遺伝が苦手な人はメンデル遺伝を手広く扱った問題集を探して集中的に対策しておきましょう。

【5 生物の生活と環境】

 人体に関連する分野を含むので、どこの医学部でも頻出分野です。また、植物ホルモンやフィトクロムなどの植物生理の分野でも問題が出題されますので、「人体の話じゃないから」と油断して対策が手薄にならないようにしましょう。
 2017年には心臓の圧容積曲線が出題されました。私立医学部では好んで出題されるテーマですので、類題を解いておくとよいでしょう。
 2018年にはアメフラシの神経細胞におけるイオンチャネルの働きが出題されました。細胞を出入りするイオンの種類によって膜電位に与える影響が違いますので、その観点から知識を整理しておきましょう。
 2019年には免疫と植物生理の分野から出題がありました。免疫系で働くTLR、MHCクラスⅠ/Ⅱ分子、TCR、BCRなどの「略字で表される膜タンパク質」の働きはしっかり覚えておきましょう。また、植物ホルモンやフィトクロムなどの植物生理の分野からはやや難度の高い実験考察問題が出題されています。
 2020年にはパラアミノ馬尿酸を使った尿生成に関するやや難しい計算問題と、屈筋反射における体性神経の伝導路に関する計算問題が出題されました。マーク式なので、計算が合わない場合に自分の誤りに気付きやすい、という利点はありますが、計算問題が苦手な人はやや難度の高い問題集に取り組み、「文章から立式する能力」を高めておきましょう。また、計算問題では単位を付けることで立式が楽になることが多いので、計算では単位を考える癖をつけるとよいでしょう。
 2021年には、心臓の圧力と容積の経時的変化を示すグラフなどの情報から、血液が心臓に戻ってくる時間を計算する問題が出題されました。圧容積曲線を「横軸を時間軸にして開いた」ようなグラフですが、私立医学部では類題がよく出題されていますので、他の私立医学部の過去問を解くことも、国際医療福祉大学医学部の対策となるでしょう。また、心臓の弁が開閉するタイミングも頻出なので類題で慣れておきましょう。

【6 生態と環境】

 難度の高い問題の出題頻度は低いですが、教科書レベルの知識問題や典型問題はよく出題されていますので、失点しないようにしっかり対策しておきましょう。
 2017年にはバイオームの物質生産に関連してターンオーバータイムの計算、2020年には生態系の種類による物質生産の違いを計算から考える問題が出題されました。物質生産の分野は国際医療福祉大学医学部に限らず私立医学部でよく出題されるテーマなので、苦手な人は基礎~標準レベルの問題でしっかり対策しておきましょう。

【7 生物の進化と系統】

 難度の高い問題の出題頻度は低いですが、教科書レベルの知識問題や典型問題はよく出題されていますので、失点しないようにしっかり対策しておきましょう。ただし、分子進化とハーディー・ワインベルグの法則の出題頻度は高いので、集中的に対策しておきましょう。
 2018年には分子進化に関してエキソンとイントロンの進化速度の違いが問われました。なぜイントロンの進化速度がエキソンの進化速度より速いのか、理由まで理解しておくとよいでしょう。2021年には遺伝的浮動とハーディー・ワインベルグの法則が出題されました。ハーディー・ワインベルグの法則は私立医学部では出題頻度が極めて高く、標準~やや難レベルの問題をたくさん解いておきましょう。

【制限時間に対する問題量】

 教科書レベルの知識問題や典型問題で熟考している時間はありませんので、これらの問題に対しては標準的な問題集をたくさん解き、即答できるようにしておきましょう。遺伝子発現やバイオテクノロジー、人体などに関する実験考察問題でどれだけ得点できるかが合否に大きく影響すると考えられます。時間を計りながら過去問を解き、「実験考察問題に使える時間」を確保する練習をしておきましょう。

まとめ

 上述の通り、生態・進化・分類といったマクロ分野からの出題は見られるものの、ほとんどが簡単な問題です。一方、細胞・代謝・遺伝子・恒常性などのミクロ分野・人体の分野からは出題数が多く、難易度も高いです。特に遺伝子発現やバイオテクノロジーの実験考察問題は難易度が高く分量も多いので、しっかり対策しておく必要があるでしょう。この分野をしっかり勉強しておけば、合格後の医学部での勉強も少しは楽になると考えて頑張ってください。

【発展的な用語】

 以下の用語は過去5年間で出題された用語です。この程度まで知識量を高めておけば総合的に得点力が上がってくると思いますので、余裕があれば資料集や生物事典などで勉強しておきましょう。
(用語)RISC、RubisCO、リガンド、エピトープ、ダイサー。GTP、カンブリア紀に出現した生物名

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投稿者:廣瀬 希

  • 役職
    生物科統括/生物科講師
  • 講師歴・勤務歴
    11年
  • 出身大学
    京都大学大学院理学研究科
  • 特技・資格
    中高の理科教員免許所持
  • 趣味
    読書
  • 出身地
    岐阜県
  • お勧めの本
    ざんねんないきもの事典

受験生への一言
興味を持つこと、が理解に近づく第一歩です。いきものに興味を持って、生物の学習に取り組んでほしいです。