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『社説集』2022年12月まとめ③

『社説集』2022年12月まとめ③

 京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。

 今回は、『社説集』2022年11月まとめの③になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。

注目2本

623-15.総合ケア職の必要性 ヤングケアラー問題から/2022/12/16 中外日報

624-7.子供の発達障害 調査研究の掘り下げが必要だ/2022/12/22 読売新聞

その① 623-15.総合ケア職の必要性 ヤングケアラー問題から/2022/12/16 中外日報

本文

 困窮し孤立するヤングケアラーを最初に把握する役割が学校に期待されるが、現実は理解不足で教委は「それは福祉の仕事」との反応が多いという。確かに教師は忙しく、学校に来ない子の把握も困難ではあるが、一方で児童相談所も「要するに親のネグレクトだ」との誤った姿勢が見えた。

 従来の仕組み、例えば介護保険ではケアラー本人は支援できず、そのためケアマネジャーやヘルパー、地域包括支援センターなど福祉と教育などの多職種連携が必須であり、潜在するヤングケアラーをまず見つけ出し、必要な支援にいかにつなげるのかが鍵だ。

キーワード

  • ヤングケアラー
  • 多職種連携

解説

 「​​​​​​ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものことです(厚労省HP参照)。近年、日本においても活発にメディア等で取り上げられていることばですが、発祥は90年代のイギリスです。

 ケアを行う主体としては家族の働き手=大人が無意識に前提化されがちですが、兄妹の世話、ひとり親家庭の介護、日本語が第一言語でない親を持つ場合など、実は子どもが家族のケアを強いられる状況が存在します。そのようないわゆる「ヤングケアラー」は家族への配慮、または家族への責任感から声をあげづらいために、社会に認知されにくいことが特徴です。

 「家族の問題」は周囲の人間による介入が難しい問題です。たとえば学業不振の生徒がいて、その原因が家族のケアに常態的にかかわらざるをえないことであった場合に、「教師」はどこまで踏み込んでその問題を解決できるかというと、やはり限界があるでしょう。これが「医師」や病院の「ソーシャルワーカー」であった場合も同様ですね。特定の職域からの働きかけには限界があります。

 したがって、本記事に書かれているように、福祉や教育が多職種連携をとる中で必要な支援を提供していく必要があります。病気を抱えた家族をケアする子どもがヤングケアラーになるわけですから、当然医療職も強い問題意識を持たなければなりません。

その② 624-7.子供の発達障害 調査研究の掘り下げが必要だ/2022/12/22 読売新聞

本文

 全国の公立小中学校の通常学級に在籍する子供の8・8%に発達障害の可能性があることが、文部科学省の調査でわかった。10年前に行われた調査よりも2ポイント以上増えており、35人学級なら1クラスに3人程度の割合になる。

 発達障害は生まれつきの脳機能の障害が原因とされ、読み書きや計算が困難な「学習障害(LD)」、落ち着きがない「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、人の気持ちを読み取るのが苦手な「自閉スペクトラム症」などがある。

 調査は5万人以上の小中学生を抽出し、発達障害の傾向があるかどうかを担任教員らがチェックする形で行われた。医師による正式な診断ではないが、様々な困難を抱えた子供が一定数いる現実は重く受け止める必要がある。

キーワード

  • 発達障害
  • インクルーシブ

解説

 ​​「発達障害」の定義は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」です(厚労省HPより)。

 発達障害とは、基本的に先天的な因子があってはじめて認められるものです。発達の仕方が定型的ではなく、凸凹があることが特徴です。凸凹を個性と捉えれば健常者と変わりないといえそうですが、社会生活を営むうえで無視できないほど凸凹が極端で、実際学業や職業などでなんらか問題を抱えたときに発達障害の診断を受ける可能性があります。

 その意味で発達障害のある人に対しては、適切なケアが必要です。今回の調査で発達障害が疑われる生徒が多くいたということは、教師や、その背後の社会が求める読み書き能力や生活態度の基準に対して大きく遅れる生徒が出ているということだと思います。社会の求める基準が変わっているのか、生徒の能力が(基準に対して)低下しているのか、そもそも通常学級に要支援の生徒が多く参入するようになってきたのか・・・原因はさまざまに考えられますね。

 いずれにせよ大事なことは、発達障害と認められる生徒に対しては必要な支援を提供しつつ、その美質をめいっぱい伸ばせる環境を作ることだと思います。そのためには、一人一人の生徒を細やかにみる体制が必要です。昨今は「インクルーシブ教育」、つまり障害のある子どもとない子どもが(可能な限り)共に学ぶ教育が推奨されていますが、その充実のためには、少人数教育などを実現するための人的リソースの確保が前提ですね。

終わりに

 いかがだったでしょうか。

 京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。

 付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。