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「2次関数の決定」解法いろいろ

「2次関数の決定」解法いろいろ

問題
次の条件を満たす関数 \( f(x)=ax^{2}+bx+c \) について, \(f(4)\) を求めよ。
\(f(1)=6\),\(f(2)=11\),\(f(3)=18\)




今回はこの問題のいろいろな解法を紹介しようと思います。
問題の条件から \( f(x) \) を求める問題のことを「2次関数の決定」と呼ばれることがあります。今回は \(f(x)\) を求めるようには言われていないため、正確にはそのように呼ぶのはよくないかもしれません。しかし、解答の途中で \( f(x) \) を求めることも多いため「2次関数の決定」と称しています。

なお、「関数 \(f(x)\) 」と書いてあるだけで正確には \(a\) の値を求めなければ「2次関数」かどうかは分からないため一部「2次(以下の)関数」と表記しています。

解法1(気合の連立方程式)

\(f(1)=6\),\(f(2)=11\),\(f(3)=18\) より

\(a+b+c=6\)
\(4a+2b+c=11\)
\(9a+3b+c=18\)

これらより \(a=1\),\(b=2\),\(c=3\) となるため \(f(x)=x^2 +2x+3\) である。

特に \(f(4)=4^2+2\cdot 4 +3=27 \)   □


 与えられた条件を素直に使って、\(f(x)\) を求めてしまおうという解法ですね。

解法2(1次関数からチャレンジ)

\(g(1)=6\),\(g(2)=11\) を満たす1次関数 \(g(x)\) は \(g(x)=5x+1\) となる。

ここで \(h(x)=f(x)-g(x)\) とおくと、\( h(1)=h(2)=0 \) であること、\(h(x)\) が2次(以下の)関数となることから

\(h(x)=a(x-1)(x-2)\) と書ける。

さらに \(h(3)=f(3)-g(3)=2\) であるから \(a\cdot 2 \cdot 1 =2\) すなわち \(a=1\) となる。

以上より \(h(x)=(x-1)(x-2) \) である。

したがって \(f(4)=h(4)+g(4)=6+21=27\)   □


 一見すると解法1と比べて解答が長くなっているように見えますが、連立方程式を解かなくてもよくなっています。ただ、解法1の \(f(x)\) と同様、「問われていない \( h(x)\)を計算している」という点では解法1と大差がないかもしれません。

 なお、この考え方は「グラフと \(x\) 軸との2交点が与えられた2次関数は求めやすい」ことをアイデアのもとにしています。\(g(x)\) が \(x\) 軸の役割を果たしてくれています。

解法3(階差数列を利用)

数列 \( \{ a_{n} \} \) を \( a_{n}=f(n) \) ( \(n\) は自然数) で定める。

\(b_{n}=a_{n+1}-a_{n}\) とおくと、\( b_{n} \) は \( n \) の1次式で表される。

さらに \(b_{1}=5\),\(b_{2}=7\) であるから、\(b_{n}=2n+3\) と書ける。

したがって、\(a_{4}=a_{3}+b_{3}=18+9=27\)

すなわち \(f(4)=27\)   □


 ついに \( f(x) \) を求めずして \( f(4) \) を計算することができました。しかし、ここまでくると、この解法をさらに「万能」にかつ「システマティック」にしたくなってきました。

 なお、この考え方は \( f(2)-f(1) \) や \(f(3)-f(2)\) を計算すると公差 \(2\) の等差数列が浮かび上がってくることをアイデアのもとにしています。とはいえ2数だけで等差数列と決めつけるのはいささか無理があります。そこで \(b_{n}\) は1次式だということに注目して等差数列であると確信を持たせているわけです。

解法4(階差数列を3回利用)

\( f_{0}(x)=f(x) \)

\( f_{1}(x)=f_{0}(x+1)-f_{0}(x) \)

\(f_{2}(x)=f_{1}(x+1)-f_{1}(x)\)

\(f_{3}(x)=f_{2}(x+1)-f_{2}(x)\)

とおく。

すると\(f_{0}(x)\) は 2 次(以下の)関数、\(f_{1}(x)\) は 1 次(以下の)関数、\(f_{2}(x)\) は定数関数、\(f_{3}(x)\) は常に値に \(0\) をとる定数関数というように次数が下がることが分かる。

ここで計算により

\(f_{1}(x)=f(x+1)-f(x)\)

\(f_{2}(x)=f_{1}(x+1)-f_{1}(x)=\{ f(x+2)-f(x+1) \} – \{ f(x+1)-f(x) \} \)

つまり

\(f_{2}(x)=f(x+2)-2f(x+1)+f(x)\)

同様にして

\(f_{3}(x)=f(x+3)-3f(x+2)+3f(x+1)-f(x)\)

となる。

以上により任意の2次(以下の)関数 \(f(x)\) と任意の実数 \(x\) に関して

\(f(x+3)-3f(x+2)+3f(x+1)-f(x)=0\)

が成り立つ。

特に \(x=1\) を代入すると

\(f(4)-3f(3)+3f(2)-f(1)=0\) となることから

\(f(1)=6\),\(f(2)=11\),\(f(3)=18\) から \(f(4)=27\)   □


 例のごとく解答は長くなってしまいましたが、この解法は問題の数値をどのように変えても、足したり引いたりの単純計算で解けるようになる「万能」かつ「システマティック」な解法になっています。その意味では価値ある解法と言えるのではないでしょうか。

 なお、この考え方は解法3で次数に注目したように「階差数列を計算する」という操作で次数がどんどん下がっていくことがアイデアの元です。関数に操作を加えるという点では微分に近いものがありますね。(実は、今回の考え方は「微分積分学」ならぬ「和分差分学」として数学の一分野として体系化されたものを参考にしています。)

まとめ

 今回の問題のように「いろいろな解法がある」という問題は無数にあります。いろいろな解法を知るメリットに「うまく解けなかったときに別の選択肢が用意できること」や「共通テストなど強制的に特殊な解法を選ばされる問題に対応できるようになること」があります。他にも、シンプルなメリットとして「思考力を伸ばす」ということも考えられます。

 正直なところ今回の問題であれば解法1で十分です。しかし、「さらに1段高いレベル」を目指すのであれば、1つの解法に満足することなくいろいろな解法に触れるようにしてみてはいかがでしょうか。

余談

任意の2次(以下の)関数 \(f(x)\) と任意の実数 \(x\) に関して
\(f(x+3)-3f(x+2)+3f(x+1)-f(x)=0\)
が成り立つ。

 解法4の途中で明らかになった「公式」ですが、この等式の係数に見覚えがあるという方もいるのではないでしょうか。実は等式 \( (x-1)^3 =x^3 -3x^2 +3x-1 \) に登場する係数と”配置”が同じです。このことから「もしかして、2次関数だけでなく \(n\) 次関数でも…?」と考えられます。

 今回は余白の都合上紹介は諦めますが、数学が趣味という方は暇つぶしがてら考えてみると面白いかもしれません。

投稿者:福居 宏大

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    京都大学大学院理学研究科
  • 特技・資格
    数学
  • 趣味
    数学
  • 出身地
    数学
  • お勧めの本
    Rational homotopy theory (Graduate Texts in Mathematics) ※数学科に進学した人向けです。

受験生への一言
数学をしましょう。