京都医塾公式ブログ

iのi乗(愛の愛情)の話

iのi乗(愛の愛情)の話

 皆さん,こんにちは. 以前にとんでもなく長い数式を書いて嫌われた玉島です.

 突然ですが本屋さんでこんな本を見付けました.

「たった1°のもどかしさ 恋の数学短歌集」横山明日希 著 河出文庫

 数学をモトに短歌を呼んでおり,味わい深いというか,どう突っ込めばいいのかとか,うーん.なかなか面白かったです.その中の一首に「愛の愛情」という言葉があり,この言葉から「2月7日は\(\cdots\)」となっていたのですが,この意味に気付かず調べてみると,

\( \displaystyle i^i =0.2078795 \cdots \)

となるそうです.

 はて?はて?前にも伝えましたが,\(\displaystyle i\)は2乗すると\(-1\)になる数です.それを愛情ならぬ\(\displaystyle i\)乗すると実数になるんですって!びっくりですね.さて,人に言われたからといって鵜呑みにするのではなく,自分でも計算をしてみたい!だけど,\(\displaystyle i\)乗って何をしてよいのやら途方に暮れます.でも,私の記事の読者なら(存在しないものを仮定すると,どのような命題も必ず真になるからいいですよね)気付いてますよね.そう, <オイラーの公式> です.

オイラーの公式

任意の複素数 \(\theta\) に対して

\( \displaystyle e^{i\theta}=\cos \theta +i\sin \theta \)

が成り立つ.ただし, \(e\) は自然対数の底(ネイピア数)とする.

 これも,指数部に虚数単位iが含まれています. だから,底\(e\)をなんとかすれば「愛の愛情」が分かるのです.ひとまず\(\cos \theta\) と\(\sin \theta\)が邪魔ですから,\( \theta\)にほどよい値を代入しましょう.そこで,\(\theta=\frac{\pi}{2}\)とすると,右辺に\(\displaystyle i\)だけが残ります.つまり,

\( \displaystyle e^{i\frac{\pi}{2}}=\cos \frac{\pi}{2} +i\sin \frac{\pi}{2} \)

となります.この式から,

\( \displaystyle e^{\frac{\pi}{2}i}=i \)

となるわけです.この両辺を\(\displaystyle i\)乗すればいいんですよ.

\( \displaystyle \left( e^{\frac{\pi}{2}i} \right)^i=i^i \)

この式から,

\( \displaystyle e^{\frac{\pi}{2}i^2}=i^i \)

となります.\(i^2=-1\)となるので,

\( \displaystyle i^i=e^{-\frac{\pi}{2}} \)

すごいですね.左辺は\( \displaystyle i \)しかないのに右辺は(現)実数になりました.奇跡は起こるんですよね.あとは現実に計算をするだけです.頑張りますよ.

 ところで,\( \displaystyle e \)はだいたい\( \displaystyle 2.718281828 \)ぐらいですよね.それを\( \displaystyle -\frac{\pi}{2} \)乗するとはどういうことなのでしょうか.もちろん,\( \displaystyle \pi \)は\( \displaystyle 3 \)ではなく,\( \displaystyle 3.141592 \)ぐらいだということはわかっています.ホワイトデーとも関係ないことも知っています.いや,あのね, 3月14日や7月22日を円周率の日にしようとか言っている方がいるのも知ってますよ.さらにドコまで公に認められているのかは知りませんけど.そのまま国民の祝日にするなら応援しますよ.ただし,ハッピーマンデーで移動したら本当に意味が分からなくなりますけどね(笑).話を戻して,\( \displaystyle -\frac{\pi}{2} \)乗が謎ですね.

「せっかく現実の世界に来たのに,計算できないなんて.」

と思っていませんか?ここで,マクローリン展開を思い出したあなたは偉い!そうです.次の公式を使います.

\( e^x \)のマクローリン展開

\( \displaystyle e^x = 1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}+\cdots \)

 この公式に,\( \displaystyle x=-\frac{\pi}{2} \)を代入すれば,現実に計算できます.今回は近似的に\( \displaystyle x=-1.57 \)を\( \displaystyle 1+x+\frac{x^2}{2!} \)に代入してみましょう.すると,

\( \displaystyle \begin{eqnarray} 1+\left( -1.57 \right)+\frac{\left( -1.57 \right)^2}{2!} &=& -0.57+\frac{2.4649}{2} \\ &=& -0.57 +1.23245 \\ &=& 0.66 \end{eqnarray} \)

となります.結構値が違いますね.どうやら,収束が遅いようです.それでは,\( \displaystyle 1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\frac{x^5}{5!} \)に\( \displaystyle x=-1.57 \)を代入してみましょう.先ほどと同様に計算すると,\( \displaystyle 0.19 \)でした.十分 \( \displaystyle 0.207 \) に近いです.ただ,5次の項まで計算しないと誤差が大きいようです.

最後に

 というわけで,愛を愛情で満たしたらどうなのかの話でした. ただ, 少ない項で試すと誤差(誤解)が大きくなるので気を付けましょう.