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関西医科大学の一般入試の過去問対策・出題傾向まとめ【物理編】

関西医科大学の一般入試の過去問対策・出題傾向まとめ【物理編】

 


京都医塾物理科です。

このページでは「関西医科大学の物理」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“関西医科大学”の受験を考えている方
・“関西医科大学の物理がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2021年度(最新の問題より) 
形式:記述式(ほぼ全ての設問で導出過程も問われる)
時間:2科目120分

大問数:4題

配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)

出題の傾向と特徴(6年分)

2016年度以降の6年分について、分野別の傾向をまとめます。

【力学】

毎年、1題は出題されています。出題テーマは

・「球体上でL字棒が静止する条件(2021)」

・「水中で小球が落下するビーカーをのせた台はかりが測る力 (2020)」

・「ネジ締めの力学モデル(2019)」

・「車が横滑りしない条件と横転しない条件(2018)」

・「CO分子の力学モデル(ばねにつながれた2質点の連成振動)(2017)」

・「水中での接触2物体の単振動(2016)」

です。

2017~2019年度あたりまでは、おそらく通常の演習ではほとんど出会わないであろう題材を出題しているため、どのような物理モデルに落とし込んでいるのかを、冷静に判断する必要がありました。一方で、これらに比べると、2020、2021年度は誘導色も強く、うまくそれに乗れば高得点を出しやすくなっています。

いずれにしても、高度な題材が選ばれがちであるため、例えばばねにつながれた2質点の連成振動であれば、両側の質点が重心から見て単振動することなどは、事前に知識として押さえておきましょう。

【電磁気】

毎年、1題は出題されています。出題テーマは

・「LEDを含む直流回路(2021)」

・「分布定数回路(はしご状に並んだ抵抗の合成)(2020)」

・「イオンチャネルの回路モデル(RC直流回路)(2019)」

・「電流がつくる磁場およびそれによる電磁誘導(2018)」

・「静電容量式タッチパネルの回路モデル(RC交流回路)(2017)」

・「LEDの発光原理およびこれを含む直流回路(2016)」

です。

これらから分かるように、電磁気もやはり、医学や工学における題材を、高校物理の範囲内でモデル化して分析させる出題が多く見られます。中でも、LED(発光ダイオード)に関する問題が、2016年度と2021年度の2回に渡って出題されています。LEDも非線形抵抗なので、基本的には与えられた電流電圧特性グラフについて、回路から得られた方程式と交点を取り、LEDに流れる電流や電圧を求めます。

非線形抵抗の問題は、市販の問題集などにも類題が多いため、それらを通じて解法の流れを確認しておきましょう。

【波動】

毎年、1題は出題されています。出題テーマは

・「管楽器内の気柱が共鳴する条件(2021)」

・「球形レンズ(2020)」

・「くさび型薄膜による光波の干渉(2019)」

・「ドップラー効果による血流速度の測定(2018)」

・「屈折率が離散的または連続的に変化する光ファイバー(2017)」

・「ロイドの鏡(ヤングの実験)(2016)」

です。

力学や電磁気に比べると、完全に未知の題材が選ばれるわけではなく、教科書に準拠した題材を踏まえて、それを少しだけ発展させるという構成が目立ちます。

2021年度はフルートの共鳴をテーマにした問題でしたが、弦楽器や管楽器を普通に鳴らすと(指で弾く、息を吹き込む)、基本振動だけでなく、その整数倍の振動も一般的には同時に発生します(音楽的には「倍音」と呼ばれる)。盲点となりがちな事柄ですが、これを意識できていなければ解けない設問が出題されました。必ず知識にしておきましょう。

【熱力学】

2年に1回程度、出題されています。出題テーマは

・「スターリングサイクル(定積・等温変化からなる熱サイクル)(2019)」

・「酸素ボンベ内の圧力調整器のモデル(2018)」

・「フェーン現象(2016)」

です。

ここもまた、発展的な題材が好まれています。苦手な人は、まずは基本を一通り押さえましょう。

例えば、pVグラフで囲まれた面積が外部にした仕事を表すことや、等温・断熱・定積・定圧といった典型的な状態変化における特徴、また熱効率の定義式(e=W/Qin)などは、教科書などを通して事前に完璧にしておきましょう。その上で、余力があれば、発展的な問題に挑戦するとよいでしょう。

【原子物理】

2年に1回程度、出題されています。出題テーマは

・「ボーアモデル(2020)」

・「FDG-PETにおける放射能測定(2017)」

です。

2020年のボーアモデルは、SI(国際単位系)の改定に絡めた発展的な設問もありましたが、ほとんどは基本的な知識で解けるものでした。

ボーアモデルはどのレベルの問題であれ、「(i)円運動の運動方程式、(ii)量子条件、(iii)振動数条件」の3式を連立して解いていくことに変わりありません。見かけ以上にワンパターンなので、類題演習を通して、最初から最後までの解答の流れをつかんでおきましょう。

【制限時間に対する問題量】

2021年度は2科目120分で大問4題を解答する必要がありました。1科目60分と考えると、大問1題あたりの時間は15分となります。1題の量も多いため、長考する時間はほとんど取れません。最近は4題とも全てが難問ということはなく、明らかに難易度に格差があるため、より平易な問題を見極めて手をつけていくようにしましょう。

まとめ

難易度はやや難~難であり、題材や問題設定は受験生にとっては見慣れないものが多く、大学レベルの内容が噛み砕いて出題されることもあります。そのため、かなり高度な読解力や思考力が必要となり、加えて時間的な余裕もないため、迅速で精度の高い計算力も要求されます。ここ数年で、以前に比べると多少は易化した感はありますが(全ての大問が強烈に難しいわけではなくなりましたが)、それでも依然として高い完成度が必要となることに違いありません。基本を完璧にした上で、発展的な題材についてもそれをしっかりと思考して解くという訓練を十分に積んでから、試験に臨みましょう。

京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。

投稿者:佐藤 寛之

  • 役職
    物理科統括/物理科講師
  • 講師歴・勤務歴
    14年
  • 出身大学
    京都大学理学部
  • 特技・資格
    作業に没頭できること
  • 趣味
    散歩
  • 出身地
    岡山県
  • お勧めの本
    高橋昌一郎「理性の限界」

受験生への一言
まず、目の前の問題が「解けない」という事実にこだわりましょう。解説を読んで理解した気になってはいけません。解けていない原因はほぼ間違いなく、基礎が理解できていないからです。自分でよく考え、それを先生に質問し、友達にも説明してみましょう。やがて、その一つ一つが大きな力へと結実していきます。