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防衛医科大学校医学教育部医学科の過去問対策・出題傾向まとめ【生物編】

防衛医科大学校医学教育部医学科の過去問対策・出題傾向まとめ【生物編】

 

京都医塾生物科です。
このページでは「防衛医科大学校医学教育部医学科」の生物の過去問について分析します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“防衛医科大学校医学教育部医学科”の受験を考えている方
・“防衛医科大学校医学教育部医学科の入試問題がどのような問題か知りたい”という方

におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2021年(最新の問題より) 

形式:記述式
時間: 60分(2科目で120分)
大問数:4題
配点:非公開
出題範囲:生物基礎・生物

出題の傾向と特徴(6年分)

 出題形式は安定していますが私立医大・医学部とはかなり違います。まず、「記号式」解答がほぼ見られないことが特徴です。10字~80字程度の記述式が非常に多く2021年度では大問4問に合計14問の記述式が出題されました。空欄を語句で補充する形式、語句を答える形式、さらに図表の描画も多く、多種多様な出題形式です。

 出題内容も国公立医大・医学部に近いもので、生物のどの分野からも満遍なく出題されています。特に「進化」を取り扱った問題は6年間で5回、「生殖・発生・遺伝」「生物の生活と環境」もほぼ毎年出題されています。大問の前半で問われる知識は基礎的で平易なものですが、後半は複数の分野を組み合わせた思考力を要する出題となっています。なお、本大学校の入試は入学前年の秋に実施されるので、本稿の記述で「2018年度」と記載されているのは2017年に実施された入試のことを指します。

【1 細胞と分子】

 細胞そのものを素材とした設問は少ないのですが他分野と関連して良く出題されます。2018年度の大問1は単細胞生物の細胞小器官と人間の各臓器を対応させた出題。後半は拡散方程式まで扱う高度な問題となっています。

【2 代謝】

 酵素反応は種々の分野に関係しているので、毎年出題されていると言えます。2018年度の大問3では酵素反応の基礎知識を問う設問の後で、競争的阻害の実験結果を、阻害剤が基質と不可逆的に結合する場合と可逆的に結合する場合とに分けて予測させる高度な問題となっています。

【3 遺伝情報の発現】

 重要分野です。2021年度は「遺伝子発現のしくみ」、2020年度は「バイオテクノロジー」が出題され、2019年度は「遺伝子発現のしくみ」、2018年度は「肺炎双球菌の形質転換」が出題されました。2021年度の大問3ではヘモグロビンとミオグロビンの遺伝子の違いを分子進化の観点から説明させた上で両者の酸素解離曲線の違いを説明させ、最後は鎌状赤血球貧血症患者のヘモグロビン遺伝子の病変を電気泳動法で検出する実験を考察させています。

【4 生殖・発生・遺伝】

 これも頻出分野です。2021年度・2020年度は「胚葉の分化と器官形成」が、2017年度は「減数分裂」「植物の配偶子形成」、2016年度は「プラナリアの再生」が出題されています。最近2年間は図表を描かせる問題が出題されています。2021年度の大問2では、哺乳類の眼の発生における誘導が取り上げられました。テーマとしては頻出のものですが、反応の有無を確かめる実験を答えさせたり、水晶体内部の細胞の不均等な分布の原因について考えさせたりするなど、高度な問題も含まれています。

【5 生物の生活と環境】

 この分野も6年間で5回出題されています。2021年度は「腎臓のはたらき」2020年度は「興奮の伝達」2029年度は「筋収縮」、2018年度は「聴覚器」、2017年度は「腎臓のはたらき」がそれぞれ出題されました。2021年の大問1では腎臓のろ過能力が溶質分子の帯びている電気によって変化することをグラフで示した後で種々の実験結果を考察させる問題で、グラフの描出も要求されるボリュームのある問題です。

【6 生態と環境】

 この分野単独での出題は見られませんが、他の分野と生態を関連させて総合問題的に扱う出題がしばしば見られます。2016年度の大問2では生物濃縮の話題から生体膜の構造を論じ、さらに汚染土壌から放射性セシウムを小麦に吸収させることで除去させるというアイデアの実用化について考察させる問題となっています。

【7 生物の進化と系統】

 本大学校は生命現象について進化をベースにして論じる傾向が強く、最近6年間中5年出題され、2019年度は大問4問中、2問が進化を扱っています。2021年度は「植物の進化」、2020年度は「進化のしくみ」。2019年度は「生物の系統」「人類進化」、2017年度は「進化のしくみ」、2016年度は「人類進化」が出題されており、全体として系統分類と人類進化の出題が多く見られます。2021年度の大問4ではシダ植物→裸子植物→被子植物という進化史をベースに内陸地域の高温・乾燥化という環境の変化とC4植物やCAM植物の誕生を論じ、さらに陸上植物の系統樹を出題しています。

【制限時間に対する問題量】

 形式が多様で記述量が多く、図の描画もあるので60分という試験時間で完答することはかなり困難です。

まとめ

 本大学校を第1志望にする場合、生物基礎・生物の全範囲を学習することが必須となります。特に生態や進化という私立医大・医学部であまり出題されない分野が出題されるので注意しましょう。その上で、本大学校の出題する大量の問題を処理できるスピードを身に付けることが重要です。難問もありますが、多くの小問は比較的平易なので教科書の内容を理解していたら合格点に達することは出来ます。また、入学試験の時期が早いので早期に学習を完成させることも必要です。

投稿者:廣瀬 希

  • 役職
    生物科統括/生物科講師
  • 講師歴・勤務歴
    11年
  • 出身大学
    京都大学大学院理学研究科
  • 特技・資格
    中高の理科教員免許所持
  • 趣味
    読書
  • 出身地
    岐阜県
  • お勧めの本
    ざんねんないきもの事典

受験生への一言
興味を持つこと、が理解に近づく第一歩です。いきものに興味を持って、生物の学習に取り組んでほしいです。