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2023年度帝京大学医学部の化学過去問対策・分析

2023年度帝京大学医学部の化学過去問対策・分析

京都医塾化学科です。

このページでは、2023年度の帝京大学の化学前期試験の入試問題について分析します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“帝京大学”の受験を考えている方
・“帝京大学の化学がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2023年度
形式:記述
時間:理科2科目で120分
大問数:4題
配点:100点
(3日間の自由選択式ですが、この記事では赤本に掲載されている1日分の問題分析を行います。)

出題の傾向と特徴

【例年の出題傾向】

出題形式は大問が4題で、理論1~2問、有機1~2問、無機0~1問のバランスで出題されています。①典型的な解法の計算問題、②細かい知識を問う選択式の小問、③発展的な内容についての長い文章題、が最近の傾向です。

【頻出の出題単元】

理論化学・有機化学・無機化学が上述のとおりバランスよく出題されますが、特に高分子については発展内容もよく出題されるため、対策をしておくとよいでしょう。また、さまざまな物質の性質や応用例などの細かい知識がよく出題されるので、資料集や図録の隅々まで目を通しておきましょう。

【制限時間に対する問題量】

計算問題と選択問題のいずれも難易度は標準レベルですが、一部細かい知識を問う問題も出題されます。また、有効数字や解答の仕方などの指示が細かく、慎重に解答する必要があるうえに分量が多いため、時間内に全問を解き切るのは難しいと考えられます。典型問題の解法と基礎知識は即座に引き出して使えるレベルまで仕上げたうえで、発展的な内容の問題に対し、与えられた条件や式を読み解いてどれだけアプローチできるかがカギとなります。

2023年度(最新の過去問)の分析

ここからは、最新の入試問題を具体的に分析します。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。化学①(3日間の出題のうち、この記事では1日分の問題分析を行います。)

【大問1(熱化学)】

問1~問4は熱化学に関する知識題。ルミノール反応は図録などに載っていますが、パッと出てこなかった受験生が多かったと思います。日頃から興味をもって資料集や図録に目を通しておくことが大切ですが、試験本番でわからない知識問題に出会った場合は、時間をかけず割り切って他の問題に集中しましょう。問4のエチレンの生成熱とエタンの生成熱の比較は、エチレンの方が反応性が高いことから類推できますが、やや難しかったかもしれません。反応性が高い物質ほど持っているエネルギーが大きいという原則を覚えておきましょう。
問5は混合気体の燃焼熱から混合割合を求める典型問題。問6も結合エネルギーを使って生成熱を求める典型問題。いずれも有効数字の指定や計算ミスなどに注意して取り切りたいところです。

≪2023年度 大問1の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…8割5分以上
他教科を得点源にしたい受験生…7割以上

【大問2(金属イオンの同定)】

問題文の条件から、金属イオンと試薬の同定(正体を明らかにすること)を行う問題。金属イオンの候補10種のうち実際に硝酸塩水溶液があるのは9種類となっていたり、同族のイオンの組を3組から2組に絞り込んだりとやや凝った構成で、得意・不得意が分かれる問題でした。論理パズルは苦手と感じる受験生も多いかもしれませんが、基本は確実にわかる条件から選択肢を絞り込んでいく消去法です。条件が多いということはヒントが多いということですから、あきらめずに地道に考えを進めていけば、案外満点が取れてしまう問題でもあります。

≪2023年度 大問2の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【大問3(芳香族化合物の性質、エステルの構造決定)】

問1は条件に合う化合物を選択肢からすべて選んで答える問題。構造を見れば明らかですが、カルボキシ基も金属ナトリウムと反応して水素を発生することは押さえておきましょう。また、選択肢が12と多いので、見落としがないように慎重に答える必要があります。
問2は元素分析からの構造決定。エステルのけん化後、エーテル層と水層から得られる化合物が何かが分かれば、あとは容易。分解で生じた化合物の名称を聞かれていることからも、答えやすい化合物であることがわかります。時間をかけず、きっちり取り切りたい問題でした。

≪2023年度 大問3の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【大問4(合成樹脂)】

合成樹脂の知識問題。不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂など、受験生にとってはやや馴染みが薄い用語が選択肢に含まれているため、惑わされたかもしれません。しかし、逆に言えば、知識を覚えてさえいれば得点できる問題とも言えます。帝京大学で高分子分野が毎年出題されることは判っているわけですから、直前に対策しておく価値は十分あるでしょう。

≪2023年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…8割以上
他教科を得点源にしたい受験生…5割以上

【総評】

昨年に引き続き、近年よく出題されていた発展レベルの長文問題が無くなり、基本知識と典型問題の解法がしっかり身についていれば解ける、基礎~標準レベル中心の出題でした。ただし、標準レベルとはいえ分量は多いため、焦らず確実に得点を積み重ねる姿勢が大切です。また、今回はごく一部ですが、高分子や素材についてはやや発展的な知識が出題されることもあるので、図録などで用語や物質の用途を確認しておきましょう。

まとめ

というわけで、今回は帝京大学医学部の2023年度の化学の入試問題についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:安達 康明

  • 役職
    化学科統括/化学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    8年
  • 出身大学
    京都大学工学部
  • 特技・資格
    バレーボール
  • 趣味
    ゲーム、アニメ鑑賞
  • 出身地
    岡山県
  • お勧めの本
    ビーカーくんとそのなかまたちシリーズ

受験生への一言
なぜその思考が必要なのか、なぜこの解法なのかをキチンと理解できれば点数は必ずついてきます。その手助けをしていくことを最優先で考え、授業を進めています。合格のために出来るサポートは全力でやります。