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『社説集』2022年12月まとめ②

『社説集』2022年12月まとめ②

 京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。

 今回は、『社説集』2022年12月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。

注目2本

621-8.尊厳死と事前指示書 自己決定できない人もいる/2022/11/29 河北新報

622-4.かかりつけ医 大胆な育成策が不可欠だ<明日を考える>/2022/12/05 京都新聞

621-8.尊厳死と事前指示書 自己決定できない人もいる/2022/11/29 河北新報

本文

 主な改訂点として、本人の署名とは別に、本人の意思で署名したことを証明する「立会人」と、本人が意思表示できなくなった際に意思を代わりに伝える「代諾者」の記載欄が拡充された。本人の意思で間違いないことを強調し、「自己決定権」の尊重を求めるのが目的だ。

 自己決定権を前面に打ち出したのは、医療現場などで本人の意思以上に家族の意向や同意を重視されがちだとの認識が背景にある。実際、身内の治療方針などについて医師から「どうしますか」と問われた経験を持つ人は少なくないだろう。

 本人の意思が最も重視されるべきだとはいえ、遷延性意識障害などで意思の疎通が困難な上、LWのような事前の意思表示がないケースでは、家族の意向に基づいて決定せざるを得ない。こうした状況に置かれた人々は、自己決定権が重い位置付けになるほど「本人の意思と家族の意向は違うのではないか」といった苦悩を抱えかねない。十分な配慮が必要だ。

621-8.尊厳死と事前指示書 自己決定できない人もいる/2022/11/29 河北新報

キーワード

  • 尊厳死
  • 安楽死
  • 事前指示書

解説

 「尊厳死」とは、死が避けられない患者について、本人の意思に基づき、人間の尊厳を損なうような過剰な延命治療を中止し、自然な死を迎えるようにすることです。よく、「安楽死」との混同が見られますが、安楽死はその目的を「肉体的/精神的苦痛の除去」に置くものですから、本質的に違うものです。

 安楽死と違い、尊厳死は日本においても現実に行なわれていますが、その一方で明確に法制化されたものではないため、法制化に向けた動きがあります。

 ただし、尊厳死に必要な「自己決定」は複雑な問題です。まず、本記事にもあるように、代諾者が本人の意思を正確に把握できるとは限りません。意思を推定したとしてもその推定に絶対の自信を持つことは不可能でしょう。また、本人の自己決定とされる意向も、本人以外の環境的な要因で歪められることもあるでしょう。意思確認の時点で心身が弱っていれば、死を受け入れる方に傾くかもしれません。本人によってなされたからといって、ある環境、ある時点においてなされたにすぎない自己決定を確定的なものとして扱うことには問題があります。

 したがって、まず本人の判断能力がしっかりしているときに「事前指示書」を作成する必要があります。これは「立会人」「代諾者」「延命治療の意向」を明確にするものです。また、その事前指示書を定期的に更新していくことが、患者の意向に寄り添う上で大切です。その意味で「ACP」、医師・患者・患者家族の三者間で患者の意思決定を支援することが必要でしょう。

622-4.かかりつけ医 大胆な育成策が不可欠だ<明日を考える>/2022/12/05 京都新聞

本文

 地域で日常的な診療を担う「かかりつけ医」を巡り、制度化の議論が進んでいる。

 超高齢社会や新型コロナウイルスなどへの対応で大きな役割を期待されながら、十分に機能せず、責任や役割など法的な位置づけも不明確だからである。

 オンライン診療など多様化する医療需要をかかりつけ医が受け止め、患者が身近に頼れるセーフティーネット(安全網)として根付くよう、実効性のある制度と取り組みが必要だ。

 地域医療を支える診療所や中小病院と、主に専門的な治療を担う大病院との役割分担を進めるため、政府は近年、かかりつけ医機能に診療報酬を加算するなどの誘導策をとってきた。

 しかしコロナ禍で、熱心に往診や急患対応に取り組む診療所がある一方、発熱患者を門前払いにしたり、ワクチン接種の情報を公開しなかったりする事例が相次ぎ、問題化した。

 政府のコロナ対応を検証する有識者会議は6月、かかりつけ医の責任分担を明確にするよう提言。政府は直後に、骨太方針に制度整備を盛り込んだ。

 これを受け厚生労働省は、かかりつけ医を「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談などを行う機能」と定め、医療法に明記する方針を示した。今は省令にとどまる記述を格上げする形だ。

622-4.かかりつけ医 大胆な育成策が不可欠だ<明日を考える>/2022/12/05 京都新聞

キーワード

  • かかりつけ医
  • 地域医療

解説

 本稿の執筆を担当する石田は現在育児休業中ですが、そう出歩いているわけでもないにもかかわらず、先日ひどい鼻風邪を引いてしまいました。発熱はなく、強い喉の痛みと悪寒・倦怠感、軽度の頭痛があり、一応医者に診てもらえないかと思い、家から最寄りの内科に電話しました。発熱外来が厳しい状態にあるのは承知していましたが、近日中に親戚の結婚式に参列する要があり、また0歳の子どもにうつしてはかなわないので、受診の必要があると判断しました。

 その内科には今まで行ったことがないにもかかわらず、丁寧に対応していただき、近くの総合病院につないでもらって、そこで発熱外来を受診しました。自家用車で行ったのですが、車内での対応でした。対応は簡素そのものでした。PCR検査をしましたが、結局陽性ではありませんでした。

 上記は非常にささいな例かもしれませんが、困ったときに信頼できる医療機関が近くにあるというのは心強いことです。やはり患者側は不安なので、丁寧な対応をされると安心します・・・。「ただの鼻風邪やんけ!」と邪険にされるかもしれないと、内心ちょっと思っていますし(ただ、基本私は体が頑健なので、今回の風邪はよっぽどひどかったと思います)。

 「かかりつけ医」は地域の患者と継続的にかかわり、健康指導などを包括的に行う、地域医療の担い手です。まず適切な治療を受けられることはもちろん大切ですが、コミュニケーション的な意味でも、安心できる医療機関がどの地域にもあってほしいと思います。

終わりに

 いかがだったでしょうか。

 京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。

 付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。