京都医塾公式ブログ

『社説集』2022年12月まとめ④

『社説集』2022年12月まとめ④

 京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。

 今回は、『社説集』2022年12月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。

注目2本

その①622-3.ファスト映画 権利侵害の重さ示す賠償命令/2022/12/11 読売新聞

本文

 長編映画を10分程度に短縮した「ファスト映画」を作成して動画投稿サイトに投稿した男女2人に対し、東京地裁は、映画会社やテレビ局など原告側の請求通り、著作権侵害による計5億円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 2人は2020年、東宝や松竹、東映など13社がそれぞれ著作権を持つ計54作品のファスト映画を無断で公開していた。再生回数は1000万回を超え、約700万円の広告収入を得ていたという。

 原告側は、損害額について「1回の再生あたり200円、総額20億円」と算定し、「最低限の損害回復」として5億円の支払いを求めていた。判決はこれらの主張を全面的に認めた。

 ファスト映画の賠償額を巡る司法判断は初めてで、今後のモデルケースになる可能性がある。再犯を抑止し、著作権の適正な保護につなげることが期待される。

 2人は刑事裁判でも執行猶予付きの有罪判決が確定している。広告収入目当てで違法動画を配信している人は、とてつもない代償を払うことを肝に銘じるべきだ。

622-3.ファスト映画 権利侵害の重さ示す賠償命令/2022/12/11 読売新聞

キーワード

  • 著作権
  • 映像メディア

解説

 昔、母親が「10分で読める世界の名作(と同日本版)」を買ってきたことがあります。

 実家2階のトイレに置いてあって、トイレにちょうどいい長さということもあり、繰り返し読んだのを覚えています。

 困ったことに、縮約であったり重要シーンの抜き出しであっても、けっこう楽しく読めてしまうんですよね。単にストーリーとしておもしろかったり、簡単に人物設定だけ知ってれば短い文章でも心の機微を感じられたりするので。

 そういう意味では、ファスト映画で満足してしまう人の心情も分からないではありません。「話題についていくために〜」というより、単にある程度おもろいからファスト映画をクリックしてしまうんじゃないかと想像します。

 ただ、ちょっとこわいのは、その縮約されたサイズのものに慣れすぎることかな、と思います。例えば殺人が起きたとして、その殺人に至るまでにはさまざまな事情が込み入り、またそこから生起する心情が複層的に絡まるのであって、A+B+C=殺人!みたいな単純な話ではないわけです。今流行りのコンクルージョンファーストではなく、ゆっくりとお話についていき、人物の気持ちに寄り添いつつ味わっていく態度も大切です。

 映画というメディアは「本」に比べ、映像/音声があり、能動的にページをめくらなくても、時とともに勝手に進行していってくれることが特徴ですね(そういう評論文が、センター国語でも出題されたことがありますね)。90分かそこらくらい、黙って座って観ればいいんじゃないかな、と思わなくもないのですが、90分てけっこう長いですよね。youtube動画は15分が基本らしいですから、一定時間以上集中状態を保つというのは、訓練によってなせる業なのかもしれません。

 勉強においても、集中できる時間を少しずつ伸ばす訓練は肝要です。自分一人では「勉強しているつもり」の時間が長くなるだけ、になりがちですから、自習室に行くとか、誰かに勉強することを宣言する、できれば見てもらう、などの対策が有効ですね。

その②624-11.ドローン活用 「空の安全」をどう確保するか/2022/12/24 読売新聞

本文

 ドローンの活用が拡大すれば、物流や警備など様々な分野で利便性が向上しよう。ただ、重大な事故を防ぐため、安全対策の徹底が不可欠だ。

 改正航空法が施行され、国が定めたドローンの4段階の飛行区分のうち、最も高度な「レベル4」での飛行が解禁された。

 政府は、ドローンの飛行区域や条件を段階的に緩和してきた。2018年には、目視外の飛行を無人の場所に限って認めた。レベル4では、国家資格の取得を前提に、住宅地の上空であっても、目視外で飛ばすことが可能になった。

 ドローンは、国や自治体が測量や災害時の情報収集などに利用している。規制緩和は、民間の参入を促し、ドローンの市場を拡大する狙いがある。

 過疎地では、お年寄りの「買い物難民」の問題が深刻化している。人手不足で、各家庭に食品や薬を届ける配送ドライバーを確保するのは、容易ではないという。

 ドローンの活用を幅広く認め、日本が直面する課題の克服に役立てることは理解できる。

624-11.ドローン活用 「空の安全」をどう確保するか/2022/12/24 読売新聞

キーワード

  • ドローン

解説

 数年前、北アルプスの表銀座ルートを縦走中、蝶ヶ岳に泊まったときに、若者グループが山頂付近でドローンを飛ばしていました。山の雄大な景色を撮る上ではうってつけの機材ですね(ただ、誰か著名な登山家が、「山は見下ろすものではない」というような発言をされていた気もして、それもそうかなと思うのですが・・・)。最近の山番組はどれもドローンの映像がある気がします。それとは全然別ですが、医学部の紹介映像やwebオープンキャンパスなんかも、ドローンを校内で飛ばして撮影したものがよくあります。

 ドローンの運用可能性はもちろんレジャーや記録目的の撮影にとどまりません。たとえば、「軍事利用(これはロシア・ウクライナ戦争において大きく注目されました。米国はウクライナ軍に軍事用ドローンの供与を行っています)」であったり、「農業への利用」であったり、「測量」などなど。

 なかでも特に注目されるのは、「物資の運搬」でしょう。過疎地、離島地域へスムーズに物資を運べるようになることもありますし、大規模災害の際に、交通インフラが寸断されたなかでも食糧・医薬品を供給することが可能になります。災害医療の場面でも活躍することがあるかもしれません(海外ではそのような事例もあるようです)。

 住宅街でドローンがブンブン飛び回ると、少々うるさいでしょうか?また、鳥の生態などにもなにかしら影響がありそうですね。いずれにせよ夢のある技術ですから、必要なルール作りをしつつ、前向きに進めていってもらいたいところです。

おわりに

 京都医塾では、全国の新聞社説から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。

 付け焼き刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大切ですよ。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。