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いきなり解き始めるな!数学者が提唱した問題を解くための4つのステップ

いきなり解き始めるな!数学者が提唱した問題を解くための4つのステップ

 皆さんこんにちは。京都医塾数学科講師の田村がお送りいたします。

 皆さんは普段数学の問題を解いているときに、「解説見ればわかるけど、そんな解き方思いつくわけないやん…」と思うことはありませんか?例えば、

\(2\) 以上の自然数 \(n\) に対し、\(n\) と \(n^2+2\) がともに素数になるのは \(n=3\) の場合に限ることを示せ.

こちらは京大の過去問ですが、この問題は“\(n\) を \(3\) で割ったときの余り”に着目して解くことになります。「いやそんなんどっから出てきたんや!」ってツッコミを入れたくなりますね。

 ですがこの解法、天から降ってきたように見えて実は非常に理にかなった(知識があれば必ず誰でも思いつくことのできる)解法なんです。

 これを実感してもらうために、今回はG.Polyaという数学者が提唱した「問題を解くための4つのステップ」を紹介します。

G.Polyaってどんな人?

 まずはG.Polya(ジョージ・ポリア)がどんな人かを説明します。

  • ハンガリー生まれの数学者で、チューリッヒ工科大学やスタンフォード大学で数学教授を歴任。
  • 解析学、幾何学、代数学など数多くの分野を研究する傍ら、数学教育にも大きく貢献。

 研究者でありながら、教育にも力を注いでいたところが大きな特徴ですね。この「教育」は単に数学を教えるということではなく、「数学をどのように教えるべきか」ということに焦点を当てており、いわば「教師のための教育」というものになっています。

 そんなポリアは、著書『いかにして問題をとくか』の中で、問題を解決するためには「問題を理解すること」「計画を立てること」「計画を実行すること」「振り返ってみること」の4つが必要である、と提唱しました。

 この中でも特に、実際に問題を解き始める前の「問題を理解すること」「計画を立てること」の2つのステップが重要になります。このことを次の項で実感していきましょう。

実際の問題で

(問題再掲)

\(2\) 以上の自然数 \(n\) に対し、\(n\) と \(n^2+2\) がともに素数になるのは \(n=3\) の場合に限ることを示せ.

ステップ①:問題を理解すること

 問題を「理解する」とはどういうことでしょうか。このままではどこから手をつければよいか全くわからないので、\(n\) に素数を小さい順に代入してみましょう。

              \(n=2\) のとき、 \(\ n^2+2=\ \ 4\ \ +2=6=2 \times 3\)
              \(n=3\) のとき、 \(\ n^2+2=\ \ 9\ \ +2=11\) ←素数
              \(n=5\) のとき、 \(\ n^2+2=\ 25\ +2=27=9 \times 3\)
              \(n=7\) のとき、 \(\ n^2+2=\ 49\ +2=51=17 \times 3\)
              \(n=11\) のとき、\(n^2+2=121+2=123=41 \times 3\)

となり、確かに \(n=3\) のときに素数になることが分かったと同時に、

“\(n\) が\(3\) 以外の素数のとき、\(n^2+2\) はすべて \(3\) の倍数になる” \(\cdots \cdots\)Ⓐ

という予想が立てられそうですね。

 このように、\(n\) に具体的な数字を代入することで問題の構造を「理解する」ことができます。

ステップ②:計画を立てること

 ここでは、ステップ1の結果からどのような道筋をたどれば答えにたどり着くことができるか、という計画を立てることになります。

 ステップ1より、Ⓐが成り立つことが証明できればOKですね。\(3\) の倍数である、つまり \(3\) で割ったときの余りが \(0\) になるということを示したいときは、素数 \(n\) を \(3\) で割ったときの余りで分類する、という方法が有効です(冒頭に示した通りですね)。これを思いつくためにはある程度整数問題の練習が必要ですので、ここは頑張りましょう。

ステップ③:計画を実行すること

 ここは、ステップ2で立てた計画を忠実に実行するだけなので、特に言うことはありません。

ステップ④:振り返ってみること

 ここはいわゆる「検算」のフェーズです。方程式の解を求める問題であれば、実際にその解を代入して式を満たすかどうかをチェックしたり、問題文に条件が与えられている場合は出した答えがその条件に当てはまっているかチェックしたり、ということが求められます。

 また、普段の問題演習であれば「別解があるかどうか」ということも非常に重要です。別解がある場合は「一つの解法で解けたからオッケー!」ではなく、必ず別解にも目を通しておくことをお勧めします。”一つの問題から多くのことを学ぶ”ということにもつながり、日々の勉強がより効率の良いものになります。

まとめ

 多くの問題集では、解説にステップ①やステップ②の内容を書いていないので、受験生の多くは

ステップ①やステップ②をすっ飛ばしていきなりステップ③に突っ込む → 手も足も出ないので、解説を見る → 「そんなん思いつくわけないやん!」と叫び、数学が嫌いになる

という悪循環に陥りやすく、数学科の講師としては非常に悔しい思いをしております。今回紹介した4つのステップを意識して解くだけでも問題が違った形に見えてきて、気づかなかったものに気づくことができるようになるはずです。

 皆さんがこの4つのステップをマスターしていろいろな問題が解けるようになり、嫌いだったはずの数学がいつの間にか好きになっている、ということになればうれしい限りです。