山岳医は、過酷な自然環境で診療・救助・教育を行う、特別な専門性を持つ医師です。
医療知識・登山技術・救助の指揮能力という専門性を同時に高いレベルで備える必要があり、医師の中でも挑戦者向けのキャリアといえます。
今回の記事では、受験生でもイメージしやすいよう医師免許取得から専門資格、仕事内容までをわかりやすく解説します。
山岳医とは何か
山岳医は標高2,000〜8,000メートル級の山域で診療・救助・教育を行う医師です。
山岳遭難の現場や夏期診療所、海外遠征チームなど活動領域は多岐にわたります。
高山病や低体温症、骨折・凍傷など山岳特有の外傷疾患を診療し、必要に応じてヘリコプター搬送の判断をするほか、遭難予防講習や山岳ガイド向け講義を担当します。
夏季に開設される山岳診療所、冬季のパトロール隊、国際遠征帯同医、研究機関や大学病院の山岳外来などが代表例です。
現場は標高差・気象条件ともに厳しく、限られた装備での即応力と総合診療力が試されます。
山岳環境医学の研究や医学生へのアウトドア医学教育に関わるケースも増えており、臨床医と研究者、教育者の三つの顔を持つことが一般的です。
山岳医になるには?流れを解説

山岳医になるためには、通常の医師としての訓練に加え、特別な知識と経験が必要です。
ここでは、医学部への進学から専門資格取得までの流れを順に説明します。
医学部6年間と主な試験(CBT・OSCE)
山岳医を目指すには、まず医学部で6年間の課程を修了する必要があります。
前半2年間では、生理学・解剖学・薬理学などの基礎医学を徹底的に学びます。
3〜4年次は臨床前教育が中心で、ここで重要になるのが、CBT(Computer-Based Testing)とOSCE(客観的臨床能力試験)です。
CBTは知識の網羅性と問題処理速度を問う試験、OSCEは模擬患者を相手にした診察・問診・説明などを評価する実技試験です。
これらを突破することで、5〜6年次には病棟や外来での臨床実習に進みます。
山岳医を目指す学生にとっては、この段階で救急外来や外傷対応の現場を積極的に経験することが、後の進路選択にもつながります。
医師国家試験の概要と合格基準
6年間の学修の集大成として、医師国家試験が毎年2月に行われます。
3日間にわたり400問が出題され、「必修問題」では80%以上の正答率が求められるほか、「禁忌肢」という重大な誤答が規定数以上あると不合格となります。
全体の合格率は90%前後と高いものの、救急・整形外科・循環器といった山岳医に直結する分野の理解を深めておくことで、将来を見据えた実力が培えます。
初期臨床研修で現場力を養う2年間
国家試験に合格すると、2年間の初期臨床研修が始まります。
この期間は、救急、地域医療、総合診療などをローテーションで回り、一次対応能力を身につけます。
特に救急当直では、トリアージや外傷処置、気道管理など、山岳現場で求められる初期対応スキルを実践的に学ぶことができます。
研修先によっては、山岳地域に近い病院で地域医療に携わる機会もあります。
専門研修と登山医学の学び
初期研修修了後は、3年目以降に専門分野を選ぶ専門研修に進みます。
山岳医としての適性が高いのは、救急科、整形外科、循環器内科、麻酔科など、登山中に遭遇しやすい病態に対応できる診療科です。
同時に、日本山岳・スポーツ・救急医学会(JAMMS)などが提供するDiMM講習(Diploma in Mountain Medicine)やJSMMe-Learning(山岳医療eラーニング)に参加することで、登山医学の専門性を高めていきます。
これらの学習は、通常の診療技術に加えて、低酸素環境・低体温・高山病といった山岳特有の病態に対応できる力を養うために重要です。
山岳医の専門資格

山岳医として本格的に活動するには、関連する専門資格の取得や継続的な現場経験が欠かせません。
ここでは、山岳医の専門資格について解説します。
日本登山医学会(JSMM)認定山岳医
JSMM認定山岳医は国内唯一の公式資格です。
申請には救急専門医などの基盤専門医が前提となるため、臨床経験を積みながら山岳現場での活動実績を蓄積する計画性が重要です。
更新は5年ごとで、診療日誌や学会発表を通じて継続的な活動を証明しなければなりません。
国際資格DiMM(DiplomainMountainMedicine)
DiMM講習では、雪崩救助やロープワーク、氷壁の登攀といった実地訓練があり、より実践的な山岳医療を学びます。
国際資格のため、英語での試験が行われる国もあり、語学力も将来的には強みとなります。
国際的な活躍を視野に入れたい人にとって、大きなステップになる資格です。
山岳医の仕事内容とやりがい

実際に山岳医がどのような場面で、どのような仕事をしているのかを知ることで、職業としてのリアルな姿が見えてきます。
あわせて、そのやりがいや社会的意義、直面する課題についても紹介します。
主な仕事内容と分野
山岳医の仕事内容は多岐にわたりますが、主な柱となるのは以下の4分野です。
分野 | 主なフィールド・連携先 | 代表的業務・具体例 |
臨床(診療) | 山岳診療所/クリニック、山小屋、平地の山岳外来 | 高山病・外傷の診療、酸素投与、縫合・骨折固定、登山前健診・凍傷治療 |
救助 | 山岳救助隊、警察・消防、ドクターヘリ | 現場での応急処置、ヘリ内蘇生、搬送判断、隊員への医療指導 |
教育 | 登山教室、ガイド講習、救助隊訓練、講演会 | 高山病予防講義、CPR・外傷処置訓練、一般向け安全登山啓発、記事執筆 |
研究 | 大学・研究機関、学会 | 高所生理・低酸素適応研究、遭難事例分析、救命プロトコル検証、論文発表 |
これらを横断的にこなすことで、臨床家としての腕と研究者としての探究心を同時に満たせます。
やりがい(社会的意義・知的挑戦)
自然環境の厳しさに立ち向かう使命感、未解明の高所など、山岳医のやりがいは多くあります。
遭難者数は年々増加傾向にあり、国や自治体からの制度整備要望も高まっています。
近年は登山者の増加に伴い、遭難のリスクも高まり、国や自治体が山岳医療の制度整備に力を入れ始めています。
また、国際遠征に帯同し、世界的なクライマーを支える山岳医も増えており、スポーツ医学や観光振興といった他分野とのつながりも広がっています。
課題(資源不足・身体的負担・収入面)
山岳医療には多くの課題もあります。
多くの現場では、山での診療活動がボランティアとして行われており、医師自身が登山装備や移動費を自費でまかなうことも珍しくありません。
また、標高3,000メートルを超えるような山岳診療所での勤務は、気温や天候の変化が激しく、体力的にも精神的にも大きな負担になります。
自らが遭難リスクにさらされる危険もあり、安全管理には高度な判断力が必要です。
制度面では2024年に長野県が開始した山岳医療研究拠点整備事業など、自治体レベルでの支援が徐々に広がりつつあります。
山岳医に求められる資質
山岳医として活躍するには、医学知識だけではなく、過酷な環境に対応する技術や精神的なタフさも求められます。
ここでは、山岳医に必要とされる具体的な能力や人間的な資質について見ていきましょう。
医学的専門性
現場で遭遇する外傷は多岐にわたるため、救急科を基礎に循環器・呼吸器・整形外科・麻酔科など幅広い臨床力が求められます。
加えて、低酸素環境下で薬がどのように体内で作用・分解されるか(薬剤動態)など、通常の医療現場とは異なる特殊な知識も必要です。
登山技術と体力
山岳医として現場に立つには、自分自身が安全に山を行動できることが大前提です。
岩場や雪山、氷壁を移動するための技術や、ロープワーク、滑落停止、アイスクライミングなどの登山技術を習得している必要があります。
また、場合によっては10時間以上の登山行動が求められることもあるため、長時間にわたって行動できる体力と持久力も不可欠です。
チームワークと指導力
山岳救助の現場では、警察や消防、救助隊、ガイドなど多くの関係者と連携して行動する必要があります。
限られた情報の中で最適な判断を下し、リーダーとしてチームをまとめる力が求められます。
また、講習会や研修などを通じて、登山者や救助関係者に対して分かりやすく医学的な知識を伝える能力も必要です。
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まとめ

山岳医を含む医療のプロフェッショナルを志すなら、いま踏み出す一歩が将来の医療現場につながります。
本記事で見てきたように、医学部入試は高度な知識と計画力を同時に要求する挑戦です。
医学部専門予備校 京都医塾は、逆算カリキュラムと厚い講師陣、学寮や食事まで揃えた生活環境で、その挑戦を着実な成功へ導いてきました。
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