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2022年度東京慈恵会医科大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度東京慈恵会医科大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「東京慈恵会医科大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“東京慈恵会医科大学医学部”の受験を考えている方
・“東京慈恵会医科大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度 
形式: 記述式
制限時間: 90分
配点: 100点

 東京慈恵会医科大学医学部の数学は、2018年度以降「90分・記述式(一部、空所補充形式)」という形式が続いています。

出題の傾向と特徴(過去5年分)

【第1問に関して】

 第1問は空所補充形式になっています。2019年度までは、小問2問の小問集合形式でしたが、2020年度より、大問形式の出題となっています。出題形式が変わっても、近年はずっと「確率」からの出題が続いています。(小問集合形式の際は、「確率」とその他の分野から、合わせて2問出題されていました。)第2問以降に比べると、第1問の難易度はそう高くはありません。各年度の問題を見ると、第1問は必ず得点すべき問題になっています。「確率」を苦手とする受験生は多いと思いますが、問題演習を多くこなし、第1問を得点源にできるようになっておきましょう。

【第2問~第4問に関して】

 第2問~第4問は記述形式になっています。第1問と比べると、難易度が高い問題が並んでおり、大学入試数学の標準以上のレベルが求められます。証明問題も例年出題されており、考察力・記述論証力が問われる内容になっています。「微積分法(数学Ⅲ)」からは毎年出題されており、ここ5年では、「極限」との融合問題になっていることも多いです。また、「数列の極限」「複素数平面」「整数」からの出題も多くなっています。まずは、大学入試数学の基本的な解法を使いこなせるように、問題演習に取り組みましょう。そのうえで、発展的な問題を通して、自身の持つ知識・解法をどう使うのかという応用力を養っていきましょう。

【制限時間に対する問題量】

 試験時間90分に対して、空所補充形式1問、記述式3問と、決して多くの時間が与えられているわけではありません。第2問以降に時間を残すためにも、第1問の確率問題は素早く正確に解ききれるようになっておきましょう。また、第2問以降では、「微積分法(数学Ⅲ)」からの出題で顕著であるように、計算力も問われます。普段の学習から、計算力の向上に努めるようにしておきましょう。

2022年度(最新の過去問)の分析

 さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

 

【第1問 確率】(難易度:やや易) 

 2つの袋から球を取り出し、入れ替えを行う問題です。

(初期状態)
 袋Aに白玉2個,赤玉1個、袋Bに白玉1個,赤玉2個が入った状態から開始。

(操作①)
 袋A,袋Bから玉を1個ずつ取り出す。
 
(操作②)
 (ⅰ) 取り出した2個の色が同じである場合は、それらを袋Aに入れる。
 (ⅱ) 取り出した2個の色が異なる場合は、それぞれの玉をもう一方の袋に入れる(玉の交換)。

 (ア) 操作①②を2回繰り返した後、袋Aに残っている赤玉の個数が1個になる確率を求めよ。
 数え上げが基本です。1回目の操作後に、袋A, Bの中身がどのような状態になり得るのかを特定しておけば、2回目の操作後の状態を容易に導くことができます。
 1回目の操作で起こり得る玉の取り出し方は、以下の4パターンのみとなります。

 (1) A白、B白 → AにBから取り出した白を加える
 (2) A赤、B赤 → AにBから取り出した赤を加える
 (3) A白、B赤 → AにBから取り出した赤、BにAから取り出した白を入れる
 (4) A赤、B白 → AにBから取り出した白、BにAから取り出した赤を入れる

 ここから2回目の操作によってAに赤を1個だけ残すことができるのは、(2)(3)(4) の場合です。「かつ」「または」の条件に注意して、確率計算を行いましょう。

 (イ) 操作①②を3回繰り返した後、袋Aに残っている赤玉の個数が0個になる確率を求めよ。
 結果から逆算して考えましょう。3回目の操作でAに赤が残らないようにするためには、2回目の操作終了時点において、Aに赤が1個だけ、Bに白が少なくとも1個残っていなくてはなりません。2回目でその状態を作ることができるのは、1回目で(3)(4)のパターンが出ているときだけです。ここまでわかれば、確率の計算そのものは非常に簡単です。ミスなく解き切りましょう。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【第2問 微分積分】(難易度:やや易)

 関数 \(f(x) = \displaystyle\frac{|x+a|}{ \sqrt{x^2+1}\ }\ \) について、各小問に答えます。

 (1) \(f(x)\) が \(x=-a\) において微分可能であるかを調べよ。
 微分可能であるということは、微分係数の定義式において、その極限の値が存在することと同じです。絶対値付きの関数の極限を考えることになるため、片側極限を取った際の正負に注意して解き進めましょう。

 (2) \(f(x)\) の最大値が \( \sqrt{2}\ \) となるように、定数 \(a\) の値を定めよ。
 増減表およびグラフから、最大値となる点を見つけましょう。最大値・最小値の候補となる点は、極値を取る点かグラフの “両端” が基本です。
 (1) から、\(f(x)\) は \(x=-a\) において微分可能でないことが分かりますので、その部分も織り込んで増減表を書いていきましょう。普段から、未知の関数のグラフを作図する練習を重ねていないと、正確な作図は難しいと思われます。グラフが \(x=-1\) で「尖った」形になること、直線 \(y=1\) に漸近することが作図に反映できていなかった生徒は、要復習です。

 (3) 定数 \(a\) を、(2)で定めた値とする。このとき、曲線 \(y=f(x)\), \(x\)軸, \(y\)軸によって囲まれた部分を、\(x\)軸の周りに1回転させてできる立体の体積 \(V\) を求めよ。
 (2) の最大値の導出過程で、既に増減表とグラフは完成しています。グラフから、どのような形の回転体になるのかを考えましょう。
 回転させる部分のグラフは全て \(x\) 軸の上部にあるため、立式は非常に簡単です。多項式が分母・分子にくる積分計算のセオリーとして、分子の次数≧分母の次数であるときは、可能な限り分子の次数を下げてから計算することを心掛けましょう。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…8割

【第3問 整数】(難易度:標準)

 3以上の奇数 \(m\) の正の約数について考える問題です。\(m\) の条件として、以下の2つが設定されています。
 (ⅰ) \(m\) は素数でない。
 (ⅱ) \(m\) のすべての正の約数を、小さい順に \(a_{1}, a_{2}, …, a_{k}\) とおいたとき、\(i ≦ j, 1 < i < k, 1 < j < k\) をみたすすべての整数 \(i, j\) について、\(a_{j}-a_{i} ≦ 3\) が成り立つ。

 (1) \(k\) は \(3\) または \(4\) であることを示し、\(m\) を \(a_{2}\) を用いて表せ。
 まずは \(k = 3, 4\) であることを証明しましょう。
 \(k=1, 2\) となるような奇数は、1か素数しかありません。よって、\(k≧5\) となるような任意の奇数において、任意に \(i, j\) をとったときに \(a_{j}-a_{i} >3 \) となることがある、ということが示せれば証明は完成です。
 奇数 \(m\) の約数は、すべて奇数であることに注目しましょう。約数がすべて奇数であるということは、\(m\) の異なる2つの約数の差は、どれだけ小さくとも \(2\) であることが分かります。\(i, j\) が任意に取れるということは、例えば \(a_{2}, a_{3}, a_{4}\) と並んだ奇数のうち \(a_{i}=a_{2}, a_{j}=a_{4}\) という取り方も含むということですから、それらの差は必ず \(4\) 以上となります。
 以上より、\(k≧5\) のときは、いつでも \(a_{j}-a_{i}>3\) となるような \(i, j\) を取ることができるため、これを満たす \(m\) は存在しないことが分かります。

 次に、\(m\) を \(a_{2}\) を用いて表しましょう。
 上記の証明より \(k=3, 4\) となるため、\(m\) の約数は {\(1, a_{2}, m\)} …① もしくは {\(1, a_{2}, a_{3}, m\)} …② のどちらかで表されます。
 ① の場合、約数が全部で 3 つとなりますから、\(m=(2x-1)^2\) (\(x\) は自然数) とならなくてはなりません。このとき、\(a_{1}=1, a_{2}=2x-1, a_{3}=m=(2x-1)^2\) ですから、\(m=a_{2}^2\) です。
 ② の場合、奇数の合成数で約数が 4個になるため \(m=(2x-1)(2y-1)\) (\(x, y\) は自然数かつ \(x≦y\)) の形で表せます。このとき \(a_{1}=1, a_{2}=2x-1, a_{3}=2y-1, a_{4}=m= (2x-1)(2y-1)\) であり、さらに \(a_{j}-a_{i}≦3\) であるため \(a_{2}=2x-1, a_{3}=2x+1\) となります。以上より、\(m=a_{2}(a_{2} + 2)\) であることが分かります。

 (2) \(k=3\) のとき、すべての正の整数 \(n\) について \((a_{2}n+1)^{a_{2}}-1\) は \(m\) の倍数であることを示せ。
 \(k=3\) のとき \(m=(a_{2})^2\) より、与式が “(整数)・\((a_{2})^2\)” で表されることを証明できれば良いです。
 二項定理を用いて展開を行うと \((a_{2})^{2}\) で括れる形に持ち込めます。この式変形は特に難しいところもなく、公式とゴール地点さえ明確に把握できていれば、手こずることはないでしょう。
 

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…6割
他教科を得点源にしたい受験生…4割

【第4問 複素数平面】(難易度:難)

 複素数平面上の点と、それを通る直線について考える問題。

 (1) 点 \(z\) が原点を中心とする半径 \(1\) の円周上を動くとき、\(w=z+\displaystyle\frac{2}{z}\ \) とする。\(w=u+vi\) としたときの、\(u, v\) の関係式を求めよ(ただし、\(u, v\) は実数である)。
 複素数 \(z\) が原点中心、半径 1 の円周上の点であるため、\(z=\cos{\theta\ }\ +i\sin{\theta\ }\ \) と表せます。これを \(w\) の式に代入したあと、相互関係の公式 \(\sin^2{\theta\ }\ +\cos^2{\theta\ }\ \) を利用して、\(u, v\) の関係式を導きましょう。

 (2) 点 \(w\) が描く図形\(C\) の内部にある点を \(\alpha\ \)とおく。点 \(\alpha\ \)を通る直線 \(l\) と、図形 \(C\) との交点を \( \beta\ _{1}, \beta\ _{2}\) とする。点 \(\alpha\ \)を固定したまま \(l\) を動かすとき、積 \(| \beta\ _{1}- \alpha\ |・| \beta\ _{2}- \alpha\ |\) が最大となるような \(l\) はどのような直線のときか調べよ。
 まずは、点 \( \alpha\ \) を通る直線の式を考えましょう。点 \( \alpha\ , \beta\ _{1}, \beta\ _{2}\) は \(xy\)平面上の点と捉えると考えやすくなります。また、 \(| \beta\ _{1}- \alpha\ |・| \beta\ _{2}- \alpha\ |\) の値は、各点間の距離の積に等しくなります。
 点 \( \alpha\ , \beta\ _{1}, \beta\ _{2}\) を \(A(a_{1}, a_{2}), B_{1}(p_{1}, p_{2}), B_{2}(q_{1}, q_{2})\) とおくと、点Aを通る直線は、\(x=a_{1}\)…① または、傾きを \(m\) として \(y=m(x-a_{1})+a_{2}\)…② と表せます。① の場合は容易に線分 \(AB_{1}, AB_{2}\) の長さを求めることができますので、ここから先は ② の場合をピックアップして考えてみましょう。なお、① のときに、与式が最大値を取ることはありません。
 ここから先の基本的な流れは、
(ⅰ)直線 \(l\) と曲線 \(C\) との交点 \(B_{1}, B_{2}\) の \(x\) 座標を求める
(ⅱ)各点の座標から \(AB_{1},AB_{2}\) の長さを求める
(ⅲ)(ⅱ) で求めた式と点Aが楕円 \(C\) の内部にあるという条件を用いて\(AB_{1}・AB_{2}\)が最大となる \(m\) の条件を求める
となります。
 (ⅰ) はそこまで難しくありません。
 (ⅱ) において、長さをどの文字の式で表すかが、正否の分かれ目と言えます。
 今回は、\(AB_{1}・AB_{2}\) の値が最大になるときの直線 \(l\) を知るのが目的です。直線の式は点Aの座標と傾き \(m\) によって決定されますから、最終的に \(a_{1}, a_{2}\) および \(m\) の関係式が導ければ良いと考えることができます。
 なお、解と係数の関係を利用すると、\(p_{1}+q_{1}\) および \(p_{1}q_{1}\) は、全て \(m, a_{1}, a_{2}\) の式として表せます。ゴール地点を見誤らないように計算を進めましょう。
 最終的に、以下の式が導かれます。
\[| \beta\ _{1}- \alpha\ |・| \beta\ _{2}- \alpha\ |=AB_{1}・AB_{2}= \displaystyle\frac{9(1+m^2)}{1+9m^2}\ \left | \displaystyle\frac{a_{1}^2}{9}\ +a_{2}^2-1\right | …(*)\]
 (ⅲ) 等式 (*) の最大値を求めます。絶対値の外し方で迷うところですが、元々、点Aは楕円 \(C: \displaystyle\frac{x^2}{9}\ +y^2=1\) の内部の点なので\(\displaystyle\frac{x^2}{9}\ +y^2<1\) です。これにより、絶対値の中身は必ず”負の値”であることが分かります。
 さらに、\(a_{1}, a_{2}\) は問題の条件から “固定” されていますから、式 (*) の中で \(m\) が含まれている部分 \( \displaystyle\frac{9(1+m^2)}{1+9m^2}\ \) の最大値だけを考えることになります。

≪2022年度の目標≫

数学を得点源にしたい受験生…7割
他教科を得点源にしたい受験生…4割

【総評】

 第1問、第2問は基本的な問題です。素早く、かつ正確に解き切りましょう。
 第3問は一見すると複雑な問題ですが、1つずつ調べてみると、\(m\) とその約数について、どのような法則が成り立っているのか、すぐに気づけるはずです。
 第4問 (1) は、非常に簡単な問題ですから正解したいところです。(2) については、式をどのように立てるのかが見えづらく、途中計算も煩雑です。どの文字に注目して立式するのかをまず明確にしたうえで、最終的に目指すべき形を意識しながら式変形を進めましょう。関連事項として、多変数関数の最大・最小を求める問題のセオリーである、1つの文字だけを動かし、残りは固定するという方法も、改めて確認しておきましょう。
 第4問(2)を除くと、計算量が少なく難易度も易しめの年でした。第1問、第2問で得点のベースを作り、残り2問に臨みましょう。

まとめ

というわけで、今回は東京慈恵会医科大学の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:福本 皓太

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    7年
  • 出身大学
    帝塚山大学人文学部
  • 特技・資格
    剣道三段
  • 趣味
    読書、旅行
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    忘れられた日本人

受験生への一言
数学の楽しさは、多くの場合苦しさと表裏一体です。できないこと、難しいことから逃げずに、真正面から取り組んでください。その先に、今まで認識できていなかった世界が広がっています。